出生前に「先天性食道閉鎖症(せんてんせいしょくどうへいさしょう)」と診断されたら、どうすれば良いのでしょうか。耳慣れないこの疾患は先天性の食道の疾患です。一体どのような病気なのか、どのようにして診断されるのか、そしてどのような治療を行うのでしょうか。今回は先天性食道閉鎖症について解説します。

同じく小児の食道疾患に分類される「先天性食道狭窄症」については「赤ちゃんの吐き戻しの原因にも…先天性食道狭窄症の治療とは」 をご覧ください。

目次

一体どんな病気?

先天性食道疾患は、「先天性食道閉鎖症」の他に「先天性食道狭窄症」などがあります。食道の先天性疾患の代表的なものとされている先天性食道閉鎖症は、食道が胃に続かないで途中で切れている病気です。

生後まもなく症状が現れ、赤ちゃんの口から泡状の唾液が大量に流れ出てしまうことで、ご両親が気がつかれることが多いです。唾液を飲み込んでも食道が閉鎖されているので外に出てくるのです。

ミルクが飲めないために、生まれてから数日で診断がついて産科・小児科から小児外科へ紹介されます。原因については明らかになってはいませんが、先天的なものであると考えられています。

先天性食道閉鎖症の種類は?

食道と気管、気管支の状態から病型が分類されています。先天性食道閉鎖症の約90%は胃側の食道は気管と繋がっていて、残りの約10%は気管と食道が繋がっていません。

先天性食道閉鎖症の種類-図解
発生頻度 状態
A型 5~10% 食道と胃が完全に離れて両方がどこにも繋がっていない
B型 食道の先が気管に繋がっている
C型 85~90% 胃の先が気管に繋がっている
D型 1%前後 食道と胃のそれぞれが気管に繋がっている
E型 5% 食道と胃は繋がっているが、一部が気管に繋がっている

どのように診断される?

妊娠中に胎児の状態を検査して診断することを「出生前診断」といい、超音波検査などの画像検査、遺伝子や染色体の検査、機能や代謝産物の検査に基づく診断が行われます。先天性食道閉鎖症もこの出生前診断ができる症例があります。

  • 羊水過多(赤ちゃんが生まれる前の母親のお腹が通常よりも大きい)
  • 胎児の超音波検査で胃の空気である胃泡(いほう)が確認しがたい

などの所見があったときに、先天性食道閉鎖症が疑われます。

どのように治療する?

先天性食道閉鎖症の治療は小児外科による外科手術が必要です。胃側の食道が気管と繋がっている場合は、その部分を切り取ってその後に離れた口側の食道と胃側の食道を繋ぎます。普通の食道の手術は胸を大きく切開するので、不安を抱く方も多いと思いますが、脇の下のあたりを4㎝ほど切開して手術を行う病院もあります。この方法は傷跡が腕に隠れてほとんど目立たず、また筋肉をあまり切らないために手術後の運動機能障害もないとされています。

状況によって手術の方法も大きく異なり、食道を切り離す手術と繋げる手術が同じ日に行われる場合もあれば、全身状態の不良な状態などでは何度かに分けた手術が必要になる場合もあります。他に心臓、腎臓、消化管の異常を合併することが多い病気なので、心臓外科、泌尿器科、小児科と共に治療する体制が必要となります。

まとめ

先天性食道閉鎖症は、食道が胃に届かないで途切れている病気です。原因は明らかになっておらず、生まれつきのものと考えられています。出生前診断で分かる場合や、生後ミルクを吐き戻す症状によって診断がつく場合があります。

治療方法は外科による手術が必要となり、離れている食道と胃を繋ぎます。他の臓器の異常を合併することも多い病気なので、複数の診療科と連携して治療にあたります。