ワルファリンは血をサラサラにしてくれる薬として、脳血管疾患や心臓疾患の治療に使われています。しかし、正しく服用しないと思わぬ副作用がみられたり、効果が十分に現れなかったりすることがあります。ワルファリンの効果、服用時に注意したい食品、飲み忘れの対処、副作用の兆候などをご紹介します。
ワルファリンはどんな薬？
ワルファリンは、血液を固まりにくくして、血管内や心臓内に血栓ができるのを防ぐための抗凝固薬です。薬としての名前は、一般名は「ワルファリンカリウム」で、商品名は「ワーファリン」です。「ワーファリン」と「ワルファリン」の呼び方で混乱しやすいのですが同じものです。
ワルファリンは主に、以下のような病気で使われています。
- 心臓人工弁置換術後
- 心房細動
- 心筋梗塞
- 脳血栓症
- 静脈血栓症
- 肺塞栓症
ワルファリンの効果
ワルファリンは血を固まりにくくする作用があり、上記に示したような病気の発生、再発を防ぐために使われるお薬です。ワルファリン以外にも血液をサラサラにするお薬はありますが、どんな違いがあるのでしょうか。
ワルファリンの働き：ビタミンKの働きを阻害する
血液の中には、出血した時に血を固まらせる血液凝固因子という物質があります。この血液凝固因子はビタミンKの働きによって肝臓でつくられています。ワルファリンはビタミンKの働きを阻害することで血液が固まるのを防ぎ、血栓ができないようにするのです。
抗血小板薬とは異なる働き
血液をサラサラにしてくれる薬には、他にも抗血小板薬という種類があります。これにはバイアスピリン、パナルジン、プラビックスなどがあります。
先にも述べましたがワルファリンは抗凝固薬といい、抗血小板薬とは効き方が異なります。ビタミンKを阻害するのはワルファリンだけです。
抗血小板薬は、動脈硬化などによる動脈の血栓に効果があり、抗凝固薬であるワルファリンは、心房細動などによる静脈の血栓に効果があります。
食事における注意点
ワルファリンは、ビタミンKの働きを阻害して、血液が固まるのを防ぐ薬であるため、基本的には、ビタミンKを含有している食品が好ましくありません。食べてしまうとワルファリンの効果が弱まってしまいます。
食べてはいけない食品
食べてはいけない食品は、納豆、青汁、クロレラの3つです。納豆は、含まれている納豆菌が腸内においてビタミンKを増やす効果があるために禁忌となります。ただし、ネバネバが悪いわけではないので、オクラや長芋などは特に問題ありません。青汁、クロレラもビタミンKを豊富に含んでいるので食べないようにしましょう。
緑黄色野菜や海藻類も注意
納豆、青汁、クロレラ以外にも一般的に緑黄色野菜や海藻類にも、ビタミンKは含まれているので、なるべく一度に大量に食べ過ぎないようにしましょう。
アルコールの過剰摂取は控える
アルコールも実は、ワルファリンの作用に影響してしまうため、飲み過ぎは控えるようにした方がいいといわれています。
これは、過剰にアルコールを摂取すると肝機能が低下して、肝臓により代謝されるワルファリンの血中濃度が高くなり、副作用が生じる可能性が強くなってしまうのです。禁酒とまではいいませんが、たしなむ程度にしておきましょう。
サプリメントも注意が必要
サプリメントにも併用に注意した方が良いものがあります。特にセントジョンズワート（セイヨウオトギリソウ）は、薬物代謝酵素が誘導されてワルファリンの効果が減少します。その他にもビタミンKを摂取するサプリメント、クロレラは避けるようにしましょう。
飲み忘れた時の注意点
飲み忘れた時にもワルファリンの場合には注意が必要です。くれぐれも忘れた分をまとめて一度に飲んではいけません。もし、間違えて多く飲んでしまった場合には、早急に医師に連絡しましょう。
飲み忘れに気がついた際には、次に飲む時間と近くなると効果が強く出てしまい危険なので十分な間隔をあける必要があります。次の目安を参考に判断しましょう。
- 飲み忘れて12時間以内であれば、ただちに服用
- 飲み忘れて12時間以上であれば、今回は飲まずに次の本来の服用時点で通常と同じ量を服用
ワルファリンは厳密に体の中の量を管理しなければいけないお薬であり、用法用量を守って毎日続けて服用することが大切です。
注意すべき副作用の兆候
ワルファリンの作用が強く現れると起こりやすいのが出血傾向です。もし、副作用として下記に示すような兆候が出たら、早急に医師に連絡しましょう。
- 鼻血
- 歯茎の出血
- 月経過多
- 血痰
- 傷口からの多量出血
- 吐き気、嘔吐
- 頭痛
- 手足に力が入らない
など
生活上の注意点
上記で紹介した食事についての注意以外にも、下記のような点にも気をつけてください。
- あざや内出血ができやすいので、打撲や打ち身ができるような運動は避ける
- 鼻血が出やすいので、鼻を強くかまないようにする
- 歯磨きの時は出血に注意して優しくみがく
- 刃物や髭剃りで怪我をしないように気をつける
- 歯の治療を受ける場合にはあらかじめ歯科医師、主治医に相談する
- 胎児に影響を及ぼす場合があるため、妊娠を希望する場合には医師に相談する
まとめ
ワルファリンは正しい飲み方をしていれば、血液を固まりにくくして血栓ができないように防いでくれる薬であり心臓や脳血管の病気を防いでくれます。ただし、今回ご紹介した食事における注意点には、他のお薬とは異なりワルファリンに特徴的なものがあります。十分に気を付けてください。