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外傷を負ってしまったとき、たとえ傷口が小さかったとしても油断できないことがあります。細菌に感染する可能性があるからです。なかでも破傷風菌への感染が原因で発症する破傷風には注意が必要です。ここでは、破傷風の原因や症状について見てみましょう。

破傷風菌とは?

破傷風菌は高温や乾燥に非常に弱い細菌ですが、芽胞(がほう)を形成することで長く生存することができます。芽胞とは、好ましくない環境に置かれた細菌が生き残りのために形成する種子のことで、厚い殻で覆われ、高温・乾燥・紫外線、さらには薬剤などの刺激に対する強い抵抗力を持っています。

芽胞の形で世界中の土壌中に広く分布している破傷風菌との接触は、完全に防ぐことはできません。転倒や土いじりの際の負傷によって、傷口から破傷風菌が侵入すると破傷風を発症します。また、犬や猫などに噛まれたり、ひっかかれたりしたのが原因で破傷風を発症するケースもあります。

日本国内においては、予防接種が普及した1991年以降、年間の患者数は30~50人程度にとどまっていましたが、2000年には92人と増加傾向を示しました。破傷風は、発症した場合には20~50%の割合で命を落とす致命率の高い感染症のため、十分な注意が必要です(厚生労働省より)。

破傷風の症状

チェック

破傷風の症状は次の4つの段階に分けられています。

第1期

歯ぎしり、首筋の張り、寝汗といった症状がでます。口を開けにくくなり、食事が困難になります。

第2期

顔面筋がさらに緊張を強め、開口障害が強くなります。唇が横に広がって少し開き、ひきつり笑いをしているように見える「破傷風顔貌」と呼ばれる特徴的な症状が現れます。

第3期

首、さらには背中が硬直し、全身のけいれんが生じます。生命の危険が最も高くなる時期でもあります。

第4期

筋の緊張は残っていますが、全身のけいれんはなくなり、次第に症状が和らいでいきます。

破傷風の予後が良いかどうかを判断するひとつの目安として、第1期から第3期に至るまでの時間の長さがあります。短時間で症状が進行するほど予後が悪く、3期が始まるまでの時間が48時間以内の場合は予後が不良であるとされています。

破傷風の治療法は?

破傷風の治療では、抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIGの投与に加え、感染した傷の洗浄デブリードマン(壊死した組織を取り除く)、抗菌薬の投与を行います。TIG療法は発症初期に行うことで高い効果を得られるため、破傷風は早期発見・早期治療がとても大切です。

また、抗けいれん薬の投与や血圧・呼吸の管理などの対症療法(病気そのものの治療ではなく、症状を和らげる治療)もあわせて行います。

破傷風は、5類感染症と定められています。そのため、診断した医師は7日以内に保健所に届けることが法律で義務付けられています。

ワクチンの効果は10年程度

注射器

破傷風に対しては、ワクチン(四種混合・三種混合・破傷風トキソイドなど)の接種によってほぼ100%抗体を獲得できるとされています。

一般的には、生後3ヶ月~12ヶ月の間に20~56日の間隔をおいて計3回接種し、さらに12ヶ月~18ヶ月の間隔をおいてもう1回接種します。そして、10年後の11~12歳の期間にもう1回接種します。このように間隔をあけて複数回接種することで、免疫の働きを強めることができます。

ただし、このようにワクチンを接種した場合でも効果が持続するのは10年程度で、それ以降は効果が薄れていきます。実際、破傷風は30歳以上の成人に多いといわれています。

破傷風のワクチン接種は、大人になってからも行うことができます。新たに接種する回数は年齢やワクチンの効果が残っているかどうかによって異なるため、医師による診断が必要です。

まとめ

破傷風菌は土壌の中に広く分布しており、感染のリスクは常にあるといえます。破傷風の原因となるのは外傷ですが、発症するかどうかを左右する要因として年齢が大きく影響しています。年齢が高い人ほど破傷風のワクチンを接種していなかったり、接種していてもすでに効果が薄れていたりすることが多いからです。破傷風を防ぐには、不衛生な環境での怪我を防ぐこと、そして、ワクチンの接種によって抗体を獲得しておくことが大切です。

なお、破傷風は犬や猫に噛まれることで発症することもあります。こちらについては、「犬に噛まれた!応急処置はどうすればいい?病院に行くべき?」でまとめおりますのでご参照ください。