風邪を引いたわけでもないのに、くしゃみや鼻水が出て鼻がつまる。春先の花粉飛散のシーズンだけでなく一年中鼻の症状がある…これらに心当たりがある方は、アレルギー性鼻炎かもしれません。鼻を襲うトラブルは多様化しており、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に悩む人の数は増加傾向にあります。今回は日本人に多いアレルギー性鼻炎のメカニズムと治療法についてご紹介します。
鼻炎の種類は?
鼻炎とは、鼻の粘膜が炎症を起こしていることをいいます。
感染性の鼻炎
代表的なものは、急性鼻炎と慢性鼻炎です。急性鼻炎は、鼻かぜとも呼ばれています。風邪のウィルスに感染したり、疲れがたまって鼻の粘膜や身体の抵抗力が弱くなったりしたところに細菌などが感染して炎症が起きます。急性鼻炎が繰り返すことによって、慢性化することがあります。
アレルギー性の鼻炎
代表的なものは、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎です。一年中症状が続いたり、特定の季節にだけ症状が出たりしますが、共通してアレルゲンと呼ばれるアレルギーの原因物質が病気を引き起こします。
その他の鼻炎
カレーやラーメンなど、刺激が強く熱い食べ物を食べたときや、雪の日に冷たい空気を吸った時などにも鼻水が出ることがあります。また、降圧剤、抗うつ剤や避妊用ピルなどの薬剤が原因となって鼻炎が起こることがあります。
アレルギー性鼻炎の原因は?
抗原が増えたこと
アレルギー性鼻炎が増えた原因の一つに抗原の増加が考えられています。抗原とは、花粉やダニなどアレルギーの原因となる物質のことです。現代の住宅は気密性が高く、ダニやほこりなどのハウスダストが室内にまん延するようになりました。また、スギの植林が盛んになりスギ林が多くなるにつれてスギ花粉症を患う人も増加しています。
環境や生活の変化
大気汚染により気道が刺激され呼吸器系のアレルギー疾患にかかる可能性が高くなり、ストレスなどが身体の免疫機能に悪影響を及ぼすことも多くなりました。また、食生活の欧米化がアレルギー疾患に悪い影響を与えると考えられています。
症状は?
くしゃみ、鼻水や鼻づまりなどの症状があります。鼻の中に侵入してきた物質を自分以外のもの(異物)と判断して、それを無害化しようとする身体の免疫反応です。
どんな人に多い?
両親や兄弟にアレルギーがあると、アレルギー性鼻炎が起こりやすいと考えられています。アレルギーの症状がでる時期や原因となる物質は個人差があります。また、アレルギーは遺伝によって全て決まるのではなく様々な生活環境も影響しています。
住んでいる場所は影響する?
交通量の多い道路沿いや工業地帯などの大気汚染がひどい地域では、住宅地よりもアレルギー性鼻炎が多いといわれています。また花粉症では、原因となる植物や木が生えている場所や花粉が飛散する風向きなどが影響します。
耳鼻科ではどんな治療をするの?
1.診断と検査
まずは、医師が鼻の中の状態を観察します。アレルギー性鼻炎の疑いがあれば、鼻水の中の細胞を調べて、血液中のアレルゲンに反応する物質の数値を測り、アレルギーの原因物質を探す検査を行います。全ての検査結果を総合してアレルギー性鼻炎の診断を行います。
2.吸入治療(ネブライザー)
鼻や喉の炎症を抑える薬剤を超音波によって細かい霧状にして噴射する機械のことを、ネブライザーといいます。口や鼻からの呼吸と共に薬剤が鼻の奥、気管や肺に届き炎症を和らげて治療を行います。
3.薬の服用
症状や重症度によって抗ヒスタミン剤や鼻噴霧用ステロイド薬などが処方されます。さまざまな種類の薬が開発されているので、医師と相談して自分に合った薬を見つけてもらいましょう。
4.舌下減感作療法
舌下減感作療法は、花粉症、ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎の治療に期待されています。アレルギーの原因物質に慣れて、身体の反応を抑えることを目的とした治療法です。花粉エキスやダニ抗原が含まれた錠剤を舌の下に置いて数分間そのままにして、粘膜から浸透させる手法です。徐々に濃度と量を上げていきながら数年間治療を続けていきます。
5.手術療法
アレルギー反応が起きる鼻の粘膜をレーザーで照射したり、薬や器具を使って焼いたりする治療法です。鼻づまりが治らないときは、左右の鼻のしきりをまっすぐにしたり、鼻の粘膜を切除する手術も行われます。
6.ボトックス療法
ボトックスが鼻汁の分泌神経(副交感神経)に作用することで、鼻水などの分泌を止め、花粉症の症状を抑えます。
薬液を鼻粘膜に点鼻もしくは、注射する治療です。
自分でもできる治療法はある?
自分では鼻炎の治療はできませんが、症状の緩和を目指して、原因物質(抗原)を避ける工夫をしましょう。
1.ハウスダストを避ける
寝具を日光に干して、掃除機でほこりやダニを吸い取りましょう。室内を頻繁に掃除して換気を十分に行いましょう。また、ダニが発生しやすいカーペットの使用を避けるのも効果的です。
2.花粉を避ける
花粉情報に注意をして、花粉が飛んでいるときはなるべく外出を控えましょう。家に帰ったら、室外で花粉を払いおとして、部屋の中に花粉を持ちこまないようにしましょう。また、花粉が飛散する前に予防的に薬を使い始める方法もあります。
3.身体の免疫機能を高めましょう
アレルギーは過剰な免疫反応により引き起こされるので、日ごろから体調を整えて免疫機能を高めるようにしましょう。バランスの取れた食事、十分な睡眠やストレスを避けるなど規則正しい生活を心がけることが大切です。また、過敏な免疫反応を低下させるために、乾布摩擦や水泳などで皮膚を刺激する療法もあります。
まとめ
アレルギー性鼻炎は体質や環境などが影響して発症しますが、現段階では完治させることが難しい病気といえます。検査や治療法などをよく理解して、医師と十分にコミュニケーションを図り自分に合った治療を見つけましょう。また、辛い症状を和らげるために、原因物質を避けるなど日常生活の中で、自分で出来る工夫をすることも大切です。