肺炎球菌は免疫機能が弱い方にかかりやすく、特に小さな子供では重症化しやすい感染症です。

今回は、小児肺炎球菌ワクチンについて、接種する年齢・時期・回数などのスケジュールや効果と副反応、成人肺炎球菌ワクチンとの違いなどについて、詳しく解説していきます。

目次

肺炎球菌感染症とは

肺炎球菌という細菌によって生じる感染症です。特に免疫力の弱い小さな子供高齢者に感染しやすいことが知られています。

肺炎球菌感染症では、肺炎の他にも、中耳炎髄膜炎敗血症(菌が血流に乗って全身に広がることによる臓器障害)などを引き起こします。

髄膜とは、脳や脊髄を覆っている膜であり、ここに炎症が生じる髄膜炎が発症した場合、2%の子供は死亡し、回復した子供でも10%ほどに難聴や精神発達遅延、手足の麻痺、てんかんなどの後遺症が残るといわれています(厚生労働省より)。

小児肺炎球菌ワクチンを接種する年齢・時期・回数

一般的なスケジュールとしては、初回接種は生後2か月から生後7ヶ月の間に行い、その後27日以上の間隔をあけて、生後12ヶ月に至るまでに計3接種します。
その後、生後12ヶ月から生後15ヶ月の間に、追加接種を1行います。3回目と4回目(追加接種)の間隔は60日以上あけてください。

子供では免疫機能が未熟なため、スケジュールを守ってワクチン接種することが大切です。

特に、間隔をあけて行う追加接種には、肺炎球菌に対する免疫力をぐっと高める効果があるため、忘れずに受けてください。

また、正確には初回接種は生後11ヶ月までに受ければよいとされていますが、他の予防接種との兼ね合いや、体調不良などにより接種を延期しなければならないような事態を想定すると、早めに済ませてしまう方が安心です。

小児肺炎球菌ワクチンの効果・副反応

効果は肺炎球菌感染症の予防です。
ワクチン接種によって、肺炎球菌が血液から検出される敗血症や、髄液から検出される髄膜炎のような重篤な肺炎球菌感染症にかかる危険性を95%以上減少させることが可能になると報告されています(厚生労働省より)。

副反応といては、接種部位の赤みや腫れ、痛み、食欲低下、発熱、傾眠(うとうとする)、易刺激性(刺激に対して過剰に反応する)などがみられることがあります。
また、重篤な副反応として、アナフィラキシー(アレルギー反応により呼吸困難感や血圧低下などの強い症状を認める)、けいれんなどが報告されています。

副反応を正しく判断するためには、ワクチン接種は健康状態の良いときに行うことが推奨されています。副反応の発熱は通常1~2日、接種部位の赤みや腫れは3~4日で消えるといわれていますが、長引く場合や心配がある場合には、かかりつけ医に相談してください。

成人肺炎球菌ワクチンとの違い

肺炎球菌ワクチンには「23価肺炎球菌ワクチン(商品名:ニューモバックス)」と「13価肺炎球菌ワクチン(商品名:プレベナー)」の2種類が用いられています。

このうち、小児の肺炎球菌ワクチンとして使用されるのはプレベナー13です。
肺炎球菌には90以上の型がありますが、プレベナーでは、このうち子供に重い病気を起こしやすい型を13個(1, 3, 4, 5, 6A, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19A, 19F, 23F)選択して作られています。

プレベナーは子供だけでなく、高齢者の肺炎予防にも有効性を示すため、どちらの年代においても使用可能な肺炎球菌ワクチンです。

一方、ニューモバックスは、23個の型(1, 2, 3, 4, 5, 6B, 7F, 8, 9N, 9V, 10A, 11A, 12F, 14, 15B, 17F, 18C, 19A, 19F, 20, 22F, 23F, 33F)に対応する肺炎球菌ワクチンです。

ニューモバックスは、2歳未満の免疫力の未熟な子供ではワクチンに対する応答が十分に行えないため、免疫の十分な獲得が行われません。このため、原則成人にのみ使用されています。

まとめ

肺炎球菌は、免疫の弱いお子さんがかかりやすく、髄膜炎や菌血症など後遺症を残したり、命に関わる可能性のある恐ろしい病気です。

体内で免疫を作り出す機能が未熟なお子さんには、ワクチンとして身体の外側から介入してあげることが最善策です。小さな子供の健康を維持するためには、スケジュールを守って積極的にワクチン接種を受けさせてあげましょう。