眼を開ける、閉じる、、、無意識に自然に行っているこの動作ですが、実は様々な筋肉や神経に支配されていて、それぞれが協力して成り立っています。その中の何かがうまくいかなくなると、眼が開けにくくなる(眼瞼下垂)、眼を閉じても完全に閉じなくなる(兎眼など)が起こります。

今回は、眼を開ける、ということに不自由が出てくる眼瞼下垂についてご紹介します。

目次

瞼の構成と、瞼が動くしくみ

瞼(まぶた)には、皮膚、その裏に瞼板(眼を守る、カーブしたかまぼこ板のようなもの)、瞼板の上方に付着する上眼瞼挙筋、その奥にはミューラー筋、裏側には角膜とつながっている結膜など、様々な組織が含まれています。

瞼を上げる上眼瞼挙筋を司るのは動眼神経です。また、眼を閉じるのは眼の周りにある眼輪筋という筋肉で、顔面神経が支配しています。

ちなみに、びっくりしたときに眼が大きくなるのは、興奮に関係する交感神経が働いてミューラー筋を収縮させるからです。

眼瞼下垂の原因とタイプ 緊急性があるかないか

1.緊急性のある眼瞼下垂

上述したように、眼を開けるのは動眼神経が支配していますが、動眼神経は、眼を動かす、ものを見るために焦点を合わせる、なども担っています。

急に片目の瞼が下がり、下がった瞼を持ち上げると、眼が外を向いているものが二重に見える、瞳孔(黒目)が大きくなっている、などの症状が出たら、動眼神経麻痺の疑いがあります。すぐに眼科と脳神経内科受診が必要です。このような怖い原因で無いこともありますが、気を付けるに越したことはありません。

頭の中の、まだ破裂していない血管の瘤(脳動脈瘤)が動眼神経を圧迫したときに起こる症状といわれており、もし脳動脈瘤が破裂したら、くも膜下出血を起こし、死亡したり重い後遺症が残ったりすることがあります。

2-1.それほど緊急性はないが、詳しく検査が必要な眼瞼下垂

筋肉が疲れやすくなる重症筋無力症では、朝はよくても、夕方から夜にかけて眼瞼下垂がおこります。日によって状態が変わることがあります。全身性に起こることもあり、呼吸を司る筋肉が弱ると呼吸ができないということも起こります。眼科と内科にかかって、詳しく調べてもらいましょう。

2-2. それほど緊急性はないが、早めに処置をしたほうが良い眼瞼下垂

生まれつき瞼が下がって眼を覆っている先天性眼瞼下垂では、瞳孔が瞼で隠されているため、しっかりとした視覚刺激が脳に届かず、弱視斜視になることがあります。

大人が急に見えなくなれば、おかしいと感じますが、何も知らない子供は見えづらい、と訴えません。

容姿を損ないますし、大人になって、視力のために悲しい思いをしないように瞼が下がって瞳孔が半分以上隠されている状態であれば、早めに眼科受診をしてください。

3.緊急性のない眼瞼下垂

もともとは正常な状態だった上まぶたが、何らかの原因で下がってくる眼瞼下垂です。

前述した動眼神経麻痺重症筋無力症ではなく、加齢とともに徐々に起こってくる事があります。その原因で最も多いのは、皮膚や眼瞼挙筋などのゆるみです。白内障手術後に起こることもあるといわれていますし、このほかに長年コンタクトレンズ(特にハードレンズ)を使用している人には若い内からでも起こりやすいといわれています。

眼瞼下垂による症状

眼瞼下垂にも程度があり、中には見た目だけの問題で特に視機能に影響はないこともあります。ただ、上まぶたが瞳孔にかかってしまうと、以下のような症状がみられる場合があります。

  • が視界を遮り、見えにくくなるため、眼を開けようと額の筋肉を使ってまぶたを上げる。
  • 見えにくいため顎を上げる

上記の状態が続くと、やはり疲労の原因になるため、

眼瞼下垂は治す必要があるの?どうやって治す?

1.緊急性のある眼瞼下垂

脳動脈瘤が見つかった場合は、脳神経外科で治療方法の判断がなされます。

2-1.それほど緊急性はないが、詳しく検査が必要な眼瞼下垂

重症筋無力症では、眼だけのタイプと、全身型のタイプで治療方法が異なります。

2-2.それほど緊急性はないが、早めに処置をしたほうが良い眼瞼下垂

先天性眼瞼下垂の場合、弱視になる前に、治療が必要です。

もともとの眼瞼挙筋が弱くて起こることがほとんどです。子供に手術をするということは、全身麻酔での合併症のリスクがあるうえ、大きくなってきたときにまた手術が必要になることが多いといわれていますが、視力を守るために必要かもしれないのでともかく早めに医師の診察を受けて下さい。

先天性の場合、瞼を持ち上げる眼瞼挙筋の力が非常に弱いことが多いので、手術では眼瞼挙筋の力を補助するように、額にある前頭筋の力を借りる吊り上げ術という方法をとります。具体的には瞼と前頭筋の間に、太ももの筋膜や人工膜などを移植します。

3.緊急性のない眼瞼下垂

瞼が瞳孔にかかってきて、見えにくい、鬱陶しい、眼の疲れや肩こり、頭痛など出ている場合は、保険で眼瞼下垂手術を受けられます。

※美容的に、眼の形を整えるなどの場合は、美容整形外科で自費診療にて行います。

緩んだ上眼瞼挙筋を短くしたり、たくし上げて瞼板に縫い付け、伸びた皮膚を余分なところだけ切除したりして、眼を開けやすくします。

もともとある二重の線に沿って切開する方法と、眉毛の下を切開する方法があります。

また、先天性眼瞼下垂のように上眼瞼挙筋がほとんど働いていない場合は、吊り上げ術を選択することもあります。

まとめ

眼瞼下垂は見た目の問題にとどまらず、視機能に影響を及ぼしますし、肩こりや頭痛など体の不調にもつながります。また、小児の場合は放置すれば斜視や弱視の原因にもなりえますので、気になった場合は早めに眼科医に相談しましょう。