人間は食べたら必ず余分な物を外に出しますが、それは腸がしっかりと動いているから成り立つものです。排泄で重要な役割を果たす腸の動きは、ある病気によって生まれつきうまくいかないことがあります。その病気は「ヒルシュスプルング病」といわれ、便秘などの比較的軽い症状から腸閉塞などによる死亡例も引き起こします。今回は赤ちゃんに関係するヒルシュスプルング病が一体どのような病気なのかを紹介していきます。

目次

ヒルシュスプルング病とは?

人間が食べたものは吸収されながら腸を通過して、不要となったものだけ肛門から便として排泄されます。スムーズに排泄していくためには腸の運動が欠かせません。その腸の運動は神経節細胞(しんけいせつさいぼう)と呼ばれる細胞の働きによって行われています。

ヒルシュスプルング病は生まれつき、腸の運動を司る神経節細胞が欠けているために、腸が上手く動かなくなってしまう病気です。神経節細胞が欠けてしまう範囲は一定ではないため、動かなくなる腸の範囲は様々です。

80%程度は肛門か、肛門と直接繋がっている直腸、直腸の手前部分のS字結腸といったお尻に近い箇所までの範囲に留まっています(日本小児外科学会より)。ただ大腸全部が動かなかったり、小腸まで動かなかったりするような場合もあります。

ヒルシュスプルング病は出生時の約5000人に1人の割合で発症するとされています(慶應義塾大学医療・健康情報サイトKOMPASより)。

ヒルシュスプルング病の原因は?

発症の原因となるいくつかの遺伝子があることは特定されています。ただなぜそのような遺伝子が生じるか、はっきりとした原因は分かっていません。

ヒルシュスプルング病の症状は?

泣きわめく赤子-写真

ヒルシュスプルング病は腸の運動がうまくできないために様々な症状がみられます。症状は腸の動かない部分が短いほど軽症で、長い範囲で腸が動かない場合は重症になります。代表的な症状を紹介します。

胎便排泄の遅延

胎便とは赤ちゃんが生まれてすぐに出す便のことです。通常2〜4日間はネバネバした特徴的な便が出てきます。

ヒルシュスプルング病の場合は腸の運動が起きにくいため90%の割合で胎便の排出は遅れるとされています(慶應義塾大学医療・健康情報サイトKOMPASより)。

腹部膨満

便が溜まってしまうために、お腹が膨れた状態になってしまいます。

腸閉塞

腸閉塞とは腸の中のものがうまく通過できず、詰まってしまう状態のことです。ヒルシュスプルング病の場合は腸の運動が不足して便が通過できず、腸閉塞を招く場合があります。

腹部の膨満感、嘔吐、排便・排ガスの停止が主な症状です。重篤な場合は腸の血流が阻害されてしまいます。そのような状態を放置すると命の危険が生じるとされています。

腸炎

腸の炎症が生じるのもヒルシュスプルング病の特徴とされています。

腸炎は嘔吐腹痛などがみられ、状態が悪化すると腸の上皮細胞が死んでしまうとされています。腸の神経節細胞が欠けている部分が長い場合は、腸炎などにより死亡する例もあります。

便秘

ヒルシュスプルング病でも腸の動かない部分が短い場合などは、便秘のみの症状で経過する場合もあります。約10%程度は、便秘から診断・発見されることもあります(慶應義塾大学医療・健康情報サイトKOMPASより)

ヒルシュスプルング病の治療は?

動きが悪い腸の部分を切り取ります。その後は腸の上の部分を降ろして肛門に繋がていきます。ただ動かない部分が小腸など広範囲に及ぶ場合は、移殖も検討されます。

まとめ

ヒルシュスプルング病は生まれつき腸がコントロールできなくなり、便が出せないという珍しい病気です。ひどい場合は腸閉塞などを引き起こして命に関わることもありえます。赤ちゃんが生まれてから便の出が悪かったり、お腹が膨れたりしていたら病院を受診しましょう。