これから夏になり、徐々に気温が高くなるにつれて川や湖でレジャーを楽しむ方も増えていきますね。水辺でのレジャーはとても楽しいものですが、川や湖の水には様々な病原体が潜んでいます。ジアルジア症の原因となるランブル鞭毛虫もその一つです。ここでは、これからの季節に備えてジアルジア症について説明します。

目次

ジアルジア症ってなに?

ジアルジア症とはランブル鞭毛虫と呼ばれる寄生虫によって引き起こされる下痢性の疾患です。発展途上国だけではなく、日本を含めた先進国など世界中で広くみられます

ランブル鞭毛虫ってどんな寄生虫?

ランブル鞭毛虫はヒゲの生えた洋ナシのような形をした寄生虫です。大きさは0.01mm~0.015mmで、肉眼でその存在を確認することはできません。ランブル鞭毛虫は腸の壁に付着してダメージを与えることで、下痢や腹痛を引き起こします。

ランブル鞭毛虫が厄介なのは、体外に出るとシストと呼ばれる形に変化して生存力が大幅にアップするからです。一度シストに変化すると、過酷な環境に耐えられるようになります。熱や乾燥などには弱いものの、十分な水分が存在すれば数か月はシストのままで生き続けることができるのです。

ランブル鞭毛虫にはどうやって感染するの?

ランブル鞭毛虫は比較的感染力が強い寄生虫であるとされています。わずか10体ほどのランブル鞭毛虫が体内に入っただけで感染が成立してしまいます。また、多様な感染経路があるため、予防には様々な対策が必要となります。ここでは感染経路を大きく2つに分けて説明しましょう。

大便を介した感染

最も一般的な感染経路は、大便を介したものです。シストを含む大便によって汚染された便器などに触れた者が、そのままシストを口から体内に摂取してしまうことで感染します。この様な感染経路は、便所などの衛生状態が悪い発展途上国や衛生管理が不十分になりがちな高齢者施設で多いとされています。

飲料水を介した感染

水を介した感染もしばしばみられます。旅行やキャンプの最中に衛生管理が行き届いていない水を飲んでしまうことで感染するケースがあります。また、稀に水道水内にランブル鞭毛虫が混入してしまうことで大規模な集団感染を引き起こすこともあります。

ジアルジア症になるとどんな症状がでるの?

ジアルジア症-写真

ジアルジア症の主な症状は下痢です。ランブル鞭毛虫に感染した状態が持続すると、お腹の調子の悪い状態が慢性化します。患者さんのなかには症状を指摘されて初めて、寄生虫感染の可能性に気付く患者さんもいます。

ジアルジア症の検査ってどうやってするの?

ジアルジア症の検査方法は、大便の検査です。大便内にランブル鞭毛虫のシストやシスト由来の成分(抗原)が存在するかどうかを確認します。だたし、一度の検査で感染の有無を断定することはできないため、複数回検査を実施することもあります

ジアルジア症の治療って?

ほかの寄生虫疾患と同じく、ジアルジア症でも駆虫薬の内服治療が実施されます。一般的に内服治療の成功率は高く、ほぼすべての患者さんが治療に反応するといわれています。ただし、まれにランブル鞭毛虫をすべて駆除したあとも、腹痛や下痢などの症状が残ってしまう患者さんもいます。それらの患者さんは、ランブル鞭毛虫によって受けた腸の壁のダメージが治療後もしつこく残ってしまっているのだと考えられています。そのようなケースでは、複数の治療薬を併用することもあります

まとめ

これからの季節、水辺でのレジャーを楽しむ人も非常に多いでしょう。また、海外旅行などで衛生状態が日本と比較してあまり良くない地域に出かける方も少なくないはずです。そのようなシチュエーションでは、ジアルジア症を含めた様々な寄生虫関連の疾患にかかるリスクがあります。その事実を理解しながら行動できれば、より安全かつ楽しく余暇を過ごすことができるでしょう。この機会に、寄生虫疾患について簡単に知っておけるとよいのではないでしょうか。