皆さんの中にも突然に口が開かない、あるいは開きにくくなってしまったという症状を経験したことがある方がいるのではないでしょうか。昨日までは普通に食事していたのに、朝になっていきなり口が開かなくなりましたという患者さんもいます。どうして口が開かなくなってしまうのでしょう。今回は口が開閉するメカニズムと口が開かなくなる原因についてご紹介したいと思います。

目次

口はどうやって開閉しているの?

筋肉の動き

そもそも口はどのように開いたり閉じたりしているのでしょうか?当然ですが、人の体なので脳からの指令で神経を通じて筋肉が動くことによって下の顎を開閉しています。

皆さんの頭の横(側頭部)や顎のエラの近くに手を軽く当てて強く噛みしめてみてください。この時に膨らむところが側頭筋や咬筋という口を開閉する筋肉です。この口を閉じる閉口筋と、口を開く開口筋が働くことによって口が開閉しています。

関節の動き

口を開閉するためにもう一つ重要なことは関節の動きです。

あごの関節は下あごの骨にある下顎頭(かがくとう)と呼ばれる部分と、側頭骨にある下顎窩(かがくか)といわれる受け皿の部分、そして関節結節(かんせつけっせつ)と呼ばれる受け皿の前の部分で構成されています。

さらに、下顎窩と下顎頭の二つの骨が直接ぶつからないように、クッションの役割をしている関節円板(かんせつえんばん)という線維性の組織が間に入っています。口を2㎝ぐらいまで開くとき下顎頭は下顎窩の中で回転運動のみを行います。

また、それ以上大きな口を開けるときは、下顎頭は前に移動しながら関節結節を超えて動きます。このときに関節円板も下顎頭と一緒に前に動き、口を閉じるときは下顎頭と一緒に関節円板も下顎窩内に戻ってきます。こうして、口がスムーズに開閉できるようになっています。

なぜ口が開かなくなってしまうの?

顎のレントゲン

そもそも口はどのぐらい開くのが正常なのでしょうか?通常は人差し指から薬指まで指を縦にして3本入る程度が正常と考えられています。大体4㎝ぐらいですが、それより口が開かない人は、何かしらの異常が考えられます。

口が開かなくなる原因には顎関節症や外傷によるもの、歯の炎症によるもの、破傷風パーキンソン病リウマチなどの疾患によるものが考えられます。

破傷風やパーキンソン病では筋肉を動かすための神経の伝達経路に異常が起こり、口が開けられなくなります。歯の炎症がひどくなり筋肉に炎症が及んだ場合も口が開かなくなります。リウマチでは関節自体の骨が変形することで口が開きにくくなってしまいます。

顎関節症で口が開かなくなる場合には、筋肉に問題がある場合、関節円板に問題がある場合、関節に痛みがある場合、関節が癒着している場合の4つにわけられます。外傷の既往や全身疾患に問題が無い場合は、顎関節症の可能性が高いと考えられます。

さらに突然口が開かなくなる原因は関節円板に問題があることが多く、知らないうちに徐々に口が開きにくくなっている場合は筋肉に問題が起こっている場合が考えられます。

まとめ

顎も腕や足と同じで筋肉と関節で動いています。肩や肘が動きにくい、もしくは動かないときに無理にスポーツなどはしないと思います。口も同じで口が開かない、開きにくいということは顎の状態のSOSです。無理に固いものを食べたりガムを咬んだりしないで、おかしいなと感じたらなるべく早く歯科医院へ受診することをお勧めします。