「私の赤ちゃんがすり替えられている!」「誰かがドアから覗いてこっちを見てる…」「頭の中がもうめちゃくちゃ…」出産後のママがこんなことを言い出したらどうしますか?産褥期に起きる精神的な症状には、実に様々なものがあります。皆さんが耳にしたことがあるのは、マタニティブルーや産後うつなどの病名かもしれません。では「産褥期精神病」はご存知でしょうか?この記事では、産褥期精神病の症状とそれに対処する方法について解説します。

目次

産褥期精神病って一体なに?

出産後は、様々な精神的症状が生じることがある

子供を出産した後、1か月以内の産褥期に起こる精神的な症状や病気は主に5つあります。中でも産褥期精神病は、産後の比較的早い時期に急激に発症するのが特徴です。

それぞれの発症の時期は大まかに下記のようになります。

  • マタニティブルーズ:分娩直後~産後2週間以内に発症し、大半は2週間以内に消失
  • 産褥期精神病:産後2,3日から2週間以内に急激に発症
  • 産後うつ:産後2週以降~6か月前後で発症
  • 神経症(産後のストレスによる不安や抑うつ):発症時期の特定なし
  • 器質的な原因(出産時の出血や脳の循環障害)による精神症状:発症時期の特定なし

産褥期精神病で起こり得る症状

産褥期精神病という言葉には、明確な定義はありません。しかし、マタニティブルーズや産後うつと比べると重症の状態といえます。

産褥期精神病では、統合失調症の症状によく似た症状が起こります。しかし統合失調症として診断されないのは、産褥期精神病の場合、急激な発症、幻覚や妄想が不定、人格の荒廃が無い、薬物治療で容易に症状が消失、比較的短期間で寛解することなど特徴の違いがあることによります。下記は、産褥期精神病で起きる可能性のある精神症状です。

幻覚・錯覚

実際にはないものを知覚したり、間違えて認識したりすることです。視覚、聴覚、臭覚、触覚、味覚のうちのどれか、または複数に現れます。

例えば実際には無いのに、ガスの臭いを感じたり、「人が立ってこちらを見ている」「死ねと聞こえる」などを訴えたりする場合があります。

妄想

道理に合わない内容の強い思い込みがあり、間違っているという自覚が全くない症状のことです。例えば、「誰かに殺される」「赤ちゃんを奪われる」という思い込みがみられます。

せん妄

意識障害が起こり、わけのわからないことを口走ったり、異常な行動をしたりします。わけが分からず歩き回る・暴力的になるなどの症状もみられることがあります。

錯乱

感情や思考が混乱し暴れることです。興奮して大声で叫んだり、だれかれ構わず暴力をふるったりします。制止が効かない状態です。

混迷

意識はあるものの、刺激に対して全く反応しない状態です。話さない、答えない、動かないという特徴があります。

うつ状態

気分が落ち込み、言葉や考え方、行動がネガティブになる状態です。笑顔が無く、本人も幸福感を感じることができなくなります。

躁状態

気分が高揚し、多弁になったり、怒りっぽくなったり、全く寝ないでも大丈夫と考えたりといった症状がみられるようになります。

治療は入院が必要になることも!

布団-写真

産褥期精神病の症状の対処には、医師の診断と薬物治療が必要です。

幻覚や妄想に対しては、医師より抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬などを処方してもらいます。極度の興奮・錯乱状態にある場合や、自分を傷つけたり、赤ちゃんや家族に危害が及んだりすることが予測される場合には、入院治療をすすめられることもあります。ですから、産褥期精神病の症状が見られた場合には、個人や家族で対応しようとするのではなく、精神科へ受診をすることが大切です。 産褥期精神病は適切に治療が行われれば、比較的良好な改善が見込めます。

まとめ

非定型精神病の幻覚や妄想などの症状は、本人や家族を不安に陥れるかもしれませんが、慌てずに適切な対処をすれば短期間で快方にむかう病気です。産後の不安定な時期をうまく乗り切るには、必要に応じて専門家の助けを借りることも必要です。早めの対応を心掛けましょう。