皆さんは消化管ポリポーシスという言葉を聞いたことがあるでしょうか。消化管、つまりは胃や小腸、大腸などのどこかの病気であることはなんと無く想像がついても、実際にこの病気のことを知っている人は少ないかもしれません。今回はそんな、消化管ポリポーシスという病気について詳しく見ていきましょう。

目次

消化管ポリポーシスとは

消化管ポリポーシスとは、消化管の中に多数(100こ以上)のポリープができてしまう病気の総称です。ひとつの病気の名前ではなく、あとで説明するようにいくつかの病気がまとめて「消化管ポリポーシス」と呼ばれています。

ポリープとは、胃や腸などの内壁にできたきのこ状・いぼ状の突起物のことです。良性のものもありますが、がんの原因にもなってしまうこともあるので注意が必要です。

消化管ポリポーシスの分類

消化管ポリポーシスは、腺腫性、過誤腫性、炎症性、その他の大きく4つの種類に分けられています。このうち、腺腫性と過誤腫性は遺伝性(親から子へ遺伝するもの)、炎症性とその他は非遺伝(遺伝はしないもの)です。それぞれ、消化管以外に出現する症状や経過などが異なります。

腺腫性ポリープ

  • 家族性大腸腺腫症

腺組織と呼ばれる、腸壁の表面にあり腸液を分泌する組織にできるポリープで、大腸ポリープの中でも最も多いタイプです。遺伝性であり、高い確率でがん化することが知られています。特に家族性大腸腺腫症は年齢とともに大腸がんの発生頻度が上がり、40歳代では50%、放置すればほぼ100%大腸がんへ至ると考えられています(メディックメディア『病気がみえる 1 消化器』より)。

過誤腫性ポリープ

  • 若年性ポリポーシス
  • Cowden(コーデン)病
  • Peutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群
  • 結節性硬化症

遺伝子の異常によって、正常な組織が沢山増えてしまうタイプで、遺伝することが知られています。腺腫性に比べれば確率は高くないものの、がん化する可能性があります。

炎症性ポリープ

その名の通り炎症によってポリープが生じてしまうタイプで、がん化することは珍しいといわれています。非遺伝性です。

その他

  • Cronkhite-Canada(クローンカイト・カナダ)症候群
  • 過形成ポリポーシス

その他様々な原因によって起こるポリポーシスで、その性状は様々です。一部遺伝するものも存在します。

どんな症状が出る?

一般的に症状に乏しく、精密検査人間ドックなどで偶然発見されるケースが多いようです。腹痛嘔吐血便などの消化器症状がみられることもあります。

また、消化管以外の症状がみられるものがあります。

例えば、家族性大腸腺腫症では、骨軟部腫瘍や消化管以外のポリープがみられることがあり、診断の際には参考にされます。

また、Peutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群では、大腸以外の多臓器でがん化が起きることがしばしばあり、卵巣腫瘍、子宮がん、乳がん、皮膚がんを合併することがあり、他にも唇や手足の色素沈着といった症状があります。

Cronkhite-Canada(クローンカイト・カナダ)症候群は、初期症状として味覚障害がみられることがあり、脱毛、皮膚の色素沈着、爪の萎縮といった症状を伴います。

消化管ポリポーシスの原因

遺伝子の異常を原因とするものと、原因不明のものに大別されています。

遺伝子の異常を原因とするもの

遺伝子はいわば人間の体を作り上げるための設計図なのです。設計図に異常があると、その該当する部位に異常が出てくる可能性が高くなります。

消化管ポリポーシスでは、病気によって原因遺伝子は異なりますが、いずれもがん抑制に関わる遺伝子に異常が生じるために発症すると考えられており、いくつかの原因遺伝子が特定されています。

また、遺伝子の異常は親から子へ受け継がれていきます。家族性大腸腺腫症では6割程度は家族歴がみられます(メディックメディア『病気がみえる1消化器』より)。

遺伝子検査により発症前に診断がつくこともある一方で、遺伝子の異常があったとしても必ずしも発症するとは限らず、無症状のまま遺伝子の異常を抱えているケースもあります。

原因不明のもの

炎症性ポリープに分類されているクローン病や潰瘍性大腸炎、その他のCronkhite-Canada(クローンカイト・カナダ)症候群といった病気は、明らかな原因が分かっていません。

消化管ポリポーシスの治療

内視鏡

がん化する可能性の低い炎症性ポリープなどでは、経過観察が選択されます。

また、がん化する可能性があるPeutz-Jeghers(ポイツ・ジェガース)症候群や若年性ポリポーシスでは、手術によってできてしまったポリープを取り除きます。多くは内視鏡によって行うことができますが、ポリープによって腸が詰まってしまった場合などではもっと大掛かりな手術が行われることもあります。

一方で、がん化の可能性が非常に高い家族性大腸腺腫症では、予防的に大腸を全摘出する手術が行われることがあります。

まとめ

消化管ポリポーシスとは、様々な病気によって消化管の中に沢山のポリープができてしまう病気です。この記事では、消化管ポリポーシス全体を扱いましたが、原因となる病気によってがん化しやすいもの、遺伝性のものなど性格が異なります。各病気に関する記事で、より詳しい症状や治療法を知ることができます。