椎間板ヘルニアという病気を聞いた事があるでしょうか。椎間板ヘルニアは首や肩の痛み、腕のしびれ、腰痛、足の痛みやしびれと密接に関係があります。もしかしたら、長年腰痛や肩こり、足の痛みなどに悩まされているあなたのその症状、詳しい検査をしたら椎間板ヘルニアかもしれません。この椎間板ヘルニアの原因と2つの特徴的な症状について解説します。
椎間板とは?
人の体は、脊椎(いわゆる背骨)が支えています。脊椎は、部位によって頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾骨と呼ばれます。これらの脊椎の前方に椎体があり、椎体と椎体の間に椎間板がありクッションの役割を担っています。
椎間板ヘルニアとは?
「ヘルニア」という言葉は、椎間板ヘルニア以外にも、さまざまな病気の名前に付いています。例えば、鼠径(そけい)ヘルニア、臍(さい)ヘルニア、食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアなどがあります。ヘルニアという言葉はラテン語の「Hernia(意味は脱出)」からきており、「体の中の臓器や組織が正常な位置から脱出した状態」を意味します。
鼠径ヘルニアは腸が鼠径部(太ももの付け根)から脱出してしまう病気で脱腸とも呼ばれます。同じく、臍ヘルニアは臍の部分で腸などの組織が脱出してしまう病気です。椎間板ヘルニアは椎間板の一部が正常な位置から突出し脊髄や神経根を刺激するために、様々な症状を引き起こす病気です。
なぜ椎間板ヘルニアが起こるの?2つの原因
椎間板は椎体と椎体の間にあり大きく分けて髄核と繊維輪から成り立っています。髄核は水分を豊富に含むゲル状の組織で、椎間板の中央にあります。その髄核をドーナツ状に取り囲んでいるのが繊維輪で、コラーゲンを豊富に含む強固な組織です。
原因1:椎間板の変性によるもの
原因の1つは椎間板の変性です。椎間板は20歳を過ぎると、髄核の水分量が減ってくるなどの、加齢による変化が生じてきます。椎間板は体を支えるため、日常生活でも常に負荷がかかっています。特に、屈んでものを持つ動作では腰の椎間板に強い負荷がかかるといわれています。このような負荷により線維輪に小さな亀裂が生じると、椎間板ヘルニアが発生します。腰椎椎間板ヘルニアは20歳から40歳の男性に好発し、腰にかかる負荷が大きい重労働や長時間の車の運転などが病気の発生に関連するといわれています(腰椎椎間板ヘルニアガイドラインより)。
原因2:遺伝的背景によるもの
近年の研究結果から、遺伝子背景が椎間板ヘルニアの原因の1つだと分かってきました。
特に年齢の若い椎間板ヘルニア患者においては遺伝的背景が大きく関与しています。腰椎椎間板ヘルニアのガイドラインをみてみると、21歳以下の手術を実施した腰椎椎間板ヘルニア63例と対照群を比較した結果、手術を実施した群の32%には家族に椎間板ヘルニアがあったが、対照群では7%でした。手術群は約5倍の頻度で家族性の素因を持っていた事が分かりました。遺伝的背景については民族によって違う結果が出ており、今後の研究で更に詳細が解明されると思われます。
椎間板ヘルニアの典型的な2つの症状
椎間板ヘルニアの典型的な症状は「痛み」と「しびれ」です。どこに痛みやしびれが出現するかは、脊椎のどの部分で椎間板ヘルニアが起こっているのかによって違います。頸椎椎間板ヘルニアの場合は、首や肩の痛み、腕~手の痛みやしびれといった症状が現れます。胸椎椎間板ヘルニアは頸椎や腰椎に比べ頻度が少ないですが、下肢のしびれや脱力感で気がつくことが多いです。腰椎椎間板ヘルニアが最も起こりやすく、腰やおしり、下肢にかけて痛みが発生し(坐骨神経痛)、しびれも生じます。
まとめ
椎間板ヘルニアは椎間板が負荷に耐え切れず損傷されることで起こり、その原因として椎間板の変性や遺伝的要因が挙げられます。好発する部位は腰椎で、突出した髄核が神経を圧迫する事により腰の痛みや下肢のしびれが発生します。その他、悪い姿勢での動作や重労働でヘルニアが起こりやすくなるとも言われています。痛みと同時にしびれや感覚麻痺などの症状がある方は、椎間板ヘルニアが隠れているかもしれません。気になる方は医療機関で詳しく調べてもらう事をお勧めします。