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家族・本人・医療者のコミュニケーションが大切

―医療者と患者さん、あるいは医療者同士のコミュニケーションを円滑に進めるために心掛けていることはありますか?

そこが一番のキーで、かつデリケートな部分でもあります。緩和ケア認定看護師の資格取得の際には、コミュニケーションの授業がとても多いんです。親御さんやお子さんの感情表出を促進させるコミュニケーションスキルがないと、面談は難しいかもしれません。

加えて、一番難しいのは、多職種がそれぞれの役割を果たすために調整を行うことかもしれません。カンファレンスの中で意見交換を促したり、医師と多職種との間にズレがあったらケースカンファレンスを行ったり。医師だけの考えで進んでいくべきものでも、多職種だけで進んでいくものでもなく、みんなが同じ方向を向けるように調整するのが私の役割だと思っています。一方的な医療にならないように、ご家族とご本人、それに病棟スタッフとでコミュニケーションを取っています。

 

―病棟のお子さんと接する際は、どのようにコミュニケーションを取っていますか?

小児の場合、それまでの養育歴や保育園・学校での様子がとても大切です。その子の成長発達を促しながら、できることは治療中であってももちろんやっていただきます。とにかく、成長発達や入院までのことを考えながら、退院後の社会生活へなるべくスムーズに移行できるよう関わっています。

 

―治療にあたり、看護師や医師を怖がってしまうお子さんもいらっしゃると思います。そういうお子さんに接する際、何らかの工夫をされているのでしょうか。

薬を服用するとき、気持ち悪かったり口の中が口内炎だらけだったりすると、お子さんご本人は飲みたくないですよね。それがすごく嫌なことというイメージはあるかもしれません。でも、治療中はやるべきことはやる必要があるので、その役割分担を明確にしています。

例えばあることに関して「嫌な処置は看護師が行って、その後にご家族やチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)がフォローをして」と進めることがあります。チームで看ていく形ですね。役割分担が明確になっていないと病棟スタッフも、ご家族もご本人も戸惑うので、そこはしっかり行っています。

 

―お子さんを看るときには、どういうことに注意していますか?

入院時の面談で、その子のそれまでの生活のことを全部聞いていますよね。それを踏まえると入院中、今までと違うところを捉えられることがあります。家族や看護師の意見がとても大切なので、症状アセスメントの時には現場の家族や看護師、また自分の症状を話せる子の場合は子どもの声必ず聞くようにしています。

行っている治療に対しては、予防的なアセスメントがあります。それに対して、例えば気持ち悪くなるお薬があるとすれば、「この薬が入るから気持ち悪くなるけれど、食事の量はどうだったかな」とか、口内炎ができやすい薬があるのであれば最初から口腔内を綺麗にして保護してあげようとか、そういったケアを行いながら、その子がその子らしく生活できるようにしています。

痛み一つ取っても、人によって感覚が違いますよね。だから、本当にその子を捉えないとアセスメントもケアもできません。そこを、初診段階・診ていく中での段階、と全て捉えていきます。

一人ひとりを捉えるのは大変に思えますが、こどもサポートチームのカンファレンスには30人ほどが自主的に集まっています。みんながきちんとアセスメントを持っていて、ちゃんと方向性を統一したいと思ってくれているので、ものすごく大変というイメージではありません。

 

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