「朝起きてすぐに、くしゃみが止まらない…」「花粉症の症状が、朝特にひどい」花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の症状が、朝の時間帯に特にひどくなる経験はありませんか?鼻のむずがゆさで目が覚めてしまうという方も、いるのではないでしょうか。この記事では、なぜ朝にくしゃみが止まらなくなるのか、その理由と対策について考えていきたいと思います。

目次

朝、アレルギーの症状はひどくなる

ところで、朝は本当にアレルギーの症状がひどくなる時間帯なのでしょうか。気のせいではないのでしょうか。製薬会社がインターネット上で行った調査によると、次のような結果が出ています。

花粉鼻炎の症状を最も辛く感じた時間帯

  • 起床時 22.4%
  • 午後の屋外での時間 11.4%
  • 午前中の屋外での時間 7.0%

エスエス製薬|花粉症のモーニングアタックより

一日のうちで最も花粉症状が辛いと感じる時間帯は?

  • 起床時 26.3%
  • 日中の屋外での時間 23.9%
  • 朝出かける前(自宅)/朝の通勤・通学時 18.8%

ロート製薬|花粉によるアレルギー鼻炎薬より

1日の中で、最も花粉症が辛い時は以下のどれですか?(複数回答)

  • 会社で就業中(午前中) 53.6%
  • 会社で就業時(午後) 46.6%
  • 通勤時(電車、バス、徒歩などで移動中) 46.4%
  • 起床時(朝起きてすぐ) 46.1%
  • 帰宅通勤時(電車、バス、徒歩などで移動中) 33.8%

コンタック総合研究所|起床時に、花粉症上が辛くなる「朝の発作」より

エスエス製薬の行ったアンケートでは、花粉・鼻炎の症状が最もつらいのは「起床時」であると答えた人が22.4%となり、他の時間帯に比べて朝は症状の辛さを感じる人が多いことが分かりました。同様に朝にアレルギーや花粉症の症状がつらいと感じる人は、ロート製薬のアンケートでは26.8%で第一位、グラクソ・スミスクライン株式会社のコンタック総合研究所のアンケート(複数回答可)では46.1%で、半数近くの人が症状の辛さを訴えています。

これらのアンケートはあくまでも製薬会社が独自に行ったものですが、少なくとも、「朝の時間帯のアレルギー症状」の対策について一定の需要があることが伺えます。

また、アレルギー性疾患の概日リズムに関する研究からも、アレルギー疾患の症状には概日リズムがあり、朝の時間帯にくしゃみなどの症状が起こりやすいことが分かっています(山梨医科学誌(PDF)より)。朝にアレルギーの症状がひどくなることは一般的に、モーニングアタックと呼ばれています。

アレルギー反応にも「概日リズム」がある!?

概日リズムとは?

概日リズムとは約24時間周期で変動する生理現象のことです。例えば、睡眠ホルモンであるメラトニンは、太陽の光を浴びてから15時間前後経過すると分泌が始まり眠気を感じるようになります。そして、一般的に夜中2時頃にピークを迎え、朝に向かって分泌量が低下します。朝起きて朝日を浴びるとまたリセットされ、このリズムを毎日繰り返すのです。

概日リズムを作る「時計遺伝子」

こうした概日リズムは、私たちが生まれてから学習や経験によって身につくものではなく、「時計遺伝子」と呼ばれる遺伝子によりコントロールされています。アレルギー反応の概日リズムのメカニズムには、まだ明らかになっていない部分が多くありますが、アレルギー性鼻炎の場合には、午前6時にピークを迎える概日リズムが存在すると考えられています(早稲田大学高等研究所紀要(PDF)より)。

マウスを使ってI型アレルギー(アレルギー性鼻炎など一般にアレルギーと呼ばれているもの)の反応を調べた実験では、正常なマウスではアレルギー反応の強弱に日内変動(時間帯によって様子が異なり、これが24時間周期で決まって起こる)が確認されたのに対し、時計遺伝子を欠損させたマウスでは日内変動は見られませんでした。この実験から、アレルギー反応の概日リズムにも、時計遺伝子が関与している可能性が示されました(山梨医科学誌(PDF)より)。

快適な朝を過ごすために…

ベッド-写真

モーニングアタックによる、朝の辛い症状を回避する方法はあるのでしょうか。

アレルゲンとの接触を避ける

アレルギーの基本的な対策となりますが、モーニングアタックが起こる理由のひとつに、朝に活動を始めることで床に落ちたアレルゲン(花粉やハウスダストなどアレルギーの原因となる物質)が舞い上げられてしまうことも指摘されています。

定期的に室内を掃除し、寝具もこまめに洗濯し、清潔な環境を保つよう心掛けましょう。また、就寝の際にマスクを着用したり、空気清浄機加湿器を使用したりする方もいるようです。

薬は就寝前に飲む

薬は、就寝する頃に効果が出るように、就寝の30分前から3時間前に服用する方が多いようです(コンタック総合研究所より)。なお、アレルギー性鼻炎に使用される抗ヒスタミン薬のひとつメキタジンを用いた実験では、朝に服用するよりも、夜に服用する方が、鼻水や鼻づまり、鼻のかゆみなどのアレルギーの症状の改善に効果的であったとの報告もあります。

まとめ

アレルギーの症状は、ひどくなることで睡眠が妨害されたり、仕事や勉強の集中量を削いだりと、私たちの生活に大きな影響を与えます。アレルギー性疾患は現在では根治療法の存在しない疾患なので、患者さんはその特性をよく知り、賢く対応することが求められます。時間帯によりアレルギー反応の違いがあることもそのひとつです。本記事が、快適な生活の一助となればと思います。