「がん」という言葉を使わずに説明することも
―治療や病態について、お子さんへのご説明はどのようにされているのですか?
お子さんに対して「がん」という言葉を使うのは、私の場合、小学校2年生以上です。もちろん、それ以下の子に対しても病態の説明はします。「細胞が不良になってね」などという話はしますが、がんという言葉はあまり使わないように思います。また、「強い薬を使って治療するよ」ということは伝えます。髪の毛も抜けてしまいますからね。
ほとんどの場合、まずは親御さんに説明をして、その後子どもに説明をするスタイルを取ります。
―小さいお子さんに治療を行う場合、「がん」という言葉を使って説明できないことがネックになることもあるのではないかと思います。
おそらく、治療の必要性を理解できないというところでしょうね。小さい子たちは、「嫌」「嫌じゃない」で物事を捉えます。抗がん剤の治療は嫌な方、辛い方に入るので、そういう辛いことをどうしてしないといけないのか、というところをきちんと説明できないことが、大きな問題だと思います。
そういう子たちには、「ちょっと辛いけど、いつまでも辛いわけではない」と話します。抗がん剤の治療はたいてい、1週間などと期間が決まっています。ですから、「この期間は治療があって、もしかしたら気持ち悪くなったり、頭が痛くなったりするかもしれない」という話はしますね。
―お子さんたちにとって、「自分の体内で何かが起こっている」となると、周りの先生方やスタッフの皆さんに様々なことを尋ねるという状況にはなっているのかなと思うのですが。
でも、「なんで髪の毛が抜けるの?」とかって、子どもたちはあまり聞いてこないんです。「薬が強いから、抜けるよ」という説明はしますけど、抜けたからどうこうとはあまり言わないです。小さい子や女の子たちは気にすることはありますが、それほど聞いてくることはありません。治療が終わったら、ちゃんと生えてきますから。
賢い子が多いというか、皆ある程度自分で分かっているというか。小さい子も皆、身の周りで起こっているいろんなことが、分かっているような感じです。
編集後記
取材当日、国立成育医療研究センターのこどもサポートチームのカンファレンスの様子と、病棟とを見学させていただきました。
カンファレンスでは、医師・看護師をはじめ、サポートに関わる多くの医療スタッフが議論を重ねていました。お子さんの病態や症状のことだけでなく、ご家族の様子など、細かな部分まで観察し、気を配っている様子を窺うことができました。
後編では、小児がんサポートチームの働きや、小児がんが治癒した後のお子さんたちのサポートについて聞きました。引き続き、ぜひご一読ください。
※取材対象者の肩書・記事内容は2018年1月17日時点の情報です。