心臓は、全身に酸素を含んだ血液を送り出す重要な機能を持つ臓器です。心不全は、この心臓の働きが低下することによって起こる症状のひとつです。

では心不全は、どのような症状があるのでしょうか?  また心不全の原因となる主な病気についてご紹介します。

目次

心臓の働き

心臓は、全身に酸素や栄養素を含んだ血液を送り出すポンプの役割があります。

さらに心臓は肺との交通によって血液内の酸素のやり取り(ガス交換)を行います。

正常な心臓の場合、左右の心房左右の心室、弁膜によって以下のように2つの大きな流れとして機能しています。

体循環(左心系)

体循環は、酸素を多く含んだ血液(動脈)が全身に送り出され、不要となった炭酸ガスなどの老廃物を含んだ血液(静脈)が心臓に戻ってくる一連の流れです。

左心房→左心室→大動脈→全身の臓器→大静脈→(右心房)

1回の心臓の拍出で送り出される血液量は、成人の場合で概ね70mL程度とされており、安静時心拍数(60~70回/分)の場合、

1回の心拍出量×1分間の心拍数 = 4~5L/分 の血液が心臓から送り出されています。

肺循環(右心系)

肺循環は、全身から戻ってきた静脈が肺に送り出され、肺でガス交換が行われ、再び酸素が豊富な動脈となって心臓に戻ってくる一連の流れです。

右心房→右心室→肺動脈→左右の肺→肺静脈→(左心房)

全身の血液循環-図解

心不全とは

心不全とは、正常な心臓の働きが弱くなることによって起こる症状です。心臓の働きが弱くなると血液の流れが悪くなり滞ってしまいます。

この滞った状態をうっ血といい、心不全はうっ血性心不全とも呼ばれます。

心不全の原因が右心系にあるものを右心不全、左心系にあるものを左心不全といいます。

左心不全

心不全の原因が左心系にあると、全身へ血液を送り出す働きが低下し、チアノーゼ(手足先や口唇が蒼白になること)や血圧低下、頻脈による動悸、意識障害などの症状が現れます。またに血液が滞るため、呼吸困難、などの呼吸器症状が起こり、やがては右心系にも負荷がかかり右心不全の症状も合併します。

右心不全

心不全の原因が右心系にあり、全身の静脈血が心臓に戻る流れが滞ることによって起こる心不全です。右心不全では、浮腫胸水・腹水貯留、頸静脈怒張、肝臓腫大などの症状が見られます。

心不全の原因となる主な病気

心臓の機能に問題がある場合

急性心筋梗塞狭心症

心筋梗塞狭心症は心臓を栄養する冠動脈(かんどうみゃく)が、何らかの原因で狭窄、または閉塞する病気です。心筋梗塞狭心症を起こすと、心臓の筋肉(心筋)は虚血または壊死(えし)の状態になり、正常なポンプ機能を失います。これにより心臓の全身に血液を送り出す力は低下し、心不全を起こします。 心筋虚血が急激に、また心筋の広い範囲に起きると、一気に心不全の状態に陥り、重篤な症状を呈します。

また、部分的な心筋の壊死により、慢性的に心臓のポンプ機能が障害される場合は、時間をかけて心不全の症状が進行します。

心臓弁膜症

心臓の構造-図解

心臓には僧帽弁(そうぼうべん)、三尖弁(さんせんべん)、肺動脈弁大動脈弁の4つ弁があります。心臓の弁は一方弁で、血液を送り出すときに開き、送り出し終わると閉じ、逆流しないようになっています。しかし、弁の開きが悪くなる狭窄症と、きちんと閉じなくなる閉鎖不全症があり、この状態になると、血液の逆流停滞が起こります。

4つの弁のうち、主に左心室と大動脈の間にある大動脈弁と、左心房と左心室の間にある僧帽弁が障害されやすく、心不全の原因となります。

不整脈

不整脈によって心臓の正常なポンプ機能が低下することにより、心不全となる場合があります。

心筋症

心筋症は何らかの原因で心筋が分厚くなって正常なポンプ機能が低下する肥大型心筋症と、心臓の内腔(ないくう)が拡張し、心筋が薄くなってポンプ機能が低下する拡張型心筋症に大別されます。とくに拡張型心筋症は心臓の機能を著しく低下させるため心臓移植の適応となります。

たこつぼ心筋症

原因など詳細は明らかにされていませんが、強いストレスを起因として起こると考えられる心筋症で、心臓の造影検査で映し出される左心室の状態が「たこつぼ」に似ていることから、このような診断名がついています。

高年の女性に多く発症し、2004年の新潟中越地震直後に発症が多く報告されています。

心臓の機能以外に問題がある場合

高血圧症

血圧が高い状態は、心臓が強い拍出を続けていることを示し、心臓に負担がかかっている状態です。こうした状態が長く続くと心臓のポンプ機能は低下し、徐々に心不全の状態に陥ります。

甲状腺機能亢進症バセドウ病

甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される原因不明の疾患です。
甲状腺ホルモンが心筋の感受性を過剰に亢進させることから頻脈不整脈を起こしやすく、心不全の原因となります。

貧血

貧血はおもに血液内のヘモグロビンが減少した状態です。
ヘモグロビンが少ない血液は効果的に酸素を運ぶことができず、心臓はそれを補うために心拍数を増加し、結果心臓に負担がかかり次第に心不全の状態となります。

まとめ

心臓という全身の機能を司る臓器に起こる様々な病気が心不全の原因となります。心不全は、呼吸困難や頻脈による動悸などの症状だけでなく、命の危険にも繋がります。

また長期にわたる治療や、心臓の負荷を避けるために、食事や運動に制限のある生活を送らなければならなくこともある状態です。

症状が軽いうちは軽視しがちですが、もととなる病気の治療や経過観察が必要ですので、必ず医療機関を受診しましょう。