一般的な肺炎は、細菌やウイルスの感染によって起こる呼吸器の病気として広く知られています。では、間質性肺炎とはどのような病気でしょうか?一般的な肺炎との違いを踏まえ、間質性肺炎の概要や症状、原因について詳しく解説します。
間質性肺炎と一般的な肺炎の違い
人間の肺には数億個の肺胞と呼ばれる小さな袋状の構造があり、ここでガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)を行っています。一般的な肺炎では、この肺胞の中の空間部分に炎症が起こります。
一方、間質性肺炎は肺胞の壁(間質)に炎症を起こす病気です。炎症が進むと肺胞の壁が厚くなり、肺が硬くなって膨らみが悪くなることで様々な症状が出ます。
間質性肺炎の症状
間質性肺炎の主な症状は、息切れなどの呼吸困難感と乾いた咳です。原因によって、症状は緩やかに進行するものから急速に進行するものまで様々ですが、自覚症状が現れるころにはかなり病状が進行している場合もあります。階段や坂道歩行時に息切れを感じていたものが、徐々に進行し、着替えなどの軽い日常生活行動でも症状を感じるようになります。
また、一般的な肺炎では肺胞の中の炎症により湿った痰を伴う咳がみられますが、肺胞の壁が硬くなる間質性肺炎では痰を伴わない(あるいはごく症状の白い痰を伴う)乾いた咳が特徴です。発熱は、緩やかに進行している間にはありませんが、風邪などの感染症をきっかけに急激に症状が進行する急性増悪を起こした場合にみられます。
急性増悪(ぞうあく)とは?
もともとあまり良くなかった病気の状態がさらに悪化することを「増悪」といいます。間質性肺炎で急性増悪を起こした場合、呼吸不全が突然進行することがあります。風邪をはじめとする呼吸器感染症が原因で起こりやすく、この状態になると、死に至ることも少なくありません。
間質性肺炎の原因
間質性肺炎の原因は、大きく以下のように分類されます。
原因が明らかなもの
塵肺(じんぱい)
間質性肺炎は、空気中に浮遊する粉塵(細かなチリや微粒子)を吸入することによって生じやすいです。粉塵を吸入する環境(鉱山、トンネル工事、石工や建設業など)で働いている人に多くみられます。以前に報道で社会問題となったアスベストでも間質性肺炎を生じます。
過敏性肺炎
過敏性肺炎は、カビや鳥の抗原(鳩やインコ飼育、鳩小屋、野鳥、羽毛布団、鶏糞肥料など)との接触で、羽や糞などを慢性的に吸入することによって起こるアレルギー性の肺炎です。特に日本では、家の中に存在するカビの一種であるトリコスポロンが原因となることが多く、高温多湿の夏場に多くみられることから夏型過敏性肺炎とも呼ばれています。また加湿器や空調機のカビ、農業用の飼料、きのこの胞子が原因になることもあります。
薬剤性肺炎
病院で処方される薬のほか、漢方薬や、サプリメントなどの健康食品によって引き起される場合もあります。
膠原病に伴うもの(膠原病肺)
膠原病とは、本来自分の身体を守るための免疫機構に異常を生じ、自分の身体の組織に対する抗体を作ってしまい、身体のあらゆる部分を攻撃してしまう自己免疫疾患の総称です。関節リウマチや皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群などが含まれます。膠原病では肺にも炎症を起こすことが多く、最も頻度が高く注意が必要なものが間質性肺炎です。
原因が不明なもの
上記のような原因に該当しない間質性肺炎を、特発性間質性肺炎と呼びます。その中でも最も多いものが、特発性肺線維症(IPF:Idiopathic Pulmonary Fibrosis)です。
特発性肺線維症
特発性肺線維症は、肺胞の壁の炎症が進行し、線維化(※)が進行していく病気です。
線維化が進行すると、縮んで潰れてしまう肺胞がある一方、肺胞の手前に存在する細気管支が広がり、嚢胞(のうほう)と呼ばれる空気の袋を形成します。これがハチの巣のように見えることから、蜂巣肺(ほうそうはい)といいます。このような肺の状態では有効なガス交換は困難となり、呼吸困難感が顕著になります。
※線維化:肺胞の壁に傷がつくと、その傷を治そうとする働きによって、大量のコラーゲン線維などが肺胞の壁に蓄積されます。その結果、肺胞が硬くなることを指します。
特発性肺線維症の原因ははっきり分かっていませんが、50歳以上の男性に多く、加齢や喫煙、感染症や生活環境などの要因が関与していると考えられています。特発性肺線維症は急性増悪や肺がんなどを合併しやすく、治療が難しい上に、経過も極めて不良です。診断確定後の平均生存期間は2.5~5年間と報告されています。
間質性肺炎の中でも、原因が不明の特発性間質性肺炎は国の難病(特定疾患)に指定されており、一定の条件を満たせば医療費の補助が受けられる病気です(厚生労働省より)。
まとめ
間質性肺炎は、通常の肺炎と異なり様々な原因によって起こる進行性の病気です。病気の進行は原因によって、遅い場合も早い場合もありますが、気づいたときには病気がかなり進行してしまっているケースもあります。重症化を防ぐためには、早期発見と早期治療が重要となります。