年間の日本人海外旅行者が1,700万人を超え、過去30年で4倍にも増加してきた今、海外渡航時の旅行に、特にアジアにおける感染症から身を守るための2つの予防接種をご案内します。

目次

海外渡航のための予防接種(ワクチン)とは

海外渡航者の予防接種には、大きく分けて2つあります。1つは、入国時に予防接種証明書を要求される場合があるため、もう1つは自分自身を感染症から守るためです。

1.予防接種証明を要求される

アフリカの熱帯地域や、南米の熱帯地域の国々の中には、黄熱(黄熱ウィルスを病原体とし、蚊によって媒介される感染症)の予防接種証明書の提示を要求されることがあります。

2.自分自身の身を守る

海外では、日本にはない病気が発生し、流行している場合があります。黄熱、A型肝炎B型肝炎破傷風狂犬病ポリオ日本脳炎といった病気に対しては、ワクチンを渡航前に接種することで、感染や重症化を防ぐことができます。

海外渡航の75%を占めるアジアで必要な予防接種

日本人の海外渡航先の75%を占めるアジア。経済成長を続けるアジアには、多くの日本企業が進出し、海外出張で行き来するビジネスマンが増えてきています。滞在期間が1ヶ月以上の長期に渡る場合は、A型肝炎、破傷風の予防接種が推奨され、場合によっては日本脳炎、B型肝炎、狂犬病のワクチンも追加されます。

アジアで必要な予防接種

地域 滞在期間 黄熱 ポリオ 日本脳炎 A型肝炎 B型肝炎 狂犬病 破傷風
東アジア 短期
長期
東南アジア 短期
長期
南アジア 短期
長期

※長期とは、およそ1ヶ月以上にわたって滞在する場合です。冒険旅行のように、怪我をする可能性の高い場合には、短期ではあっても長期に含めます(怪我をすると、破傷風の感染リスクが高くなるためです)。

◎は接種が推奨されているワクチン、◯は局地的な発生などリスクがある場合に接種を検討する必要があるワクチンです。

アジア渡航時に身を守る2つの予防接種

1.A型肝炎予防接種

A型肝炎は、糞便などに触れた器具や手指や、ウィルスに汚染された食べ物、その他、性行為から感染する病気です。発症すると倦怠感が強くなり、重症になると1か月以上の入院が必要となる場合があります。ただし、通常は4週間~8週間で回復し、慢性症状になることはないとされています。
A型肝炎ワクチンは2~4週間隔で2回接種します。6か月以上滞在するのであれば6か月目にもう1回接種すると約5年間効果が続くとされています。

2.破傷風予防接種

破傷風菌は世界中の土壌の至る所に存在し、傷口から感染する病気です。破傷風菌は汚れた深い傷、火傷から体内に侵入し、7~12日の潜伏期の後、重症の場合は全身の筋肉麻痺や痙攣を起こします。
破傷風ワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア(D)、百日せき(P)、破傷風(T))には含まれています。しかし、1975年~1981年の間は副作用によって、DPTワクチンの接種が中断されていたため、その時期に生まれた人は受けていない可能性があります。

初回の免疫をつけるため、1回0.5mLずつを2回、3~8週間の間隔で皮下又は筋肉内に注射します。 その後、初回免疫終了後6ヶ月以上の間隔をおいて、0.5mLを1回皮下又は筋肉内に注射します。こうして、3回の接種を行うと、基礎免疫が備わり4〜10年ほど免疫が得られ、免疫記憶は25〜30年ほど残ります。

まとめ

世界を見渡してみると、日本のように公衆衛生環境が整っている国は稀です。海外渡航をする場合には、事前にその国の危険度を外務省の海外安全ホームページで調べ、また必要なワクチンを事前に厚生労働省検疫所の予防接種機関検索等で調べ、接種することをおすすめします。