皮膚がんは、発生する皮膚組織の違いによって分類され、それぞれ異なる症状を示します。悪性度や転移のしやすさなどもそれぞれ異なり、治療法にも違いがあります。

皮膚がんは発見が早ければ根治も可能ながんですから、早く診断・治療につなげたいものです。ここでは、診断までの流れや皮膚がんの治療法について解説していきます。

目次

確定診断のために行われる検査

顕微鏡-写真

問診では、症状はいつから出ているのか、痛みやかゆみの有無、出血や膿が出ているかといった症状に関する情報を確認します。さらに、病歴や持病の有無、服用中の薬、家族の病歴などについても聴き取りが行われます。

診察、問診から皮膚がんが疑わしい場合、確定診断のための検査が行われます。

ダーモスコピー検査

皮膚を10~20倍に拡大して観察する実体顕微鏡を用いた検査方法です。痛みを伴わず、短時間で結果がでます。悪性黒色腫、基底細胞がん、ボーエン病などの診断に用いられます。

特に、皮膚生検により転移のリスクがある悪性黒色腫では、ダーモスコピー検査が有用です。

皮膚生検(せいけん)

病変のある皮膚をメスで部分的に切りとり顕微鏡(けんびきょう)で細胞の性質を調べます。生検は切りとる部分に局所麻酔(きょくしょますい)をかけて行い、短時間で終わります。結果が出るまでにおおよそ2週間かかります。

悪性黒色腫の場合は、部分的に切りとると転移を引き起こすリスクがあるため、手術で腫瘍全体を切除する全切除生検が推奨されています。

エコー検査

皮膚がんの厚さやリンパ節転移がある程度わかり、手術で切除する範囲の決定に役立ちます。

胸部レントゲン検査・CT検査・PET検査

がんの転移が疑われる場合に、リンパ節や他の臓器に転移していないか確認します。

皮膚がんの治療方法

手術器具-写真

皮膚がんの治療には、手術療法、放射線療法、薬物療法がありますが、皮膚がんの種類や病期(ステージ)によって選択される治療法は異なります。

手術療法

転移のない皮膚がんの治療では手術療法が第一選択となります。リンパ節転移があらかじめ分かっている場合は、所属リンパ節郭清(かくせい、リンパ節を切除すること)を同時に行います。術前に、リンパ節転移が明らかでない場合、手術中にセンチネルリンパ節生検(がんが最初にたどりつくリンパ節に転移が及んでいないか手術中に検査を行うこと)を行うことがあります。センチネルリンパ節に転移を認めた場合は所属リンパ節郭清を行います。

切りとる皮膚の範囲が広く、傷をぬい合わせることができない場合は、植皮(しょくひ、自分の皮膚の一部を切りとり、手術で切りとった部分にあててぬうこと)が行われることもあります。

手術後は痛み出血、傷口の感染、ひきつれ感などの合併症を起こすことがあります。またリンパ節郭清を行った場合、そのリンパ節が管轄(かんかつ)している部位のリンパ液の流れがとどこおり、リンパ浮腫(むくみ)が生じやすくなります。むくみに気づいたら、すみやかに担当医に連絡しましょう。圧迫療法、専門的なリンパドレナージなどで改善する場合があります。

放射線療法

有棘細胞がんの場合に有効な治療で、再発や手術が適応にならない場合などに行います。放射線をあてた部位が赤くなり、ヒリヒリとした痛みを感じ、ひどくなると水ぶくれ、ただれを起こすことがあります。

また、悪性黒色腫には放射線治療は効きにくいですが、脳や骨への転移に対して症状をやわらげる目的で行われるケースがあります。

薬物療法

他の臓器に転移がある場合や再発例では薬物療法による治療が行われます。薬物療法は、腫瘍を小さくし、進行を遅らせることが目的となる治療です。薬の効き目が血液を通して全身に運ばれるため、転移部位にも効果を発揮します。

 

これらの主な治療のほかに、有棘細胞がんの前段階である日光角化症では、液体窒素(えきたいちっそ)を使って組織内の温度を急速に冷やし、細胞を凍結させて壊す凍結療法を行う場合もあります。

皮膚がんの予後は?

基底細胞がんボーエン病ではほとんど転移しないため、手術のみで根治が可能で予後は良好です。乳房外パジェット病では表皮内にとどまっていれば予後は良好ですが、他臓器への転移や浸潤が進んでいるケースでは予後は良くありません。

悪性黒色腫では、治療しても2年以内の再発が70%3年以内では80%と高く10~20年後の再発もまれにあります。がんが上皮内にとどまっている段階で手術できれば5年生存率は100%ですが、リンパ節や周囲の皮膚に転移がある場合では50%、他の臓器に転移が及んでいる場合は10%前後と低くなります(愛知県がんセンター中央病院|がんの知識|皮膚がん)

有棘細胞がんは大きさが2cm以下の段階で手術ができれば5 年生存率はほぼ100%、所属リンパ節転移があると55%、他の臓器に転移が及んでいる場合では30%以下となります(愛知県がんセンター中央病院|がんの知識|皮膚がん)

いずれも、早期発見してごく初期の段階で治療を行うと予後が良く、いかに早期発見するかが大切となります。

まとめ

皮膚がんの診断は、最近では痛みを伴わないダーモスコピー検査が用いられるようになり、診断技術が向上しています。治療は手術療法が基本となりますが、転移のある進行がんの場合や再発例では放射線療法や化学療法も行われます。いかに早期に発見し、完全に取り去れるかが、予後を大きく左右するがんですので、ときどき自分の肌をくまなく観察してみることが大切です。