猩紅熱(しょうこうねつ)という病気は、あまり耳慣れないかもしれません。では、溶連菌感染症はいかがでしょうか。溶連菌感染症は耳にしたことがある、あるいはお子さんが罹ったことがある方も多いのではないかと思います。

猩紅熱は、溶連菌感染症によって起こる病気です。ここでは猩紅熱の症状や治療について述べていきます。

目次

猩紅熱の原因について

猩紅熱は溶連菌の感染によって起こります。溶連菌は、正式には溶血性連鎖球菌といい、A群~H群, K群~W群の21型があります。その中で人に感染して発熱・咽頭炎を起こすものの多くはA群溶血性連鎖球菌で、これが猩紅熱の原因にもなります。この菌が生み出す毒素によって、特徴的な症状が出現するのです。

猩紅熱の原因となる A群溶血性連鎖球菌は、喉や鼻に存在します。やくしゃみなどで周囲に菌が飛び散り、そこから感染が広がります(飛沫感染)。

溶連菌の感染によって、咽頭炎扁桃炎肺炎膿痂疹(のうかしん:いわゆる「とびひ」)などの皮膚の感染症を起こします。また、無治療の場合には腎炎などが生じることがあります。そのうちの一つに猩紅熱が含まれます。

猩紅熱の症状は?

溶連菌感染症の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は2~5です。突然の発熱、のどの痛みなどで発症します。吐くこともしばしばあります。また、舌が白い苔で覆われたような状態になり、その数日後からは赤くイチゴのようにぶつぶつが目立つようになることもあります(苺舌)。

加えて、猩紅熱では皮膚にも特徴的な症状がみられます。
発熱から12~24時間経過すると、体幹などにザラザラした(サンドペーパー様)、日焼けしたような皮疹が生じます。この皮疹は、わきや足の付け根など皮膚のしわの部分に多く見られます。こうした皮疹は顔では見られず、顔では口の周囲が蒼白に見えるのが特徴です(口囲蒼白)。

皮疹がおさまった後は、皮疹部の皮膚が剥離し始め、手足の指の先の皮膚も剥離します。このような症状が3~7日程度持続します。

猩紅熱では、無治療の場合は合併症としてリウマチ熱が生じたり、腎臓に障害が起こったりすることもあるので、注意が必要です。

猩紅熱の治療

育児・親子・赤ちゃん

一般的に、のどを綿棒でこすり、 A群溶血性連鎖球菌の感染の有無を見る迅速検査で診断します。

猩紅熱は細菌感染が原因なので、抗菌薬(抗生物質)が有効です。抗菌薬はいくつかの種類が用いられることがあります。

A群溶血性連鎖球菌は比較的弱い菌で、抗菌薬を飲み始めて数日後経てば症状は快方に向かいます。しかし、合併症を予防するために決められた期間(少なくとも10日間)はきちんと薬を飲むようにしましょう。

きちんと治療を受けた場合には合併症を起こす確率はかなり低くなり、ほとんど起こさなくなります。

猩紅熱は、以前は合併症の発生率も高く重篤な病気の一つでした。しかし現在は抗菌薬による治療が広がったため、病気の重症度も発生率も非常に低くなっています。

まとめ

猩紅熱は聞き慣れない病気かもしれませんが、溶連菌感染症はよく耳にすると思います。溶連菌に感染したからといって猩紅熱を発症するかどうかは分かりませんが、何より大切なのはきちんと治療を受けることです。舌や皮膚の所見などから猩紅熱かもと思った場合には医療機関を受診し、診察・診断を受けましょう。しっかりと治療を受ければ、ほとんどの場合問題なく治る病気です。

また、予防としては、できる限り患者との接触を避けることと手洗い・うがいを行うことなどが挙げられます。一般的な風邪と同様、しっかり予防策を講じてくださいね。