トイレで尿をした後、何気なく便器を覗いたら「あれ?なんだか濁ってる?」という経験のある方、いらっしゃいませんか?尿が濁るのにはいくつか原因がありますが、中には重大な病気が隠れていることもあります。尿が濁る原因と可能性のある病気について説明します。
尿の濁りとは?
まず、正常な尿は透明です。水分を多くとったときは色が薄かったり、朝一番は褐色のような濃い色をしていたりするなど、色は一定ではありませんが、正常な尿は濁っていることはありません。
ただ、尿は排尿後放置しておくと濁ることもあり、その場合は大丈夫です。健康診断などで検尿を提出するまでに少し時間が空いてしまい、気がついたら「なんだか濁っている?」と思った方もいるでしょう。これは、温度やpHの変化によって、尿に含まれる塩類が結晶化したものであり、誰の尿にも見られる現象なので問題ありません。
一方、排尿直後に濁っている尿は問題があります。尿の中に本来は入っていないはずの何かが混じっている状態なので、何らかの病気の可能性があり、注意が必要です。
尿が濁る原因

尿が濁って見えるのにはいくつかの原因が考えられます。
1.血尿(けつにょう)
尿の中に血液が混じっている状態です。血尿は程度によって、肉眼では見えず顕微鏡で確認される尿潜血と、肉眼で分かる血尿に大まかに分類されます。肉眼で分かる血尿の場合は尿が濁って見えることがあり、尿路に何かしらの異常があることが考えられます。
2.膿尿(のうにょう)
膿尿の「膿」は「うみ」のことです。尿の中に膿(白血球)が混じっている状態を膿尿といい、黄白色の尿が出ます。膿尿の場合は腎臓や尿路系の感染が疑われます。
3.乳び尿
乳び尿とは、尿の中にリンパ液が混じった状態です。尿が牛乳のように乳白色に濁ります。これは、腎臓周囲のリンパ管が何らかの原因でうっ滞し(血流が止まってしまうこと)流れが悪くなったリンパ液が、主に腎盂で尿に混入することによって起こります。
外傷や周囲のリンパ節摘出の手術が原因のこともありますが、腫瘍やフィラリア症という病気などが疑われます。
4.おりもの(女性の場合)
女性の場合は、尿におりものが混じって濁ったように見えることがあります。この場合は病気である可能性は低いですが、性器のかゆみや痛みを伴ったり、おりものの量が異常に多かったりする場合は、産婦人科を受診することをお勧めします。
5.シュウ酸の過剰摂取
食品に含まれる「シュウ酸」という物質を多く摂り過ぎると、尿の中にシュウ酸カルシウムの結晶ができ、尿が濁って見えることがあります。
シュウ酸を多く含む食品は、ほうれん草やチョコレート、たけのこ、紅茶などです。これらをたくさん食べた後に、一時的に尿が濁る場合は病気である可能性は低いです。しかし、シュウ酸カルシウムの結晶は尿路結石の原因であるため、シュウ酸を多く含む食品を日常的に摂り過ぎると尿路結石になる恐れがあるので注意が必要です。
尿が濁る病気

尿が濁る原因となる病気にはどんなものがあるのでしょうか。症状として血尿・膿尿・乳び尿が現れる代表的な病気をご紹介します。
血尿
1.尿路結石
尿路結石とは、尿路の中に「結石」と呼ばれる石のような塊ができる病気です。
腎臓で作られた尿は、腎臓内の腎盂を通って尿管を流れ、膀胱に溜まり、尿道から排泄されます。この腎臓から尿道までの尿の通り道を尿路といいます。尿路に結石があると血尿の原因になります。
また、結石やうっ滞した尿に細菌が繁殖することによる膿尿を伴うこともあります。尿管結石の特徴としては尿の濁りだけでなく、腎臓からの尿の流れが妨げられることによる、背中の激しい痛みがあります。
2.尿路結核
結核菌が尿路に感染した状態を「尿路結核」と呼びます。初期症状としては頻尿や排尿時の痛みが起こることが多く、症状が進むと全身のだるさや食欲不振、発熱などが起こります。また、血尿や膿尿が起こり、尿が濁ることがあります。
3.尿路腫瘍
腎盂・尿管・膀胱腫瘍
痛みなど排尿の症状がなく肉眼で分かる血尿が初期症状のことが多い病気です。
腫瘍からの出血であり、多量の出血になることもあります。時折、頻尿や排尿困難などの排尿症状を伴うこともあります。超音波や尿道から直に尿路を観察する内視鏡で診断されます。
4.尿路損傷
交通事故やスポーツ時の打撲・衝撃などで尿路に傷を負うことです。多くの場合で、血尿が見られます。
膿尿

1.尿路感染
腎盂腎炎
腎盂腎炎とは、腎臓に細菌が感染する病気です。高熱や腰・背中の痛みがみられます。特に、背中から腎臓のある付近を叩くと痛みがみられるのが特徴的です。尿の中に白血球が多数みられ、膿尿となって尿が濁って見えます。
膀胱炎
膀胱炎とは、膀胱に細菌が感染する病気です。特に女性に起こりやすいことで知られています。頻尿や強い排尿時の痛み、残尿感がみられます。血尿や膿尿によって尿が濁ることもあります。
尿道炎
尿道炎とは、尿道に細菌が感染する病気です。淋菌やクラミジアなどが原因の性病が多いです。排尿時の痛みや尿道の不快感がみられ、膿尿により尿が濁って見えます。
2.前立腺炎
男性の前立腺に細菌が感染する病気です。発熱や排尿・排便時の痛み、下腹の圧迫感、頻尿などがみられます。膿尿により尿が濁って見えます。
3.性感染症
淋菌やクラミジアによる感染症です。淋菌の場合は、特に男性の症状が強く出ることで知られており、激しい排尿時の痛みや血尿、膿尿がみられます。クラミジアの場合は、症状が比較的軽いことが多いですが、膿尿がみられることがあります。
乳び尿

1.フィラリア症
フィラリアという生物に寄生される病気です。日本では主に蚊に刺されることでうつる「バンクロフト糸状虫」という寄生虫によって起こります。フィラリアはリンパ管に寄生するため、リンパ管が閉塞します。これによって腎臓のリンパ液が逆流して尿に混入した場合、乳び尿がみられることがあります。
2.腫瘍
尿路に腫瘍が発生すると、周辺のリンパ管を巻き込んで、閉塞させることがあります。これにより逆流したリンパ液が尿に混入することがあり、乳び尿が起こります。
まとめ
尿が濁るのには、必ず原因があるはずです。正常な尿は透明であり、それ以外の場合は病気が隠れている可能性があります。ですから、尿が濁っていて心配なら、なるべく早く泌尿器科を受診しましょう。
排泄後に便器を覗き込むのは気分の良いものではないかもしれませんが、自分の健康のバロメーターだと思って、尿の観察を日課にすることをお勧めします。