乳児から幼児期にかけて、たくさんの予防接種を定期接種として無料で受けることができます。予防接種を受けることで、治療が困難な病気や、重症化しやすい病気、死亡率の高い病気など、子供の将来を左右する病気にかかる可能性を大きく下げることができます。
ここでは、乳児や幼児が受けられる予防接種の種類と、予防接種を受けることでどんな病気や合併症を防げるのかについてお話ししたいと思います。
また、今回の記事に記述されている、症状が重症化する割合などのデータはKNOW・VPD!を参考にしています。

目次

ワクチンの種類

まず予防接種のワクチンには大きく分けて下記の2種類があり、予防接種後に、次のワクチンを接種するのに空けておかないといけない日数が違ってきます。

生ワクチン

生きているウイルスや細菌を弱らせてつくったワクチンです。接種後に27日以上間隔を空けないと、次のワクチンを接種することができません。

不活化ワクチン

ウイルスや細菌を殺処理し、感染力や毒力をなくしてつくったワクチンです。接種後に6日以上間隔を空けないと、次のワクチンを接種することができません。

赤ちゃんの予防接種の種類

子供の予防接種は現在、13種類がありますが、乳児期と幼児期に接種が可能なものは二種混合とヒトパピローマウイルスを除いた下記の11種類になります。予防接種には、定期接種と任意接種があり、定期接種の場合は基本無料です。

1.定期接種

予防接種法で定められたワクチンで、定められた期間内の接種は無料です。

インフルエンザ菌b型(ヒブ)

冬に流行するインフルエンザウイルスとはまた別の病気を起こす菌で、脳を包む髄膜に炎症を起こし、細菌性髄膜炎を引き起こす原因菌の1つです。

薬が効かない耐性菌もあり、発症すれば治療は難しく、2~5%の子供が亡くなり、30%の子供の脳になんらかの後遺症が残る可能性があります。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後2か月
  • 接種回数:4回

肺炎球菌

脳を包む髄膜に炎症を起こし、細菌性髄膜炎を引き起こす原因菌の1つで、血液中に菌が入り込んだ菌血症や、それが悪化し全身に炎症反応が起こる敗血症、重い肺炎や中耳炎などの病気を引き起こすことでも知られています。

ヒブも細菌性髄膜炎の原因菌ですが、肺炎球菌によるもののほうがより重篤で、7~10%の子供が亡くなり、30~40%の子供になんらかの後遺症が残る可能性があります。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後2か月
  • 接種回数:4回

B型肝炎

B型肝炎ウイルスは肝臓に炎症を起こし、そのまま肝臓に住み着いて肝硬変や肝臓がんなどの原因となります。出産時の母子感染や輸血・性行為などでの感染以外に、原因不明の感染を起こすことがあるうえ、一度感染すると、一生肝臓にウイルスが残り、肝臓の病気の引き金になります。

以前は任意接種でしたが、2016年から定期接種となり、無料で接種が受けられるようになりました。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後2か月
  • 接種回数:3回

4種混合(DPT-IPV):ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ

ジフテリアは、ひどい喉の炎症によって喉が塞がったり(クループといいます)、神経麻痺や心臓の筋肉に障害が起こり、死亡する可能性があったりする病気です。

百日咳は、咳が長引き、だんだん咳の持続時間も長くなり、呼吸に支障をきたします。乳児の場合はそのまま息が止まり、また脳症などで死亡する可能性があります。

破傷風は、傷口から入った菌の毒素によって筋肉が障害され、最悪死に至る病気です。

ポリオは、感染した人のうち約1,000人~2,000人の1人に手足の麻痺が出て後遺症として残る可能性のある病気です。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後3か月
  • 接種回数:4回

BCG

BCGは結核菌を弱めたものです。結核菌は、肺や脳を包む髄膜などに炎症を起こし、肺結核や結核性髄膜炎などの原因となります。小児では、重症化しやすく、死亡したり、呼吸困難や・脳障害が起こったりしやすいです。

予防接種は、ハンコ注射と呼ばれるスタンプ式の接種方法になります。

  • ワクチンタイプ:生ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後5か月から11か月
  • 接種回数:1回

麻疹、風疹(MR)

麻疹は、重症化しやすく、30%の人に気管支炎・肺炎・脳炎などの合併症が起こり、肺炎や脳炎で亡くなる場合もあります。また、麻疹にかかって5~10年後に、亜急性硬化性全脳炎(SSPEと呼ばれる、知能障害からはじまりけいれんを起こす難病を発症することがあります。

風疹も重症化することがあり、約6,000人に1人が、風疹脳症を発症し、約3,000人に1人が血小板性紫斑病を発症します。また、妊娠中の女性が風疹にかかることで、赤ちゃんが先天性風疹症候群(難聴・白内障・心臓病・精神運動発達遅延など)になる可能性があります。

  • ワクチンタイプ:生ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後12か月
  • 接種回数:2回

水痘

水痘帯状疱疹ウイルスは、重症化すると脳炎や肺炎、重い皮膚の感染症を引き起こし、毎年10人以上の死者を出しています。非常に感染力が強く、1歳以下の乳児は重篤化しやすいです。

  • ワクチンタイプ:生ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後12か月
  • 接種回数:2回

日本脳炎

日本脳炎は、豚の血液を吸った蚊が媒介する病気です。約100~1,000人に1人が脳炎を発症し、そのうちの15%の人が亡くなるといわれています。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:3歳
  • 接種回数:4回

2.任意接種

定期接種以外の予防接種で、すべて有料となります。定められた期間内に受けなかった定期接種も任意接種となるため有料になります。

ロタウイルス

下痢や嘔吐などを引き起こすウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスで、小児では脱水を起こしやすいです。感染力が強く、保育所などでよく集団感染を起こし、各家庭でも感染が広がりやすいです。

注射器で打つタイプではなく、口から飲むタイプのワクチンです。

  • ワクチンタイプ:生ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後2か月
  • 接種回数:2回か3回(ワクチンの種類によって回数が違います)

おたふくかぜ

おたふくかぜの原因ウイルスではムンプスウイルスといい、重い合併症を引き起こすことが多いです。50人に1人は無菌性髄膜炎に、約1,000人に1人は一生治らない難聴になっており、毎年約30人の人が脳炎によって障害が残ったり、亡くなったりする場合もあります。

  • ワクチンタイプ:生ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:生後12か月
  • 接種回数:2回

インフルエンザ

冬に大流行するインフルエンザですが、日本の子供の脳炎の原因第1位で、毎年200~500人が脳炎になります。中には脳障害が残ったり、亡くなったりするケースもあります。気管支炎や肺炎などの合併症も起こしやすく、重症化しやすい病気です。

毎年流行前に予防接種を受ける必要があります。6か月未満の赤ちゃんには、接種できないことになっています。

  • ワクチンタイプ:不活化ワクチン
  • 初回の推奨接種時期:毎年10月から11月
  • 接種回数:生後6か月から13歳未満は2回、13歳以上は1回か2回

まとめ

予防接種を受けることで上記のような病気や合併症を防ぐことができます。子供の病気は重症化しやすく、命に関わることも少なくありません。命が助かったとしても、子供の将来に関わる後遺症が残る可能性もありますので、予防接種で予防できるものは予防しておいたほうが安心です。

保育所など集団保育に入れば、次々に病気をもらってきますので、早め早めに接種可能な時期になったら予防接種を受けるようにしましょう。