O-157という菌の名前を聞いたことがありますか?食中毒の原因となり、集団感染を起こして何度かニュースにもなったこともある感染力の非常に強い細菌です。

O-157は腸管出血性大腸菌と呼ばれる菌のうちの1つで、感染すると腹痛や下痢の症状が現れたり、酷い場合には血便が出たりすることもあります。この記事では、腸管出血性大腸菌およびO-157に感染すると現れる症状や、予防法について詳しくみていきます。

目次

腸管出血性大腸菌って何?

大腸菌は、健康な人の腸内にも存在する菌です。ほとんどは無害なものですが、いくつかの菌は下痢などの消化器症状をひき起こす原因となります。こういった、人にとって有害な大腸菌を病原性大腸菌と呼びます。

病原性大腸菌のうち、腸内でベロ毒素という有害物質を出し、腸炎などの原因となるものが腸管出血性大腸菌です。

最も有名なのはO-157ですが、そのほかにもO-26、O-111、O-128、O-145といった菌が当てはまり、いずれも感染すると3~5日の潜伏期間を置いて出血を伴う腸炎や、溶血性尿毒症症候群(貧血、血小板の減少、腎障害などを起こす病気)を発症します。

毎年7~9月の夏場に発生数が多くなりますが、その他の季節にも発生しなくなるわけではありません。

腸管出血性大腸菌に感染した時の症状

腸管出血性大腸菌の症状には以下のようなものがあります。

感染しても無症状の場合から、血便と合併症をひきおこして死にいたるケースまでさまざまです。子供や高齢者、女性は重症化することが比較的多く、激しい腹痛と血便がみられた場合には注意する必要があります。

腹痛・下痢の症状が現れた際には内科や胃腸内科、消化器内科、子供の場合には小児科の受診をおすすめします。

どうやって感染するの?

感染経路は大きく分けて2つで、食品が原因となる食中毒の場合と、人から人へうつる感染症の場合があります。食品からの感染がほとんどで、日本国内では食肉を生や加熱不足のまま食べてしまったことにより感染する事例が多いです。

これまで感染源になって食べものの例は井戸水、牛肉、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、サラダ、キャベツ、メロン、白菜漬け、日本そば、シーフードソース等とさまざまですので、特定の食品を避ければ大丈夫とは言い切れません。

また、人から人へうつるといっても、風邪やインフルエンザのように空気感染をするわけではなく、主にふん便による汚染に気を付けることで、感染予防が可能です。

詳しい予防の方法は以下で説明していきます。

感染を予防するために

手洗い-写真

腸管出血性大腸菌は、市販の消毒剤のほとんどが有効です。消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、逆性石けん液(ベンザルコニウム塩化物液)などを使用することで、感染を防ぐことができます。

食中毒の予防策

  • 肉・魚・野菜はできるだけ新鮮なものを購入する。
  • 肉・魚は汁が漏れないようにビニール袋に個別に包んで持ち帰り、すぐに冷蔵庫・冷凍庫へ。
  • 肉は生で食べない。75℃で1分間以上を目安に加熱
  • 生肉を取り扱う前と後は手洗いをする。
  • 生肉に触れた包丁やまな板等の器具も、使用後に消毒する。
  • できれば肉と他の食品で、調理器具を分ける。

感染症の予防策

  • 料理の前、排便の後は消毒剤を使用して手洗いをする。
  • 患者さんの便で汚れてしまった衣類は消毒液につけおきしてから洗濯する。
  • 患者さんの便の処理をする際には使い捨ての手袋を使用する。
  • トイレ、ドアノブなどは消毒剤を使用してこまめに拭く。
  • 入浴・プールでも感染するため、患者さんは入浴するとしても入る順番を最後にし、できればシャワーで済ませる。

お子さんがいらっしゃる方は、食前やトイレの後にしっかり手洗いするように指導しましょう。また、赤ちゃんのオムツを変えた後も手洗いは必須です。

まとめ

腸管出血性大腸菌は毒性が強く、重症化すると命に関わることもあります。

手洗い・消毒といった簡単なことで感染予防ができますが、下痢などの症状が出た場合には速やかに医療機関を受診しましょう。