人間ドックなどで受ける肺機能検査で「要注意」「要再検査」「要精密検査」と判定されると、とても心配ですよね。今これといった症状がなくても、肺機能検査で何か異常があれば、将来病気が発症するのでしょうか?そもそも肺機能検査では何が分かるのでしょうか。本記事では、気になる肺機能検査について解説します。
肺機能検査とはどんな検査?
肺機能検査(スパイロメトリー)とは、主にスパイロメーターという機械を使って「肺」がどれくらいの空気を取り込み、どれくらい吐き出す力があるのか、換気の機能を調べる検査です。
特に喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患が疑われる場合に行われます。
具体的に、調べる項目は「肺活量」「努力肺活量」「1秒量」「1秒率」です。
肺活量
ゆっくりと呼吸をして、最後まで息を吐き切ったところから、胸いっぱい息を吸い込んだ量を測定します。肺の全体がどのくらい息を吸うことができるか調べるための検査です。
性別・年齢・身長から求めた標準値(%肺活量)に対し、80%以上が正常とされます。
努力肺活量
胸いっぱいに息を吸い込み、それをできるだけ勢いよく吐いた量を測定します。肺活量はゆっくりと吐きますが、努力肺活量は一気に吐き出す点が特徴です。
1秒量
努力肺活量のうち、最初の1秒間で吐くことのできた量を測定しています。
性別・年齢・身長から算出した標準値より低ければ、気管支が狭くなっている危険性があります。
日本呼吸器学会では最近、患者さんに理解しやすいように、性別・身長・1秒量を基に計算式から肺年齢を算出しています。
- 男性の肺年齢=(0.036×身長(cm)-1.178-1秒量(L))/ 0.028
- 女性の肺年齢=(0.022×身長(cm)-0.005-1秒量(L))/ 0.022
1秒率
1秒量が努力肺活量に占める割合を示しています。
1秒率は70%以上あることが基準値とされます。数値が低い場合は気道が狭くなり、息が吐きにくくなっている可能性があります。
どんな人が受ける検査なの?
肺機能検査は、呼吸器疾患が疑われるときに行う検査です。
加えて、40歳以上の方で20年以上の喫煙歴がある場合、一度は肺機能検査を受けることをおすすめします。
現在習慣的に喫煙をしている人の割合は男性で32.2%、女性8.2%と、この10年間で減少傾向にはあります(厚生労働省|最新たばこ情報より)。しかし、喫煙歴が長い方はCOPDを発症しやすいのです。
また、喫煙歴がない方でも「息切れ」「呼吸困難」「咳が出る」「痰が出る」「ゼイゼイする」などの症状がある場合には、肺機能検査をした方が良いでしょう。
どんな病気を見るつけるための検査なの?

肺機能検査で見つかる病気では、肺や気管支などに問題がある場合と、肺以外に問題がある場合とがあります。疑わしい病気について簡単に解説していきます。
肺や気管支に問題がある疾患
喘息
喘息は、気管支がアレルギーなどで炎症を起こし、気道が狭くなる病気です。
アレルゲンとなる食品や化学物質、ハウスダスト、ダニなどを避けなければ、発作を繰り返すことになります。
喘息では、息が吸えてもきちんと吐き出せなかったり、息を吸う度に咳が出てうまくガス交換ができなくなくなったりします。そのため、発作が起きると非常に苦しい状態となってしまうのです。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
タバコなどの影響により生じます。肺の組織のうち、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という部分が壊されてしまう病気です。
酸素をうまく取り込めないため、呼吸をしても息苦しさが抜けない状態となります。
塵肺(じんぱい)
長年にわたって粉塵(ふんじん)を吸い込むことで、肺の間質に炎症が起き線維化し、肺が硬くなります。炭鉱や鉱山で働く人などに多くみられる病気で、息苦しさや咳、痰といった症状がみられます。
間質性肺炎
間質性肺炎は、普通の肺炎とは別の病気として取り扱われます。間質性肺炎になると、肺機能が確実に低下していくのです。
間質とは肺胞と肺胞の間の部分をいいます。間質部に炎症が起こることで肺胞の壁が厚く、硬くなっていき、呼吸困難や乾いた咳といった症状を引き起こします。
肺線維症
肺が硬くなり、うまく膨らまなくなり、ちょっとした動作でも息切れがするようになります。
肺以外に問題がある疾患
脊椎側弯症
脊柱が左右に曲がってしまったり、ねじれてしまったりする病気です。側弯症により胸部の形が変形し、肺が膨らみにくいことがあります。
腹水
何らかの原因で腹水が溜まると横隔膜が押し上げられ、肺が圧迫され呼吸しにくくなります。
高度の肥満
高度の肥満により、脂肪で肺や気管支が圧迫されます。
胸膜炎
肺を支え取り囲む胸膜に炎症が起きると、胸の痛みや咳、胸水が出現し、呼吸がしにくくなります。
神経呼吸筋の異常
筋萎縮性側索硬化症・重症筋無力症・多発性筋炎などの難病により、呼吸筋が弱りガス交換ができなくなります。
肺機能検査は、さまざまな病気を見つけるきっかけになります。
疑わしい数値が出た場合にはさらに詳しい検査である胸部レントゲン撮影・採血だけでなく、胸部CTや動脈血ガス分析などを行うので、「要再検査」「要精密検査」と判定された方は必ず医療機関を受診してください。
まとめ
肺機能検査のみだけで病気を診断されることはありません。しかし、要再検査・要精密検査の判定を受けた場合は肺機能に何らかの異常があったのですから、まずは専門医を受診することをおすすめします。
病気は急に発症するわけではなく、日々の生活や食事・環境などに影響されて徐々に進行していきます。早目に気付けば、早目に対処を始めることができるのです。