三叉神経痛は顔に電気ショックのような激しい痛みが起こることが特徴です。顔の痛み?歯の痛み?治療にはどの科に行けばよいのでしょうか。今回は三叉神経痛の治療方法について説明します。なお、三叉神経痛の症状やメカニズムに関しては「頭痛?歯痛?顔の激痛は三叉神経痛のせいかも。症状と原因とは」をご参照ください。

目次

三叉神経痛はどのように診断がつくの?

三叉神経痛は、痛みがとても特徴的なので、比較的容易に診断がつきます。その原因として、血管の圧迫で起こるものが約90%、腫瘍などなんらかの原因によるものが約10%といわれています(日本脳神経減圧術学会より)。最初に三叉神経痛がでたときは、脳のMRIで原因となる疾患がないかが検査されます。

受診する科は、かかりつけ医、脳神経外科、神経内科、ペインクリニックなどになります。

治療方法は?

症候性三叉神経痛(二次性三叉神経痛:三叉神経以外の様々な原因によって二次的に起こるもの)といって、痛みを起こす原因となるなんらかの疾患がある場合は、その疾患の治療が最優先となるので、その疾患の専門の科に紹介されます。特別原因となる疾患がない場合は、痛みの治療が行なわれます。治療法は次の4つです。

  1. 薬物療法
  2. 神経ブロック
  3. 脳外科的手術
  4. 放射線療法

薬物療法

三叉神経痛には、カルバマゼピン(商品名テグレトール)という「てんかん」に使う薬が処方されます。この薬は三叉神経痛の特効薬ともいえるものです。

たいへんよく効く薬ですが、典型的三叉神経痛(三叉神経の障害によって起こるもの)は高齢者に多い疾患のため、カルバマゼピンの使用量が多くなると眠気やふらつきなどの副作用がでて、痛みをおさえるための十分な量を使えないことがあります。

また、まれに、発疹や肝機能障害、白血球血小板の減少といった血液障害などの副作用が出てくることもあり、服用を中断しなければならなくなることもあります。

カルバマゼピンだけで効果が十分得られないときは、別のてんかんの薬や、漢方薬などを併用する場合もあります。

三叉神経痛は、自然治癒する病気ではありませんが、発作が全く起こらない期間(寛解期)があるために、一時的に薬を減らしたり、中断できたりすることもあります。しかし、しばらくするとまた発作が再発することになります。

神経ブロック療法

ペインクリニックで行っている治療法です。薬物療法で十分な効果がえられない場合、本人が神経ブロックを希望する場合、手術療法で再発した場合などに行なわれます。

神経や神経の周りに局所麻酔薬などを注射して痛みの伝達を遮断します。超音波やレントゲンやCTをガイドにして頭蓋骨から神経がでる穴を確認しながら針を進め、局所麻酔薬で効果が確認できたら、神経破壊薬や、高周波法(熱凝固法、パルス法)で神経ブロックを行います。

脳外科手術(神経血管減圧術)

三叉神経痛の根本的な治療法は、手術療法になります。薬物療法や神経ブロックで痛みがコントロールできない場合に手術療法を考慮することになります。

脳幹部から出た三叉神経が、そばにある動脈に接していることが原因となっているので、接している三叉神経と血管を離す手術をします。

全身麻酔を使って顕微鏡を使い、精密に行われます。開頭手術であるため、リスクを伴うので手術の有効性と危険性を十分に理解することが必要です。

手術には、全身麻酔時間も含めて3~5時間程度かかるのが一般的です。

痛みが完全に消えるのは70%前後、改善するのは80~90%程度、再発率は10~20%程度といわれています(日本脳神経減圧術学会より)。

手術による合併症として、まれに聴覚障害や顔面の知覚鈍麻などが起こります。聴覚障害の発生の予防として、術中聴神経機能をモニターして異常があればすぐわかるようにします。

放射線療法

三叉神経に放射線を照射する治療法があります。ガンマナイフといって、放射線をコンピュータで一箇所に集中させて三叉神経にあてることで痛みをやわらげる方法です。手術や麻酔といったリスクがないので、高齢の患者さんや、他の病気などの理由で、手術の危険性が高いと判断された患者さんに行なわれます。約60~70%くらいの患者さんの痛みは緩和されますが、顔面のしびれなどの副作用や、再発率がやや高いという問題があります。

まとめ

三叉神経痛が疑われるときは、脳神経外科や神経内科を受診します。歯や副鼻腔の炎症が原因となる場合もあるので、歯科、耳鼻咽喉科、ペインクリニックとの連携も欠かせません。三叉神経痛の治療には、薬物療法、放射線療法、神経ブロック療法、外科手術が行われます。医師と相談して症状によって適切な治療を受けるようにしましょう。