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はじめに

胃がんは特に日本人に多いがんで、罹患数は大腸がんに次いで2番目に多く、また部位別がん死亡者数では肺がん、大腸がんに次いで第3位を占めています。2015年のデータでは、胃がんによって年間46,679(男女合計)が亡くなっています(日本対がん協会より)。

早期の段階で発見されれば、良好な予後(経過)が期待できるがんですが、進行した状態で見つかることも多いのが現状です。胃がんに対する治療は手術および薬物療法(抗がん剤治療)が中心となりますが、具体的な治療法はステージ毎に異なっています。

今回は、ステージ別の胃がん治療および予後について解説します。

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胃がんのステージ分類

胃がんのステージは、がんが胃の壁のどの深さまで広がっているかT、壁深達度)、胃の周囲のリンパ節に何個転移しているかN、リンパ節転移の程度)、遠くの臓器にまで転移しているかどうか(M、遠隔臓器への転移の有無)の3つの項目の進行具合を考慮して決定します。

胃癌取扱い規約(第14版)によると、胃がんのステージは、以下のようにIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IIIC、IVの8つに分かれています(表参照)。このうちIAが最も早期の胃がん、Ⅳが最も進んだ胃がんです。

  N0 N1 N2 N3 M1
T1a(M), T1b(SM) IA IB IIA IIB IV
T2(MP) IB IIA IIB IIIA
T3(SS) IIA IIB IIIA IIIB
T4a(SE) IIB IIIA IIIB IIIC
T4b(SI) IIIB IIIB IIIC IIIC

胃癌取扱い規約(第14版)より

ステージI

ステージIは、IAIBに分類されます。

ステージIAは、がんが胃の粘膜に留まっているか、もしくは胃の粘膜下層に達しているが、リンパ節転移は無いという状況です。

ステージIBは、リンパ節転移の度合いによって以下の2つのケースに分かれます。

  1. がんが胃の粘膜に留まっているか、もしくは粘膜下層に達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は1~2個)
  2. がんが胃の固有筋層まで到達しているが、リンパ節転移が無い場合

ステージII

ステージIIは、IIAIIBに分類されます。

ステージIIAは、リンパ節転移の度合いによって以下の3つのケースに分かれます。

  1. がんが胃の粘膜に留まっているか、もしくは粘膜下層に達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は3~6個)
  2. がんが胃の固有筋層まで到達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は1~2個)
  3. がんが漿膜下層まで到達しているが、リンパ節転移は無い場合

ステージIIBは、リンパ節転移の度合いによって以下の4つのケースに分かれます。

  1. がんが胃の粘膜に留まっているか、もしくは粘膜下層に達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は7個以上)
  2. がんが胃の固有筋層まで到達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は3~6個)
  3. がんが漿膜下層まで到達しており、胃の周辺にリンパ節転移がある場合(転移数は、1~2個)
  4. がんが漿膜を超えて胃の外側に出ているが、リンパ節転移は無い場合

ステージIII

ステージIIIは、IIIAIIIBIIICに分類されます。

ステージIIIAは、リンパ節転移の度合いによって以下の3つのケースに分かれます。

  1. がんが胃の固有筋層まで到達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は7個以上)
  2. がんが漿膜下層まで到達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は3~6個)
  3. がんが漿膜を超えて胃の外側に出ており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は1~2個)

ステージIIIBは、リンパ節転移の度合いによって以下の4つのケースに分かれます。

  1. がんが漿膜下層まで到達しており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は7個以上)
  2. がんが漿膜を超えて胃の外側にでており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は3~6個)
  3. がんが漿膜を超えて他の臓器に及んでいるが、リンパ節転移が無い場合
  4. がんが漿膜を超えて他の臓器に及んでおり、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は1~2個)

ステージIIICは、リンパ節転移の度合いによって以下の3つのケースがあります。

  1. がんが漿膜を超えて胃の外側に出ており、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は7個以上)
  2. がんが漿膜を超えて他の臓器に及んでおり、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は3~6個)
  3. がんが漿膜を超えて他の臓器に及んでおり、胃の周辺のリンパ節に転移がある場合(転移数は7個以上)

ステージIV

ステージIVは、胃がんが肝臓、肺、腹膜など、遠くにある臓器にまで転移(遠隔転移)している状態です。

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胃がんのステージ別治療法

胃がんに対する治療は、内視鏡治療(ESD/EMR)、手術(外科治療)、及び薬物治療(化学療法)が中心で、これらのうちどの治療を選ぶか(組み合わせるか)は、ステージに基づいて決定されます(下図)。

T1a(M) IA
ESD/EMR(一括切除)
[分化型、2cm以下、UL(-)]
胃切除D1(上記以外)
IB
定型手術
IIA
定型手術
IIB
定型手術
T1b(SM) IA
胃切除D1
(分化型、1.5cm以下)
胃切除D1+
(上記以外)
T2(MP) IB
定型手術
IIA
定型手術
補助化療(pStage IIA)
IIB
定型手術
補助化療(pStage IIB)
IIIA
定型手術
補助化療(pStage IIIA)
T3(SS) IIA
定型手術
IIB
定型手術
補助化療(pStage IIB)
IIIA
定型手術
補助化療(pStage IIIA)
IIIB
定型手術
補助化療(pStage IIIB)
T4a(SE) IIB
定型手術
補助化療(pStage IIB)
IIIA
定型手術
補助化療(pStage IIIA)
IIIB
定型手術
補助化療(pStage IIIB)
IIIC
定型手術
補助化療(pStage IIIC)
T4b(SI) IIIB
定型手術+合併切除
補助化療(pStage IIIB)
IIIB
定型手術+合併切除
補助化療(pStage IIIB)
IIIC
定型手術+合併切除
補助化療(pStage IIIC)
IIIC
定型手術+合併切除
補助化療(pStage IIIC)
Any T/N, M1 IV
化学療法、放射線治療、緩和手術、対症療法

 胃癌取扱い規約(第14版)より

以下に、ステージ別の治療法および予後について解説します。

ステージIAに対しては、内視鏡治療(胃カメラでがんを切除する)や胃切除術(リンパ節の切除範囲が狭い縮小手術)が行われます。

ステージIBに対しては、定型手術(胃の2/3以上切除と広い範囲のリンパ節切除)が行われます。手術後の病理学的検査(顕微鏡による検査)にてステージIであることが確定すれば、追加の治療(補助療法)は行われず、通常は経過観察が行われます。

ステージIの予後は極めて良好で、10年生存率(がんと診断されて10年後にも生存している確率)は95%です

ステージIIに対しては、定型手術が行われます。また、手術後の病理検査でステージIIが確定すれば、(がんが粘膜下層までにとどまる例や、漿膜下層まで到達するがリンパ節転移がない例を除き)術後の補助化学療法(抗がん剤治療)が追加されます

ステージIIの10年生存率は63と比較的良好です。

ステージIIIに対しては、定型手術(がんが周りの臓器に達している例では、他臓器の合併切除を追加)が行われます。また、手術後の病理検査でステージIIIが確定すれば、術後の補助化学療法(抗がん剤治療)が追加されます

ステージIIIの10年生存率は39と低下してきます。

ステージIVの胃がんに対しては、がんを全て取り除くことを目標とする根治手術は難しいと考えられるため、薬物治療(抗がん剤治療)が中心となります。同時に、がんによる辛い症状を和らげる治療(緩和ケア)も行われます。

また、がんからの出血や狭窄のために食事が十分に摂れないときは、遠隔転移があっても、病変部の胃を切除したり、食物の通り道を作るバイパス手術が行われたりする場合もあります。

ステージIVの予後は不良で、10年生存率は7.5%と報告されています。

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まとめ

胃がんに対する治療は、ステージによって異なります。ステージIには内視鏡治療または胃切除術が行われ、術後は経過観察されます。ステージII~IIIでは定型手術が行われ、一部を除いて術後補助化学療法が追加されます。ステージIVでは薬物治療、緩和ケアが中心となります。

予後はステージによって大きく異なり、ステージI、II、III、IVの10年生存率はそれぞれ95%、63%、39%、7.5%と報告されています。