みなさんは家族性大腸腺腫症という病気をご存知でしょうか。発症率は約17,000人に1人(小児慢性特定疾病情報センターより)とメジャーな病気ではありませんが、放置しているとがんになる可能性が非常に高い病気です。
今回はそんな家族性大腸腺腫症という病気について詳しく見ていきましょう。
家族性大腸腺腫症とは、その症状
家族性大腸腺腫症は、大腸全体に沢山のポリープが発生する病気のひとつです。ポリープとは、胃や腸の内壁にできるきのこ状・いぼ状の突起物のことをいいます。ポリープ自体は自覚症状がないことが多いですが、家族性大腸腺腫症ではポリープを放置した場合、非常に高い確率でがん化するため、がん化する前に適切な処置が求められます。
症状がある場合には、血便、下血、下痢、腹痛などがみられます。また、大腸でのポリープ発生以外にも、胃や十二指腸などの多発性ポリープ・がんや、デスモイド腫瘍、骨軟部腫瘍、甲状腺がん、網膜の色素斑など全身に様々な症状を合併することが知られています。
※デスモイド腫瘍
線維芽細胞という細胞が増殖することで発生する腫瘍。腫瘍そのものは良性で転移はしないが、発生部位などによっては悪性となる場合もある。「腫瘍・がんの悪性度」については、下記記事を参照。
家族性大腸腺腫症の原因
原因
家族性大腸腺腫症は遺伝子の異常によって起こり、その遺伝子異常は親から子へ遺伝することが知られています。遺伝子は体の設計図と例えられることが多く、そこに異常があると完成品である体の方にも異常が出る可能性が高くなります。
家族性大腸腺腫症の場合、がん抑制遺伝子と呼ばれるがんの発生を抑制してくれる遺伝子に異常があり、そのせいで体のあちこちにがんが発生しやすくなります。
遺伝について
がんを抑制する遺伝子の異常は、子供にも受け継がれます。家族性大腸腺腫症の場合、常染色体優性遺伝という遺伝形式をとることで、2分の1の確率で子供にも異常遺伝子が遺伝します。
異常遺伝子を受け継いだからといって必ずしも発症するわけではないのですが、もし仮に発症しなかったとしても、遺伝子を受け継いでいればその子供にもまた同様に2分の1の確率で異常遺伝子が受け継がれていくことになります。
家族性大腸腺腫症の検査
家族性大腸腺腫症では、主に内視鏡検査と遺伝子検査が行われます。
内視鏡検査
内視鏡検査は腸内を直接観察してポリープができていないかを確認する方法で、多数のポリープが発見された場合に家族性大腸腺腫症と診断されます。
家族性大腸腺腫症が疑われる人では10歳を過ぎた頃ぐらいに、まずは一度、大腸内視鏡検査を受けてポリープの有無を確かめる必要があります。
ポリープがあれば異常遺伝子を受け継いでいるので、大腸がんを早期に発見するために、一年ごとに再検査を行うことが推奨されています。
遺伝子検査
遺伝子検査はその名の通り遺伝子を検査するもので、原因となる遺伝子異常が存在するかどうかを調べることができます。患者さんの家族にも家族性大腸腺腫症が発症する可能性があるかどうかを調べるのに用いられますが、比較的高価な検査です。
治療
治療は主に経過観察と手術によって行われます。内視鏡検査などによってがん化の恐れが少ないと判断された場合は、定期検診を行って経過観察をします。
がん化の可能性がある場合では、ポリープの切除や大腸そのものの切除が行われ、がん化の可能性をなるべく下げた後で経過観察へと移行していきます。
まとめ
家族性大腸腺腫症とは、遺伝子異常によって発生する病気で、大腸に沢山のポリープができる他、全身にも様々な症状が現れます。ポリープはがん化する可能性も高く、リスクを下げるために手術が行われることもあります。
異常遺伝子を持っている場合では子供にも2分の1の確率で遺伝してしまうため、家族内に家族性大腸腺腫症の人がいる場合や、子供を作る場合では、家族性大腸腺腫症となってしまうかもしれないというリスクについてしっかりと考慮しなければならないのです。