「オウム病」という病気をご存知でしょうか。人と動物(主に鳥)の両方に感染する病気で、比較的稀な疾患ではありますが、重症化すると死に至ることもあります。鳥と触れ合う機会の多い方や妊婦さんは知っておいた方が良いかもしれません。今回は「オウム病」についてご説明します。
オウム病とは?
オウム病は、クラミジアという細菌とウイルスの中間の性質を持つ微生物が原因となって起こる病気です。元々は動物の病気ですが、動物から人に感染することがあります。
オウムから初めて分離されたことからオウム病と名づけられましたが、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥、アヒル、インコ、ハトなどオウム以外の家きん類、野鳥もクラミジアの感染が確認されています。
どのようにして感染する?
全ての鳥はクラミジアという細菌に感染する可能性がありますが、鳥がクラミジアを持っているかどうかは見かけでは分かりません。
病原体のクラミジアは鳥のふんの中に排出され、時間が経つにつれて乾燥して粉々になり空中に浮遊していきます。この浮遊しているふんの中に病原体がいて、吸い込むことによって人が感染することがあります。また、感染している鳥と口などの粘膜が接したり、噛まれたり、羽根や鼻汁に直接触れるなど鳥との濃厚な接触で感染したりするすることもあります。
家の中で飼うオウム、インコなどのペットの鳥や、アヒル、ニワトリ、七面鳥などの家きん類やハトなどによって人に感染すると考えられています。
どのような人が感染しやすい?

鳥を飼っている人、鳥を扱うペットショップの人や獣医などが感染しやすいと考えられています。家きん類の食肉処理工場や鳥と触れ合う展示・飼育施設でオウム病の集団感染が発生したことがあります。
しかし、オウム病クラミジアが空中に浮遊していたら必ず感染するというわけではないので、危険視しすぎることはありません。
人から人へ感染する?
人から人への感染はまれですが、オウム病に感染している人の咳がひどく未治療の場合などに、病原体を含んだ飛沫や痰などによって周囲の人へと感染する可能性もあるとされています。
症状は?
人の場合
- 発熱(38~39.5℃)
- 悪寒
- 頭痛
- 筋肉痛
- 全身倦怠感
- 痰のない乾いた咳
など
一般的に潜伏期間は10日間(4~14日)程度といわれています(愛知県衛生研究所|生物学部 オウム病より)。
軽いインフルエンザのような症状から多臓器障害を伴うまで、症状の程度は様々です。しばしば、肺炎が起こることもあり、心内膜炎、心筋炎、関節炎、角結膜炎、肝炎、無気力・食欲不振・脳炎などの神経の異常などを合併することもあります。呼吸困難、重症の肺炎となった場合は集中的な治療が必要となる場合もあり、老人・妊婦などで死亡例もありますが、現代では適切な治療を行えば、患者の致死率は1%未満であると考えられています。
鳥の場合
- さえずり、おしゃべり、水浴びが少なくなる
- 水や餌の摂取量が少なくなる
- あまり動かなくなる
- 羽根を逆立てる、口、肛門、眼孔の周りが浸出物で汚れる
など
感染したら病原体を排出することがあり、数週間から数か月間続くこともあります。感染していても症状が現れず、何らかのストレスによって発病し、病原体を排出するようになることもあります。
予防方法や治療方法は?
オウム病は早期に診断、治療することで完治する病気です。マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系やニューキノロン系抗生物質などが処方されます。
オウム病を予防するためのワクチンは開発されていないので、感染している鳥類への接触を避けることが重要です。全ての鳥がクラミジアに感染しているわけではありませんが、鳥へは過度に接触せず、ストレスを与えないように飼育する必要があります。
日常生活の注意は?
下記のようなことを意識することで、オウム病を予防することができます。
- 鳥はなるべく屋外で飼育して、過剰なふれあいは控える
- 鳥に触ったらよく手を洗う
- 鳥かごは毎日消毒し、作業の後は必ず手を洗う
- 部屋の掃除をこまめに行い、屋内で飼育するときは鳥かごを食卓の近くにおかない
- 乾燥したふんは空中に舞いやすいので、ふんに触れたり吸い込んだりしない
- 鳥の具合が悪いときは、動物病院を受診する
- 新しく小鳥を飼ったときは、少なくとも2週間は他の鳥との接触を避けて健康状態を観察する
- 弱っている野鳥を家に連れて帰らない
など
まとめ
鳥はクラミジアを持っている状態が自然であり、排出しているときも必ず人に感染するとは限りません。鳥は屋外で飼育する、ふんには触らない、鳥を触った後はよく手を洗うなど適切に対処を行いましょう。