ぶどう膜炎は正しい治療を受けないと失明の恐れもあるとても怖い病気です。また様々な合併症もあるため注意深い経過観察も必要になってきます。実際にぶどう膜炎と診断された場合にどのような検査・治療が行われるのか、また気になる合併症についてもみていきたいと思います。
なお、ぶどう膜炎の症状については、「この症状は目の疲れではない?失明の恐れもある、ぶどう膜炎の原因と症状」の記事もご覧ください。

目次

ぶどう膜炎の検査

ぶどう膜炎が疑われる場合には、「視力・屈折検査」、「眼圧検査」、「細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査」、「眼底検査」などの眼科一般検査がまず行われます。細隙灯顕微鏡検査、眼底検査ではより詳しく検査するために点眼薬(散瞳薬)で瞳孔を開きます。

散瞳(さんどう、瞳が大きくなること)すると検査後も4~5時間は見えにくい状態が続きます。検査後は車の運転などは控える必要があります。

その他ぶどう膜炎に関する目の検査として重要な役割を果たしているのが蛍光眼底造影検査、ICG眼底造影検査およびOCT検査です。眼底造影検査では、造影剤を腕の静脈に注射しながら眼底の写真を連続して撮影します。造影剤が血管にスムーズに流れなかったり、血管から漏れ出したりする様子から炎症の範囲や程度が判定できます。

OCT検査は光の反射を利用して、網膜やその下の脈絡膜の形状を調べる検査です。炎症によって起こる網膜浮腫や剥離、萎縮などを検出することができます。

ぶどう膜炎の原因を調べるには、目だけではなく身の精査も必要になってきます。ぶどう膜炎は感染症や自己免疫疾患といった全身疾患が原因となっていることがあるためです。

血液検査

一般的な血液検査に加え、リウマトイド因子、抗核抗体、HLA検査(組織適合性抗原)などの検査を行います。

ウイルス・寄生虫抗体価検査

血液中の抗体の量を調べ、ウイルスや寄生虫などの感染に起因するぶどう膜炎かどうかを判断します。眼内の組織液を採取して調べることもあります。

ツベルクリン反応検査

ツベルクリン注射を行い、48時間後に腫れの大きさを調べます。一般に、サルコイドーシスでは陰性、結核性のぶどう膜炎では強い陽性反応を示します。

胸部レントゲン撮影検査

サルコイドーシスや結核は肺病変(病気による変化)を起こすことが多いため、胸部に異常がないかどうかを調べます。

その他心電図検査、気管支鏡検査、脳脊髄液検査、聴力検査、頭部・胸部のCT・MRI検査などが必要となることもあります。

眼科では眼の状態は検査できますが、全身を調べられるわけではありません。風邪症状、皮膚炎、関節炎などは患者さんからきちんと医師に伝えないと見過ごしてしまう可能性があります。

かすみやまぶしさで眼科を受診したのに「口内炎は?」「湿疹は?」「体重は減っていないか?」「ペットを飼っていないか?」など目には全然関係ないと思われる質問を医師からされることもあります。しかし、これは全身状態を把握するために眼科医にとってはとても大事な問診なのです。目以外の体調の変化なども正確に説明するようにしましょう。

ぶどう膜炎の治療法

医師-写真

ぶどう膜炎は、自己免疫疾患が原因だったり、原因不明なものもあったりするため、治療が難しく、治癒させることは困難なことも多い病気です。

原因疾患が明らかで、治療可能な場合には、その疾患に対する治療と炎症を抑える治療が行われます。

原因不明の場合には、対症療法として、炎症を抑えるためにステロイド薬を使用した治療を行います。ステロイドは、初めは多く投与し、炎症をコントロールした後に目の状態をみながら少しずつ量を減らしていくのが基本です。

ステロイドと聞くと副作用などの印象が強いために抵抗を感じる人もいるかと思いますが、炎症を抑えるのにとても効果のある薬です。ステロイドを急激に減量したり自己判断で中止したりすると、炎症が再発することがあります。適切な使用方法を守って使用しましょう。ぶどう膜炎の治療は長期間にわたることが多いので、ステロイドとも長い付き合いになってくると思います。

前部ぶどう膜炎の場合はステロイド点眼薬による治療が行われます。点眼薬よりさらに強力な方法として眼周囲組織や眼球へのステロイド注射もあります。点眼薬だと目の前の部分にしか効果がありませんが、注射の場合は目の後ろの方の炎症にも効果を発揮します。

後部ぶどう膜炎や汎ぶどう膜炎、及び全身疾患に原因があるぶどう膜炎の場合には、ステロイド薬の内服、点滴による投与が行われることがあります。ぶどう膜炎の種類について詳しくはこちらをご覧ください。

また、近年では、自己免疫疾患の関与するぶどう膜炎に対して、免疫抑制薬の眼局所、あるいは全身投与による治療も行われています。

点眼薬・注射薬・内服薬どれも投与量の調節、副作用のチェックを行う必要がありますので、必ず定期観察を受けて治療を続けていってください。

ぶどう膜炎の合併症

ぶどう膜炎で忘れてはいけないものに合併症があります。ぶどう膜炎の合併症としては緑内障白内障網膜剥離などが挙げられます。白内障や網膜剥離の場合には手術で対応しますが、問題は緑内障です。

ぶどう膜炎があると炎症によって虹彩が水晶体に癒着してしまうことがあります。眼の構造でみると虹彩のすぐ後ろが水晶体なので、炎症によって虹彩が後ろの水晶体にくっついてしまうのです。これを虹彩後癒着といい、癒着によって瞳の形が綺麗な円ではなくなってしまいます。

そして、虹彩が水晶体と癒着してしまうことで目の中を流れる房水の流れを妨げてしまい、眼圧が上がります。炎症により虹彩が角膜根部と癒着し(虹彩前癒着)、房水流出路を塞ぐことにより、房水の排出ができなくなって眼圧上昇が起こることもあります。

ステロイドの副作用により眼圧が上昇するケースもあります。

眼圧が高い状態が続くと目の奥の視神経を障害し視野欠損などを起こしてきます。これが緑内障です。

虹彩には瞳孔括約筋と瞳孔散大筋という二つの筋肉があり、この筋肉が伸びたり縮んだりすることで目の中に入ってくる光の量を調整します。虹彩に炎症があるときに光が入ってきて虹彩の筋肉が伸びたり縮んだりすると眼痛と炎症の増悪を引き起こします。

散瞳薬を用いることにより、虹彩の筋肉の動きを抑制し安静を保つことができます。さらに散瞳薬は、先に挙げた虹彩の癒着防止にも効果があります。散瞳薬による瞳孔管理は眼痛を軽減させるためにも合併症予防のためにも重要なのです。

まとめ

ぶどう膜炎は炎症の原因や部位、程度によって治療法や治療期間なども様々です。

特に、治療で使用されるステロイド薬や免疫抑制薬は、きちんと医師の指示に従って使用する必要があります。調子が良いからと薬を自己判断でやめてしまったり、不規則に用いたりすると急激に状態が悪化する可能性があるためです。

ぶどう膜炎は、完治させることはできない場合もあります。その場合でも、炎症をコントロールして、視力障害につながる合併症を最小限に食い止めていくことが大切です。長期にわたる治療・経過観察が必要な場合もあるかもしれませんが、心配な症状があればすぐに医師に相談しながら治療を行っていきましょう。