食べ過ぎたり飲み過ぎたりすると、ひどい胸焼けに襲われたり、げっぷが多く出たりという症状は誰にでもあると思います。
でも、そんな症状が慢性的に続く場合、「逆流性食道炎」という病気かもしれません。食生活の変化に伴い、日本人の患者さんが増えている逆流性食道炎について見ていきましょう。
胃液が組織を溶かしてしまう?!
人間の胃は、強い酸性の胃液で満たされています。通常、胃は粘膜で覆われているため、胃液で溶かされることはありません。しかし、何らかの理由で胃液が食道へと逆流してしまうことがあります。
これを胃食道逆流症といいます。胃液によって食道が溶かされ、炎症が見られるのが逆流性食道炎です。
放っておいても大丈夫?逆流性食道炎の症状って?
逆流性食道炎の代表的な症状としては、以下のようなものがあります。
これらの症状は不快ではありますが、なかなかすぐに病院に駆け込もうという気分にはなりません。
ですが、逆流性食道炎は放っておくと合併症として、食道の粘膜が胃の粘膜に置き換わってしまうバレット食道を引き起こす原因となります。さらに、このバレット食道は食道がんに繋がる恐れがあると考えられているため、しっかりと治療を行うことが必要です。
逆流性食道炎かなと思ったら

逆流性食道炎が疑われる症状が見られたら、消化器科の医師に相談しましょう。以下のような検査が行われます。
問診
逆流性食道炎の診断のために作られた、QUEST問診票といわれる世界共通の問診票を使って症状を判定することがあります。
問診では、自分が感じている症状全てを医師に正確に伝えることが大切です。
内視鏡検査
内視鏡、いわゆる胃カメラを口や鼻から挿入し、モニターで食道の粘膜の状態を確認する検査です。逆流性食道炎の診断に最も有用な検査法です。
逆流性食道炎の原因が器質的疾患によるものか(例えば食道裂孔ヘルニア)どうかが判定できます。
「内視鏡」と聞くと敬遠する方もいることと思いますが、ほとんど痛みや違和感を感じさせずに検査をしてくれる先生もいるようです。「大腸内視鏡の名医はどこにいる?消化器内視鏡専門医が考える「上手な大腸内視鏡検査の受け方」」の記事も合わせてお読みください。
また、バレット食道が疑われる時は、内視鏡検査時に、病変部分の組織を取って検査を行うこともあります。
PPIテスト
症状があるのに内視鏡検査で異常が見られない場合に行う検査です。
逆流性食道炎の治療に用いられるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を7日間にわたって服用してみて、効果があるかをみます。
効果があれば、逆流性食道炎である可能性が高く、効果が見られない場合は他の病気を疑う必要があります。
逆流性食道炎は治療をすれば良くなります

逆流性食道炎の治療は、まずは内科的治療が行われます。
上にも出てきたPPIや、ヒスタミンH2受容体拮抗薬という薬を長期間にわたって薬を服用することで胃酸を抑えます。
その他、胃の蠕動運動を改善する薬や食道粘膜を胃酸から保護し、傷ついた粘膜の修復を促す薬、あるいは漢方薬などを併用することがあります。
さらに、薬の内服だけではなく、生活習慣病の一貫として逆流性食道炎が発症することがありますので、食生活の改善(夜遅い食事を避ける、脂っこい食事やコーヒーの摂り過ぎに注意するなど)や、肥満(内臓脂肪の増加が胃を圧迫し、胃酸の逆流を促進する)の是正を行うことが必要です。
薬の服用を行っても症状が改善しない場合や再発を繰り返す場合は、外科的治療が行われます。
胃から食道への逆流を防ぐため、胸の方にせり上がった胃をお腹の中に戻し、胃酸の逆流を防止するための形成手術を行うことが多いです。
最後に
慢性的に続くげっぷや胸焼け、「こういうものなんだ」と諦めてしまっていませんか?逆流性食道炎は、根気よく治療を行えば治る病気です。
気になる症状がある方は、かかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。