先天性の食道疾患には、食道が狭くなっている「先天性食道狭窄症(せんてんせいしょくどうきょうさくしょう)」と食道が途中で途切れている「先天性食道閉鎖症」があります。先天性食道狭窄症は非常にまれに起こる病気だと考えられていますが、一体どのような症状に気を付けるべきなのでしょうか。今回は先天性食道狭窄症について説明します。

目次

一体どんな病気?

先天性食道狭窄症は、食道が狭くなって生まれながらにミルクや食べ物が食道内をうまく通らない病気で、数十万人に1人くらいの割合で見られるといわれています。

原因としては、生まれつき食道の壁の筋肉が厚い、食道の粘膜が膜のようになっていて食べ物の通り道をふさいでいる、気管の軟骨が食道の壁に入り込んでいることなどが考えられます。食道が狭くなっている部分は胃に近い方の食道の下の3分の1くらいの場所にあります。多くの場合はミルクだけを飲んでいるときは症状が見られず、離乳食を始めた頃や固形物を食べ始めた頃に食べ物が狭いところにつかえてしまい、食べ物を飲み込んだときに苦しがる、唾液や食べ物を吐く、などの症状がみられることで発覚するようです。

どのように診断される?

診療科は小児外科です。食道の中を通る造影剤をレントゲン透視でみる「食道透視検査」によって診断されます。

通常であれば造影剤は食道内に留まらずに胃へスムーズに流れますが、食道が狭くなっている場所があると造影剤が食道内に溜まる様子がみられるからです。

さらに「食道内圧検査」を行って、食道が狭くなっている場所、その長さ、範囲や形などを調べます。食道狭窄症と似た症状がみられる胃食道逆流症食道アカラシア(食道と胃の繋がり目の筋肉の機能が障害された疾患)などと区別をするためにも必要となります。

どのように治療する?

補聴器-写真

内視鏡による治療

食道の狭いところを拡げる拡張術です。外科手術に比べて身体への負担が少なく、後遺症も少ないので治療後の生活の質の向上が期待できます。

手術による治療

拡張術を行っても効果がない状態のときは、狭いところを外科的に切って繋ぐ手術を行います。

子供への治療の配慮

子供の身体は身体機能、疾患の種類、生活習慣などが大人とは大きく異なり、あらゆる臓器が未熟です。このような子供の身体の特徴を十分に理解した上で手術を含めた治療を行うことが必要となります。

また、子供が手術をした場合は、術後の経過が一生を通して長いために手術後の発達や成長を妨げないように、身体機能を重視した手術・治療がより重要となってきます。子供について専門的な知識をもった外科医が小児外科医です。手術と同等に効果がある療法を取り入れる、手術の傷痕が目立ちにくい部分を切開するなど、疾患を持つ子供と家族の負担を減らすための配慮を行いながら、きめ細かな医療が行われています。

まとめ

先天性食道狭窄症は、食道の一部が狭くなっている病気です。赤ちゃんがミルクを飲んでいるときは気づかず離乳食を始めたころに、食事が食道の狭いところに使えることで気づくことがあります。
食べ物を飲み込んだときに苦しがる、唾液や食べ物を吐くなどの症状が続いたときは注意が必要です。

内視鏡による拡張術や外科手術によって治療を行います。子供は身体が未熟なので、小児外科では今後の発達や成長を妨げないようなきめ細かな医療が行われています。