山登りはレジャーの一つとして知られていますが、標高の高い場所では気圧が下がって酸素濃度が低くなります。そのような低酸素の環境に体が慣れずに起こる症状を総称して高山病と言います。高山病は一般的に2000メートル以上の標高で起こるとされていますが、吐き気や気分不良などの症状は標高1200~1800メートル程度でも生じることがあります。また死の危険性があることでも知られています。今回は高山病の原因や症状などについて詳しく紹介していきます。
高山病の原因
標高が高くなればなるほど、酸素濃度は低くなります。特に急激に高度が上がった場合、身体は低酸素状態となります。低酸素状態になると脳の血流が増し、脳にむくみが起きます。このむくみが吐き気や頭痛などを引き起こします。
また低酸素状態に陥ると肺動脈圧が上昇し、肺の血流量が増えます。すると肺にむくみ(肺水腫)が起こり、呼吸困難などの症状がみられます。
高山病の症状
高山病は山酔い、高地肺水腫、高地脳浮腫の3種類に分類することができます。
山酔い
高山病の症状のうちよくみられるもので、1200メートル程度の比較的低い標高でも生じることがあります。頭痛や吐き気、嘔吐にめまい、食欲不振、気分不良、疲労感、脱力感、ふらつき、息苦しい、眠っても目がすぐに覚めるなどの二日酔いによく似た症状がみられます。
症状は標高の高い場所に行ってすぐに起こるのではなく、6時間以上たってから発症することが多くみられます。高山病にかかるかどうかは個人差があります。睡眠不足や体調不良の人、高齢者は発症しやすくなります。
高地肺水腫
肺水腫が起こった場合は動いている時に呼吸困難や息切れ、咳込みがみられます。ひどくなると、じっとしているときにも呼吸困難や息切れがみられようになります。
またチアノーゼ(体の中の酸素濃度が低くなり、唇や指先などが青紫色になる)や頻脈、微熱がみられることもあります。肺水腫の悪化するスピードは速く、症状がみられてから数時間で昏睡状態や死に至ることもあります。
高地脳浮腫
脳のむくみがひどくなると高地脳浮腫となります。脳浮腫が起こると頭痛や倦怠感、眠気がひどくなります。また混乱や昏睡などの意識障害や、ふらついてまっすぐに歩けなくなるといった症状が出てきます。発生から僅か2~3時間で昏睡、死亡するケースもあります。
高山病になったときの対処法

高山病の症状が出てきた場合はすぐに標高の低いところに移動することが一番です。それ以上標高の高いところへの移動は中止します。体を無理に動かさず暖めることも効果的です。状態が悪い場合は救護所へ行く、あるいは救助を呼ぶようにしましょう。
病気の予防や症状の改善に効果を発揮するアセタゾラミド、デキサメタゾンといった薬もあります。ただこれらの薬は医師の処方箋が必要で、薬局などで購入することはできません。
高山病の予防策
高山病は急に標高の高いところへと移動することで、酸素濃度の低い環境に身体が順応できずに起こる症状です。山へ登ったり、標高の高い地域へ旅行したりする際には余裕のあるスケジュールで行動しましょう。高度を上げたら十分な休息をとるようにし、ゆっくりと段階を経ていくようにします。
新陳代謝が悪くなることで高山病は悪化しやすくなるため、こまめに水分を摂るようにしましょう。体調が悪い時は無理をしないことも大切です。
アルコールの摂取や睡眠薬の服用は睡眠中の呼吸状態を悪くするため、標高の高いところでは避けるようにしましょう。
まとめ
高山病は症状の出始めで適切な対処をとることが大切です。知識を頭に入れておきましょう。高山病の予防薬は医師の処方が必要です。標高の高い山に登る際などは事前に高山病に詳しい医師のいる医療機関で相談するようにしてください。