スポーツをしている人に多い半月板損傷ですが、強い痛みやロッキング(膝の曲げ伸ばしができなくなった状態)が起こるととても不安になりますね。また、年齢とともに徐々に痛みが出てきた人は、痛みが強くなり、日常生活が送りづらくなってしまうこともあります。これらの状態を改善するためにはどのような治療法があるのでしょうか?

半月板損傷の症状や原因については「膝の痛みと引っかかり、半月板損傷かも?その症状と原因とは」に詳しくまとめていますのでご参照ください。

目次

整形外科で行う検査とは

整形外科ではまず、膝のどの動きで痛みが起こるのかを確認します。実際に膝を多方向に動かしますので、痛みを感じたときはきちんと医師に伝えましょう

関節が腫れている場合、関節内に水(関節液)や血液が溜まっていることが考えられます。その場合は、症状を軽くするために注射器を使ってそれらを抜くこともあります。また、そうすることでより確実な診断につながります。例えば、関節液に血液がたまっている場合は骨折や靭帯損傷を疑いますし、関節液が黄色で濁っている場合は痛風や偽痛風という病気の可能性があります。

確定診断をするためにMRI(磁気共鳴画像診断装置)を行います。現在の医療ではMRIが半月板損傷の診断にもっとも有用であるとされています。

半月板損傷の治療法

医師-写真

半月板損傷の治療法は保存的療法と手術療法があります。症状や年齢、日常生活やスポーツ活動、職業などを考慮して治療法が決まります。患者さんの症状の強さや、MRI画像での半月板の損傷程度に応じて、保存的治療か外科的治療を選択してゆきます。

保存的療法

膝の腫れや痛みが強いときは、関節に負担をかけないよう可能な範囲で膝の安静を保つことが大切です。強い痛みがある場合は、痛みや炎症を抑える目的で湿布や飲み薬(痛み止め)を使います。

膝に水や血液が溜まっている場合は、注射器を使ってそれらを取り除きます(関節穿刺)。局所麻酔剤やステロイド剤(消炎効果)、ヒアルロン酸などを注入し症状を抑えることもあります。

施設によっては筋力低下の予防や痛みの軽減を目的として、物理療法(マイクロ波、レーザーによる温熱療法、低周波による電気刺激)などリハビリテーションを行うところもあります。

手術療法

保存的療法で効果がみられない場合や、膝の疼痛が強くスポーツ活動、日常生活、職業上大きな支障がある場合、半月板が引っ掛かり膝の曲げ伸ばしが十分にできない場合(ロッキングといいます)は手術が必要です。

手術療法:関節鏡について

関節鏡は膝に2か所ほど創(各1cm程度)を開け、関節内にカメラレンズを挿入し、モニターに映して手術を行います。手術前のMRI検査で損傷部位が不明瞭だった場合でも、関節鏡をすることで実際に損傷部位を確認することができます。また、MRIでは評価困難な微細な軟骨損傷も関節鏡で確認することができます。

関節鏡で行われる麻酔は、全身麻酔のほかに、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、局所麻酔などが用いられます。全身麻酔を用いない場合は、手術中に意識がありますので、実際にモニターを見ながら医師から説明があったり、治療方針が決まったりする場合もあります。手術中に音が聞こえるのが嫌な場合や、緊張して高血圧になってしまう場合は全身麻酔を併用して手術を行います。

麻酔の詳しいことは「手術について:これだけは知っておきたい手術の準備や当日の流れって?」をご参照ください。

手術時間は麻酔を含め1~2時間程です。

手術法の特徴と術後の経過について

機材を操作する医師-写真

半月板損傷の手術法は2種類あります。

半月板縫合術

半月板の断裂部が大きい場合には、損傷した部分を縫い合わせる手術を行います。半月板縫合用の器械を用いて、数か所縫合します。術後に激しく動くと縫合部が再断裂してしまいますので、数週間の安静が必要です(体重をかけないように、松葉杖を用いることもあります)。目安としてスポーツ復帰まで4~6か月のリハビリが必要です。

半月板切除術

切除術は損傷した部分を切り取る方法です。小さい断裂や、すでに半月板が変性して縫合できない場合に行います。縫合術に比べ術後の制限は軽く、復帰するまでの時間は早いのですが、もとある組織が欠損することで、将来的に変形性膝関節症になる可能性が高くなります。目安としてスポーツ復帰まで2~3か月かかります。

入院期間は縫合術、切除術ともに短期間(3-4日程度)で済みます。麻酔法によっても変わりますが、施設によっては日帰りや1泊入院で手術をしているところもあります。

退院後は手術後の状態に合わせ、医師の指示によってリハビリテーションを行うこともあります。リハビリテーションでは、傷の治りに合わせて膝の曲げ伸ばしを訓練したり、筋力低下を予防したりします。

手術後に痛みが発生するケースについて

手術後、膝が痛んだり、腫れたり、しびれたりする場合がありますが、多くは一過性のもので、術後1か月程度で自然に軽快してくることが多いです。また、疼痛も通常の痛み止めで抑えられる程度のことが多いです。術後に痛みがある場合は、まずは膝に負担をかけないように注意して生活しましょう。

逆に、時間が経過しても痛みが軽快してこないときは気を付けなくてはいけません。半月板を切除した部分はクッションがなくなっていますので、膝の痛みがあるのに無理をして運動や仕事を行っていると、半月板を切除した部分の骨や軟骨が痛むことがあります。1-2か月が経過しても痛む場合には異常がないか検査をすることもありますので、長引く痛みは我慢せず、医師に相談しましょう。

まとめ

半月板損傷の治療では症状、年齢、活動性(スポーツ、職業など)によって治療方針が決まります。保存的に通院治療を行うか、縫合や切除などの手術療法を行うことになりますが、手術であっても短期間の入院ですむことがほとんどです。半月板損傷を放置しておくと、将来的に関節軟骨が痛む原因にもなります。病院に行くことを悩まれている方はぜひ一度受診し、相談してみてはいかがでしょうか。