糖尿病は高血圧と並び、多くの日本人が良く知っている病気ですね。糖尿病予防と謳った飲料水や食品など数多くの商品もあり、日頃から糖尿病予防を心掛けている人も多い事でしょう。この認知度の高い「糖尿病」には1型と2型の2種類に分類される事をご存知でしょうか。ほとんどの人が「糖尿病」と言う時は、「2型糖尿病」を指しているのですが、1型糖尿病とはどういう違いがあるのかなどご紹介したいと思います。

目次

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

1型と2型では、発生する原因が全く違います。また原因が違うため、それぞれに対する治療法も違います。

1型糖尿病

1型糖尿病は主に自己免疫によって、自分自身でインスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島β細胞を破壊してしまい、インスリンの分泌ができなくなってしまう病気です。その他、ウイルス感染が引き金になってβ細胞を破壊するといわれています。

1型糖尿病には、以下のような特徴があります。

  • 発症年齢が若い(子供でもなる)
  • 肥満は関係ない
  • 日本人の糖尿病患者全体の数%が1型(東京女子医科大学より)
  • 一部の民族に多い(スカンジナビア人、サルデーニャ人)
  • 治療は直ちにインスリン療法

2型糖尿病

2型糖尿病には、インスリンの分泌が少なくなって発症するものと、体がインスリンにあまり反応しなくなって発症するものがあります。遺伝的に糖尿病になりやすい体質や、食べ過ぎや運動不足、肥満、喫煙などの生活習慣が関係しています。

近年は子供の肥満が増え、2型糖尿病を発症する子供が問題になっています。

2型糖尿病の特徴は以下の通りです。

  • 発症年齢は30歳以上
  • 肥満と関係あり
  • 日本人の糖尿病患者の90%以上が2型(東京女子医科大学より)
  • 治療は食事療法、運動療法、薬物療法(経口血糖降下薬、インスリン療法等)

子供の1型糖尿病、どうやって分かる?

水を飲む子供

発生頻度は低い1型糖尿病ですが、小さな子供でも発症します。私たちは子供のどのような症状で異常に気付けばよいのでしょうか。ここからは、1型糖尿病の特徴的な症状についてご紹介しましょう。

糖尿病性ケトアシドーシス(血液が酸性に傾く状態)

1型糖尿病の特徴的な症状に「糖尿病性ケトアシドーシス」とよばれる状態があります。これはインスリンが欠乏することによって起こる状態で、肝臓でケトン体が過剰に産生されその結果血液が酸性に傾いてしまいます。さらに様々な症状も引き起こします。中には、糖尿病性ケトアシドーシスの発症を契機に1型糖尿病が発覚するケースもあります。

症状としては、1~2日の経過で、口渇、頻尿多尿多飲(急に水をがぶ飲みするなど)などが出現します。これらの症状に伴い、悪心(きもち悪さ)、嘔吐腹痛などが起こる場合もあります。また病気が進行すると意識障害脱力などがみられるようになります。

まれに急性脳浮腫を起こす場合もあります。特に5歳未満の子供の場合、この脳浮腫が初発症状として起こり、いきなり呼吸停止や昏睡で救急搬送される事態になるケースもあります。

1型糖尿病の診断

高血糖の状態が慢性的に続いているのかを確認し、その他の症状、臨床所見などを参考にして糖尿病であるか否かが判断されます。

実施される検査は以下のとおりです。診断基準は1型も2型も同様です。

空腹時血糖測定

食後10時間以上空けて採血し測定した血糖値を空腹時血糖と定義します。一番血糖が低くなるタイミングでの血糖値で診断します。

75g経口糖負可試験(OGTT試験)

75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲用し検査を行います。飲用前及び飲用後2時間までに何回か採血し血糖値を測定し診断します。

HbA1c測定

過去1〜2ヶ月間の血糖の状態を知ることができる検査です。糖尿病の診断に欠かせない検査となっています。治療が開始された後も、治療効果を確認するために定期的に測定していきます

放っておくと10年で合併症が出現

悩む男性

高血糖の状態を放置したり、適切に血糖コントロールをしていなかったりする状態が長年続くと合併症が発現します。中でも糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症は糖尿病の3大合併症と呼ばれ、手足などの壊死、失明、腎不全等の危険性があります。

1型糖尿病と診断されれば、インスリン療法を行い、常に血糖コントロールを行うことが非常に重要です。3大合併症について簡単にご紹介します。

糖尿病性神経障害

神経障害は、合併症の中で一番早く出てきます。手や足の末梢神経が障害され、痺れや痛みに鈍くなるなどの症状が出ます。小さな怪我をしても気付かず、傷口が悪化し壊死し手足を切断しなければならない場合もあります。

糖尿病性網膜症

健康診断で行われる検査の一つに、眼底検査というものがあります。その眼底検査で調べることができる網膜という部分の血管がもろくなり、出血を起こすのが糖尿病性網膜症です。悪化すると失明する危険性があります。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症では、腎臓の糸球体という部分の細い血管が悪くなり尿が作れなくなります。さらに腎臓の組織が破壊され、腎機能が低下すると体の中の毒素や老廃物を尿として排泄できなくなります。最終的には、血液から老廃物を排除する人工透析をしなければ生きていけなくなります。

まとめ

今回の記事では、1型糖尿病を中心にご紹介しました。1型糖尿病はインスリン欠乏により発生する糖尿病で、治療としてはインスリンを補うインスリン療法のみが有効です。小さな子供も発症するため、親が症状に気付いてやる必要があります。

一旦発症すると治療は生涯続きます。適正に血糖コントロールすることで合併症を予防することができますが、治療を怠ると合併症を引き起こし重大な結果を招くこともあります。血糖コントロール合併症予防が糖尿病治療の目標となります。