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治療の中心は抗がん剤

―大人のがんと同じように、早く見つけて受診した方が治りは良いのですか?

実は小児がんは大人のがんと違い、早く見つけるとよく治るというものではありません。いくつかの病院を渡り歩いてやっと病名が分かったお子さんの場合、親御さんが「もう少し早く見つけていれば」とおっしゃることがあります。ですが小児がんでは、転移するものであれば最初から転移していることが多いのです。ということは、早く見つけても遅く見つけても、治療成績はそんなに変わりありません。小児がんの治りやすさは、もともとの細胞の性質で決まっていることが多いのです。

ただ、小児がんは進むスピードが早いので、早く見つけた方が良いとは思います。

私の経験した例では、ずっと喘息だと思ってクリニックにかかっていたお子さんが、実は腫瘍が気管を押すことで症状が出ていたというケースがあります。喘息だと思って様々な治療をしても治らず、どうしようもなくなって救急車で来る…手遅れになっては困りますよね。ですから、治療成績に変わりがないことが多いとはいえ、やはり早く見つけた方が良い病気の一つということにはなります。

 

―治療についても簡単にお伺いできればと思います。小児がんの治療は、どのように進めていくのでしょうか。

小児がんには、血液腫瘍固形腫瘍の2種類があります。血液腫瘍では、主に抗がん剤による治療のみを行います。固形腫瘍の場合は、抗がん剤と手術と放射線で治療します。

大人のがんと決定的に違うのは、小児がんでは抗がん剤が効く人が非常に多いことです。つまり、大人と比べると治りが良いということになります。

もちろん、手術が必要になる例もあります。固形腫瘍の場合はきれいに取り除いた方が良いとは思いますが、全部取らなくても、その後に放射線できちんと治療を行えば大丈夫なものもあります。

小児がんには、非常に多くの種類があります。お腹に腫瘍ができたとしても、それがどういう腫瘍かをきちんと調べないと、治療方針は決められません。反対に、病名がきちんと分かれば、それに対して標準となっている治療法はある程度決まっています。ですから、まずは診断をきちんとつけることがとても大切です。

小児の腫瘍については、日本小児がん研究グループ(JCCG)が、オールジャパン体制で研究を行っています。「こういう病気だったらこういう治療」という臨床試験をしていて、白血病と診断されれば、ほとんどの患者さんがJCCGの臨床試験に参加しているので、どこの病院でもほぼ同じような治療を受けられるということになります。

大人の場合は、標準治療はあっても、各病院でそれぞれに工夫を行っていることがありますが、小児の場合はそういう意味での病院間の格差は比較的少ないのかもしれません。

 

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