痰(たん)を出したときに、血液が混じっていたら、ほとんどの方は驚くと思います。
風邪症状である痰やは誰もが経験したことある症状なので、慌てることは少ないと思いますが、痰に血液が混じっているとなれば、どこかから出血しているということで、何かの病気なのではないかと心配になるでしょう。

今回は、血痰(けったん)について、どういったときに起こる症状なのか詳しく説明していきます。

目次

痰(たん)って何?

痰とは、気道の粘膜からでた分泌物に細菌やウイルス、塵埃などが混じったものです。

細菌感染が起こると、気道分泌物が増加し、死んだ細菌やウイルスを含み粘度が強くなります。

通常、私たちは無意識のうちに気道分泌物を飲み込んでいます(嚥下)。そのため、健康な状態で気になることはそれほどありません。

しかし、量の増加や性状の変化などで嚥下しきれなくなると、痰として排泄されます。

血痰(けったん)とは

痰に血液が混じっている場合を血痰(けったん)といいます。色調のイメージは、茶色や暗赤色、赤色です。

口から痰と一緒に血が出た場合、出血した可能性のある部位としては、鼻の中・口の中(歯肉・舌等)・のどからの出血(咽頭・喉頭)気管支・肺からの出血(下気道)が考えられます。

鼻の中からの出血では、何かのタイミングで出た鼻血が知らないうちに喉に回っていたり、口の中の出血では歯槽膿漏歯肉炎があったりするとそこが出血源となったりします。

痰の特徴としては、血線を引いたものはのどからの出血であることが多く、全体的に赤い痰は肺からの出血であることが多いとされています。

また、ヘパリンやワーファリンなど血液を固まりにくくする抗凝固薬を飲んでいると、血が固まりにくくなり出血しやすいと考えられます。

血痰の原因となりうる病気

血痰の出血源にはいろいろありますが、ここでは原因として考えられる病気について説明していきます。
呼吸器以外の病気でも血痰をきたすことがあります。

肺がん

肺に発生する悪性腫瘍です。

肺がんでは、がん患者一般にみられる全身倦怠感などの症状に加え、気道への刺激による、気道粘膜の出血による血痰、気道の閉塞による喘鳴無気肺(肺の全体または一部に空気がなく、肺がつぶれた状態)などがみられます。

気管支拡張症

気管支拡張症は、感染症、免疫異常、気道閉塞、先天性疾患などの様々な原因により気管支が広がってしまった病気です。
異物や痰を外に出す働きが弱まってしまったことで痰がたまりやすく、細菌感染しやすい状況となります。感染が起こりやすく、気管支炎肺炎などになりやすくなります。

また、拡張した気管支には血管が増えるため、血痰が出現することがあります。

気管支拡張症では、血痰のほかに呼吸困難発熱倦怠感体重減少といった症状がみられることもあります。

肺結核

血痰に加え、発熱2週間以上続く咳があれば結核も疑われます。

結核は、結核菌による感染症です。年齢に関係なく発症しますが、初感染後にすぐ発症するものと、初感染後に長期間経ってから発症するものがあります。

肺真菌症

真菌とは真核微生物の一種で、カビや酵母、キノコ類が含まれます。
肺真菌症とは、真菌を吸い込んでしまうことによって起こる病気のことです。

肺アスペルギルス症、肺クリプトコックス症、肺ムーコル症、ニューモシスチス肺炎、肺カンジダ症などがあります。

肺血栓塞栓症

血管で形成された血栓が血流にのり、肺動脈を閉塞したときに起こる病気で、肺の循環障害です。
突然の胸痛や呼吸困難感、頻呼吸のほかに血痰があらわれることもあります。

Goodpasture(グッドパスチャー)症候群

グッドパスチャー症候群は自己免疫疾患の一つで、珍しい病気です。
肺の内部での出血や、進行性の腎不全が起こります。

この病気にかかると、タバコの煙などの物質やウイルス性上気道感染(いわゆる「風邪」)によって体の特定部位に対する抗体ができるとも考えられています。
この抗体が肺胞の壁や肺の毛細血管、腎臓のろ過装置などにある特定の組織に損傷を与えます。

息切れ血痰血尿などが主な症状です。

その他、あまり激しい咳をしているとのどや気管支の粘膜の細い血管が破れて出血します。
また、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患でも稀にですが血痰が出ることがあります。

まとめ

血痰はさまざまな病気が原因となることがありますので、まずは医療機関への受診をおすすめします。
呼吸器疾患による血痰か、もしくは呼吸器以外の病気が原因となっているのか、その判別が重要です。

出血源によって治療方法は異なってきますので、医師に相談して出血源をしっかりと探し、治療を受けると良いでしょう。