尿道から膿が出ていたり、いつのまにか下着に膿がついていたりして驚いていませんか。この症状が出たときに考えられるのは尿道炎です。尿道炎は排尿痛、尿道痛と尿道分泌物を主症状とする症候群です。今回は尿道炎について、その原因や症状、治療法から予防法まで幅広く紹介していきます。

目次

尿道炎の原因は?

尿道炎は細菌や真菌、ウイルスなど様々な病原菌の感染によって起こる可能性があります。性感染症によるものと、それ以外のものとにわけられ、経過や治療が異なります。医師に症状の経緯や性交渉歴をしっかり話すことから原因特定につながります。

性感染症による尿道炎の代表的な原因菌として、淋菌クラミジア菌が知られています。

このほか、女性は男性と比べて肛門から尿道までの距離が短いため、腸の常在菌である大腸菌などを原因として発症することもあります。

尿道炎では、原因微生物により治療法が異なるため、できる限り微生物の特定を試みることは重要となります。

どんな症状が出るの?

症状は男女で共通しています。排尿時の痛み尿道の違和感、頻尿尿意切迫感(我慢できないような強い尿意を急に感じる)などがみられます。

排尿痛が比較的軽く、尿道から透明の分泌物が少量排出される場合はクラミジア感染症が考えられます。一方、排尿痛が強く、黄緑がかった濃い膿が多量に排出される場合は淋菌感染症の可能性があります。

細菌に感染してから発症するまでに時間差があり、これを潜伏期と呼びます。淋菌では性交渉から3~7日、クラミジア菌では1~2週間後に症状が現れます。

尿道炎を放置してしまうと、尿道を通って膀胱腎臓、前立腺や精巣まで感染が広がることがあります。また、男性の場合、尿道は精子の通り道でもあるため、感染により癒着が起きて尿道が狭くなって精巣まで感染が及ぶと不妊の原因になります。

同様に女性でもから子宮卵管、さらにはお腹の中まで感染が広がることもあります。問題なのは女性の子宮感染の場合は無症状のことが多く、知らずに移してしまっていることがあります。また、妊娠後の検査で菌が見つかることも少なくありません。また、卵子の通り道が狭窄(狭まること)あるいは閉塞(ふさがること)すると子宮外妊娠や不妊、流早産の原因になることがあります。

  淋菌性 クラミジア性
潜伏期間 37 1-3
発症 急激 比較的緩徐
排尿痛 強い 軽い
分泌物の性状 膿性 漿液性ないし粘液性

(性感染症診断・治療ガイドライン2016年より引用)

治療法は?

抗菌薬による治療が効きます。ただし、原因となる菌の種類によって抗菌薬の種類は異なるため、原因菌を特定する検査が必要になります。

クラミジア菌には抗菌薬の内服が、淋菌には抗菌薬の注射が有効です。抗菌薬によって治療日数は異なりますが、指定された分は内服してください。

最近、抗生剤が効かない耐性菌も海外だけでなく日本でも問題になってきています。症状が改善されない場合は、薬剤を変更して治療する必要があります。

尿道炎を予防するために

尿道炎の原因となる性感染症を予防する最も有力な方法は、性交渉の初めから最後までコンドームを着用することです。性感染症は単に性器同士の接触だけでなく、喉の粘膜に細菌が住み着いていればオーラルセックスによっても感染することがあります。

淋菌のように症状が強いものに比べて、クラミジア菌では自覚症状がないこともあります。特にその傾向は女性に多いことが知られています。気付かないうちに感染を広げないよう、パートナーを決めて不特定多数との性交渉は避けてください。

さらに、性感染症では「ピンポン感染」に注意します。ピンポン玉のように2人の間を行ったり来たりする様子を表した言葉で、パートナー間で移したり移されたりを繰り返すことを指します。症状があって検査をする際は、パートナーや関係のある方も検査を受ける必要があります。

薬が効いて菌が死滅するまでには時間がかかります。2週間後に再検査をして治ったことをしっかりと確認しましょう。細菌の中には抗菌薬の種類によっては効果がない耐性菌が存在することがあります。その場合は抗菌薬の種類を変えて再度治療を行う必要があります。

まとめ

尿道炎は排尿痛が軽かったり、出る膿も少量だったりするからといって放置してはいけません。適切に治療が行われなければ男女ともに不妊の原因になりうる病気です。自覚症状に乏しい場合もあり、気付かないうちに大切なパートナーに移している可能性もあります。意識して予防に努めることが重要です。