ストレスで続く発熱:思春期に多い機能性高体温症とは

  • 2017年02月6日 更新 1426 Views
【執筆】
「なごみクリニック」院長。小児科専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒業後、様々な病院・クリニックで小児科医としての経験を積む。神奈川県横浜市のなごみクリニックでは、通常の診療に加え、小児の在宅診療も行う。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として研鑽を積んでいる。

おでこを抑える女性

発熱が続いた時には、医療機関で血液検査・尿検査、必要に応じてレントゲン検査などが行われます。そのほとんどは原因が推定・確定でき治療方針が定まりますが、中には原因不明の発熱が続くケースもあります。ここでは、強いストレスによる体温上昇である機能性高体温症について記載します。

発熱が続く原因としては…

皆さまは発熱をしたら、数日感は自宅で様子をみて、それでも改善しない場合には地域の診療所(小児科・内科)を受診されることと思います。

発熱が続く原因としては、そのほとんどが何かしらのウイルス・細菌による感染症であると考えられております。そのほかには、自己免疫疾患(リウマチなどの自己免疫疾患)、腫瘍が主な原因です。こうした場合には、自然治癒するか、あるいは血液検査・尿検査・画像検査などで原因が推定・確定され、治療方針が定まることは多いです。その他の原因としては、自宅にある解熱鎮痛薬(非ステロイド抗炎症剤:NSAIDs)や抗菌薬を自己内服して、その内服薬に対してのアレルギーと考えられる「薬剤熱」と判断されることもあります。

 ストレスによる発熱(機能性高体温症)とは

体温を測る女の子

様々な検査を行っても、原因が判明しないため、解熱鎮痛薬を飲みながら経過を見ている場合もあります。こうした検査を行っても異常と判断されず、アセトアミノフェン系薬剤(カロナールなど)や非ステロイド抗炎症剤(ロキソニンなど)を内服しても効果がなく、他の疾患を除外した状態で、何かしらのストレス状態にあることが確認される場合に「機能性高体温症」と診断されます。

ストレス性高体温症・心因性発熱とも呼ばれる「機能性高体温症」は、精神的ストレスが強い、あるいは期間が長いために生じる体の反応であり、37℃以上の高体温となる状態と定義されております。

高い熱が出る場合、緊張度の高い仕事をする、苦手な人を接待する・会う、人前で話すなど極度に緊張する、他人と激しい口論を交わす日々がつづくなどの精神的な状況があります。その例として、資格試験や入学試験など大切な試験当日の朝に、急に38℃の高熱が出たが、試験終了後、速やかに解熱するというパターンがみられます。

 

これとは反対に37℃台の微熱が続く場合としては、仕事で残業が続く、長期にわたる家族介護で疲れている、授業・部活の両立が時間的に難しい、などの長期的で慢性的なストレスが続いて気が抜けない状況が多くみられます。この場合には、37℃台の微熱に加えて、頭痛、腹痛、倦怠感などの身体の症状を伴うことが多いです。

医療機関を受診しても疾患名がはっきりしないというのも、ストレス性高体温症の特徴です。咳や下痢などの症状がなく微熱が3週間以上続いている場合には、ストレス性高体温症が疑われることになりますが、自己判断は控えてください。慢性的な感染症、リウマチなどの自己免疫疾患、悪性腫瘍など発熱を伴う病気が隠れている可能性はあります。

機能性高体温症の年齢と症状の特徴

機能性高体温症は小児、とくに思春期によく見られます。さぼっていると思われがちですが、体内ではホルモンバランス・自律神経バランスの乱れが原因と推定されております。年齢は12~13歳が発症ピークであり、女児に多くみられます。

前項のうち、何かのストレス下で38~39度の急激な高体温を一過性に認めるパターンは、中高生の思春期の時期に多くみられます。その一方で、37度台の微熱が継続するパターンは20歳以上の成人に多くみられます。

機能性高体温のメカニズム

検温する親子

ウイルスや細菌感染によって生じた発熱は、脳が交感神経という自律神経と筋肉に指令して体温を上げます。これはウイルス・細菌を退治させるための正常反応です。この時の信号として働くのが、炎症性サイトカインよばれる物質とプロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる物質です。風邪の時に内服する漢方薬の葛根湯(かっこんとう)麻黄湯(まおうとう)は、この発熱を引き起こすサイトカインの産生を抑えます。また解熱薬は、プロスタグランジンE2の産生を抑えることで作用を発揮します。

一方、精神的なストレスがある状況では、ストレスに対応するため、前述とは異なる交感神経の働きが活発になり、体温が上がります。

体温が上がることは、風邪を引いた時と同じですが、ストレスによる高体温の場合、サイトカインとプロスタグランジンE2は反応しません。このため、医療機関で血液検査をしても白血球やCRPなどの炎症反応は上昇せず、風邪薬・抗菌薬・解熱薬など炎症を抑える薬を飲んでも、熱は下がりません。

合併する心身症

精神的なストレスは体にも多くの影響を与えます。このため、複数の身体疾患、精神疾患が同時に起こる可能性があります。小児では起立性調節障害、成人では緊張型頭痛うつ病過敏性腸症候群不眠不安障害パニック障害などがあります。

機能性高体温症の治療と生活での注意点

治療は、ストレスを減らす生活指導と心理治療がメインです。このため、治療の該当となる診療科は心療内科・精神科となります。薬物治療としては、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、向精神薬(抗うつ薬)があげられ、長期的な効果が期待されています。

十分な睡眠がとれていない人には、睡眠薬が有効です。風邪薬や解熱薬はほとんど効きませんが、緊張型頭痛を合併している場合には有効です。

また、ストレスと考えられる過労・緊張状態・対人関係などの原因を改善する心理療法が重要です。交感神経の過剰な興奮を鎮める心理療法により、自律神経のバランスと整え免疫力を回復する自律訓練法も効果的です。

日常生活では、学業・仕事・家事のペースダウンを行い精神的ストレスの低下を行います。気分転換をする、バランスのよい食事を心がける、睡眠を十分にとること、運動や趣味、入浴で心身ともにリラックスすることが重要です。

まとめ

ストレスによっても発熱が持続する機能性高体温症は、さまざまな検査で異常を認めないことにより除外診断される精神的な疾患であります。この疾患において発熱は「体・心ともにもう頑張れないSOSのサイン」と受け止め、ストレスを減らすことが解熱という効果につながります。生活全体を見直し無理をしないことが重要です。

 

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参考文献

日経メディカル 2016年 12月号 p.55

参照リンク

テルモ|ストレスによる高体温症

 

 

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