リウマチ熱という病気を耳にしたことはありますか?あまり耳慣れない病気だと思います。しかし、リウマチ熱は日常でよくかかる病気の合併症として起こりうるものです。

心臓にも影響がでることのある病気で、十分注意する必要があります。
ここでは、リウマチ熱の原因や症状、治療法などについて説明します。

目次

リウマチ熱って?

リウマチ熱は溶連菌の感染に続いて起こる病気です。

溶連菌は正式には溶血性連鎖球菌といいます。
溶連菌にはA群~H群、K群~W群の21型がありますが、そのうち人に感染するものの多くは咽頭炎・発熱などを起こすA群溶血性連鎖球菌です。

リウマチ熱のきっかけになり得るのはA群溶連菌です。しかし溶連菌そのものが悪さをするわけではなく、感染によって引き起こされる自己免疫疾患に似た炎症反応が原因となります。その炎症反応が原因となり、さまざまな症状が出現します。

A群溶連菌は喉や鼻に存在し、やくしゃみなどで周囲に感染が広がります(飛沫感染)。

リウマチ熱の症状は?

A群溶連菌感染症(A群溶連菌咽頭炎)では、突然の発熱、喉の痛み、嘔吐などがみられますが、リウマチ熱ではそれらがおさまった2~3週間後に症状が出現し始めます。

リウマチ熱では、溶連菌感染症と同様に発熱がみられます。また、炎症の出現する部位(関節、心臓、皮膚、神経系など)によって症状が異なります。
下記の1つあるいは複数の部位に、症状が出現します。

関節

初期症状が最も出現しやすい部位が関節です。1つあるいは複数の関節の痛みが出現します。
足・膝・肘・手首などの関節で多くみられますが、他の部位の関節に症状が出現することもあります。

関節の痛みは1~2日程度で治まってきますが、その後別の関節に痛みが出現し、痛みが移動しているように感じるため「移動性関節炎」といわれます。

関節痛の強さはまちまちですが、期間は2~3週間程度持続します。ただし、関節に障害が残ることはありません。

心臓

関節の次に影響を受けやすいのが心臓です。

心臓で炎症が起きた場合、高熱胸痛を訴えることがあります。加えて、心雑音(聴診器で心音を聞いた際に雑音が聞こえる)がみられることも多いです。心臓に炎症が起こっても何の症状も出現せず、何年も経過してから何らかの症状が出現し、リウマチ熱によるものと判明することもあります。

心臓の炎症は通常、半年以内に徐々に軽くなり、消失していくことが多いです。炎症が弱くなれば症状も落ち着いていきますが、炎症によって心臓の弁が障害を受けた場合には、炎症が消失した後も症状が残ってしまい、心不全などを起こす危険性があります。心不全を起こした場合、倦怠感や息切れ、吐き気・嘔吐というような症状が出現することがあります。

皮膚

皮膚症状のみで見られることはなく、関節や心臓、神経の症状が既に出ているお子さんにみられます。

他の症状が軽快してから、平らで縁のみ少し盛り上がったような皮疹輪状紅斑/りんじょうこうはん)が出現します。この皮疹は痛みはなく、すぐに消えていきます。

関節や心臓に炎症のある場合には、硬くて小さいこぶのような皮疹(皮下結節)が症状のある関節の周囲などにできることがあります。この皮疹も痛みやかゆみはありません。

神経系

神経系の症状は他の症状とともに出現することもありますが、他の症状が消失してから遅れて出現することもあります。

神経系へ炎症の影響が及ぶと、手足を勝手に動かす動作(不随意運動/ふずいいうんどう。がみられます。これは「舞踏病」とも呼ばれます。

速く不規則なけいれんのような動作が手に始まり、足や顔でも認めることがあります。すると、服が着にくくなったり、食事がしづらくなったりします。また、動きが大きい時にはどこかにぶつけて怪我をしないか注意する必要があります。

このような運動は、半年程度持続するといわれます。寝ている時には症状は軽快することが多いです。

他にも筋力低下を認めたり、突然泣き出したり笑い出したりする行為がみられたりすることもあります。

リウマチ熱の診断治療

聴診器と赤ちゃん-写真

リウマチ熱は、上記の症状血液検査(血液中の炎症反応を示唆する数値)、迅速検査・培養検査(喉にA群溶連菌がいるかの確認)、心電図検査などから診断します。

まずは抗生剤によって感染している溶連菌を死滅させる治療が行われます。それにより炎症の波及を最小限にとどめることを目標とします。

また、関節や心臓に炎症がある場合には炎症を抑えるためにアスピリンステロイドなどの薬が必要になることがあります。加えて、関節・心臓への負担軽減のために安静・行動制限が必要になることもあります。

一度リウマチ熱に罹った場合には、それ以降、溶連菌の感染には細心の注意が必要です。特に心臓への炎症の再発は、心不全などを起こす危険性もあり予防しなければなりません。そのためには、リウマチ熱の症状が軽快した後も抗生剤治療(内服あるいは注射)を続ける必要があります。

期間については様々な意見があり、定まっていません。心臓に炎症がなかった場合は5年または21歳まで、心臓に炎症があった場合には10年、神経系の炎症を認めた場合には生涯を通じて必要など、いくつかの見解があります。

また、心臓の弁に損傷がある場合には感染性心内膜炎(損傷した弁で細菌が繁殖し炎症を起こした状態)になりやすいため、予防的に抗生剤を内服しなければなりません。

まとめ

リウマチ熱の発生率は低下しており、現在では非常に稀な病気です。しかし、日常にありふれている溶連菌の感染症がきっかけになる病気なので、知っておいて損はありません。

また、長期間症状が持続したり、長期間に渡る治療が必要になったり、心臓に障害を残す可能性のある病気です。

リウマチ熱の一番の予防法は、溶連菌感染症と診断を受けて適切な抗菌薬内服治療をすることです。医師の指示に従い、しっかり抗菌薬での治療を行ってください。