ダニが人に寄生することによって起こる疥癬(かいせん)という病気は、非常に強いかゆみを伴うことがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。疥癬にかかったらどのように治療をすれば良いのでしょうか?また一緒に住む家族にうつさないために気を付けることは?今回は疥癬の治療法とセルフケアについてご説明します。疥癬の症状などについては、「犬からうつることも!?疥癬の原因と症状とは」をご覧ください。
受診のタイミングは?
- 夜にかゆみが増す
- 湿疹やしこりなどの症状が皮膚に現れる
- 家族に同じような症状を持つ人がいる
これらの項目が2つ以上あてはまるときは、疥癬を疑って皮膚科を受診しましょう。
疥癬はどのように診断される?
皮膚にヒゼンダニがいることを確認できれば診断が確定します。かゆみや赤いぶつぶつなどの症状がある皮膚の一部をはさみで切り取って、顕微鏡で虫体や卵を観察します。また、ダーモスコピー検査は、皮膚の一部を取らないで拡大して行う方法です。
疥癬の治療は?

皮膚に寄生しているヒゼンダニを殺すことを目的とした薬物治療が行われます。
飲み薬・塗り薬
疥癬だと診断された後、飲み薬としてイベルメクチンというダニを殺す薬が処方されます。イベルメクチンは、週1回の服用で2回服用します。体調を崩してしまう場合もあるため、処方は慎重にされます。
塗り薬としてはフェノトリンローション、イオウ剤、クロタミトンクリームや安息香酸ベンジル(使うときには患者か代理人の同意が必要)が処方されます。
薬を塗るときに大切なことは、症状が現れていない部位も含めて首から下の全身にくまなく塗ることです。手が届かない部位は家族に塗ってもらいます。特に手と指の間、足や外陰部には念入りに塗ります。
かゆみ止めの薬
かゆみが強い場合は、抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されます。
いつ治る?
疥癬はしっかり治療をしていれば症状は軽快するとされており、通常疥癬の場合は、3週間~1か月程度で治ります。治った後の3か月は再発していないか皮膚をチェックするようにしましょう。
角化型疥癬の場合は、2か月程度で終息しますが、治った後の6か月は皮膚のチェックを続けます。
高齢の方は治療に時間がかかることもあります。周りにも患者がいるときは、お互いにうつしあう合うことがないように同時に治療するようにします。
日常生活で気を付けることは?
疥癬は人から人へ移る病気なので、家族など周りの人にうつさないように気を付けることが大切です。通常疥癬にかかったときは、次のことに注意しましょう。食事に対しては特に制限がありません。
- 入浴時は手足の指の間、外陰部を丁寧に洗う
- タオルなど直接肌にふれるものは、自分専用のものを使う
- 下着、パジャマやシーツ類は毎日交換する
- 同じ部屋で就寝しない
角化型疥癬の場合は、感染力が強いためさらに次のことに注意が必要です。
- できるだけ個室を使う
- シーツ類、パジャマを毎日交換する
- 入浴の順番は最後にする
- あかが飛び散らないように気を付けながら洗い、厚くなったあかをふやかしてこすり落とす
家族が気を付けることは?

一緒に暮らす家族は疥癬にかかった患者から病気がうつらないように気を付けますが、通常疥癬は感染力も強くないので、患者の負担にならないために過剰な対応をとらないようにしましょう。
通常疥癬
- 患者と接する前と後は手をしっかり洗う
- 肌と肌や手と手を長時間触れないように気を付ける
- 同じ部屋で布団を並べて寝ない
- 肌に直接触れるタオルなどは同じものを使わない
角化型疥癬
- 患者と接する前と後は手をしっかり洗う
- 感染力が強いため、患者と接するときは手袋や予防着をつける
- 患者の部屋に入るときは、スリッパや靴を履き替え、靴底に付いたゴミを外に出さないように気を付ける
- 患者の洗濯ものは50度以上のお湯に10分以上浸してから洗濯をして十分に乾かす(乾燥機を使うときは、通常通りの洗濯で構いません)
- 患者の部屋はモップや粘着シートなどで床に落ちた皮膚のかさぶたなどを取り、掃除機をかける
- 治療を始めたときと終わったときに殺虫剤を患者の部屋に噴きかける
市販の殺虫剤の効果は?
薬局などで売られている殺虫剤は人体への安全性が確認されていないものもあるので避けます。シラミ駆除剤のシャンプーの疥癬に対する効果は明らかになっていません。角化型疥癬の場合は、感染防止のため患者の部屋や寝具などに市販の殺虫剤を噴霧することは効果があると考えられています。
まとめ
夜間の強いかゆみ、湿疹やしこり、家族に似た症状を持つ人がいるなどが見られたら疥癬を疑い皮膚科を受診しましょう。皮膚にヒゼンダニがいるか確かめるための検査をします。疥癬の治療はダニを殺すことを目的として薬物治療が主体となって進められます。家族に疥癬の患者がいる場合は、なるべく接触しないように気を付けましょう。