寝ているときに大量に汗をかき、目が覚めてしまった経験はありませんか?睡眠中の発汗は「寝汗」と呼ばれ、気温が高かったり、たくさん水分をとったり、疲労やストレスが溜まったり、肥満だったりするときにみられることがあります。また、寝間着を取り替えるくらいの汗を「盗汗」といいます。
これらの寝汗は病気の症状の一つとして出る場合があります。今回は寝汗がみられたときに考えられる病気について、詳しくみていきましょう。
寝汗がみられるときに考えられる病気
暑くて寝苦しいと感じ、少し汗をかく程度の場合にみられるのが下記のような病気です。中でも結核は注意が必要です。
風邪、結核などの感染症
感染症では発熱とともに寝汗がみられることがあります。
注意したい結核
中でも注意したいのは結核です。
結核は過去に日本の死亡原因1位でした(公益財団結核予防会より)。
現在は薬が開発されて治る病気にはなっていますが、いまだに感染者や死亡者が出ています。
結核菌によって肺やリンパ節を始め、背骨、腎臓など全身の臓器に炎症が広がっていきます。
そうして組織が破壊されていきます。
症状には発熱や寝汗のほか、2週間以上の長引く咳に痰、倦怠感、体重減少、胸痛などが挙げられます。
結核菌の感染者の咳やくしゃみを介して空気感染します。乳児や高齢者など免疫力が弱い人だと、発症・重症化しやすいです。
長引く咳がみられたら早めに受診し、結核と診断された場合には、薬を服用し続けることが大切です。
乳児ではBCGワクチンの予防接種を受けるのも重要です。
自律神経失調症
自律神経は普段、身体を良い状態に保つために身体の動きを調整しています。
その自律神経のバランスが崩れることによって、めまいや頭痛、寝汗、睡眠障害、吐き気、食欲不振、腹痛、便秘、下痢、肩こり、腰痛などの症状がみられます。
自律神経失調症は生活習慣の乱れやストレス、疲れなどが原因で起こることが多いです。
また不安障害やうつ病などの疾患でも現れます。
治療は症状を抑える薬や漢方薬などの薬物療法、生活習慣の改善、ストレスへの対処法の見直しなどを行います。
内分泌・代謝疾患
甲状腺機能亢進症やインスリノーマ、糖尿病、カルチノイド症候群などの内分泌・代謝に関する疾患でも寝汗が出る場合があります。
甲状腺機能亢進症
喉付近にある甲状腺は、身体の代謝を促す甲状腺ホルモンを分泌しています。
そのホルモン量が増え過ぎて代謝が活発になりすぎてしまう病気を甲状腺機能亢進症といいます。
ホルモン量の増加は全身に影響を及ぼすため、頻脈や手や指の震え、眼球突出、甲状腺の腫れなどがみられます。
また汗をかく量も増え(多汗)、寝汗も出る場合があります。
治療には甲状腺の働きを抑制する薬の服用、甲状腺を摘出する外科手術などがあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群では無呼吸や低呼吸が頻繁にみられます。
具体的には眠っているときに大きないびきをかいたり、急にいびきが止まったり、詰まったような息の後に再びいびきをかいたりします。
この他の症状として昼間の眠気や頭重感、集中力の低下、夜間の頻尿、寝汗、寝相の悪さなどがみられます。
睡眠時無呼吸症候群がみられると、心筋梗塞や脳卒中、高血圧のリスクが高くなることが考えられます。マウスピースのような装具をはめて睡眠時の呼吸の通りを良くしたり、鼻にマスクを当てて空気を送ったり、喉を広げる鼻CPAP療法を行ったりして治療していきます。
ひどい寝汗「盗汗」のときに疑われる病気って?

寝汗の中でも、寝間着やシーツがびっしょり濡れてしまうほど汗をかく場合を特に盗汗と呼んでいます。盗汗の症状がみられた場合、疑われる病気には下記のようなものがあります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、血液のがんの一種です。
リンパ管の中を流れるリンパ液に含まれる白血球の一種「リンパ球」ががん化したもので、血液がんの中では最も多くみられます。
盗汗の他には、リンパ腺(首や腕の下、脚の付け根)の腫れや体重の減少などがみられます。痛みは生じないことが多いです。
主に手術ではなく、抗がん剤や放射線療法で治療します。
近年、医療の進歩により治療成績もかなり良くなってきているので、まずは悪性リンパ腫の型を調べ、そこから治療方針を決定していきます。
関節リウマチ
関節リウマチは、膠原病の一種です。詳しい原因は分かっていませんが、身体を守るための仕組みである免疫に異常が起こり、自分自身の組織を攻撃してしまうことで生じる病気です。
関節が炎症を起こし、骨や軟骨が破壊されます。ひどい痛みや腫れを伴い、治療をせずにいると関節が変形してしまう場合があります。早いうちから治療を行えば、進行を抑えることができる病気です。
上記に挙げた疾患以外に、線維筋痛症、全身性エリテマトーデスなどでも寝汗が症状として出る可能性があります。
まとめ
睡眠中にかく汗は、夏の暑さなど生理的に現れる場合だけではありません。寝汗で病気が疑われる場合は、その他に出ている症状が重要になっていきます。風邪などでは発熱があり、結核では長引く咳、甲状腺機能の異常では全身に症状が出る場合があります。普段とは違う、明らかに異常な量の汗をかく盗汗の症状がみられたら、重大な病気の可能性もあるので早めに医療機関を受診しましょう。