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 ネット依存は生命に関わることも

ネット依存で最も問題になるのは生活の破綻、あるいは人間関係の破綻ですね。ご両親を攻撃したり、家の中を壊したりするほか、ゲームにはまってしまうと現実の人間関係が軽薄になってしまいます。その分、オンラインの友達を非常に大事な存在だと思うようになります。

それだけでなく、心と身体の健康問題も出てきます。依存の患者さんは、自分の今の状況を決して良いと思っていないため、うつの傾向が非常に高くなります。自殺のリスクもあります。

身体の方は、身体を動かさず不活発になるため、体力が落ちたり、脚の骨がやわらかくなってしまったりといった問題が起こります。

韓国では、エコノミークラス症候群で亡くなった例や、課金のしすぎで自殺した女子の例などもいます。これらは報道されていないだけで日本でもあると思っています。ご両親を殴ったり、殺したりといったケースもあるでしょう。ご本人が自殺するリスク、ご家族に加害するリスクは低くはありません。

ネット依存は病院で治療すべき「病気」である

どの親御さんも、自分の子を病院に連れていきたいとは思っていません。ですから、ある程度までは許容しています。それが学校に行かなくなるなど、どうにもならないレベルになると、病院に行こうという話が出てきます。

ですが先に話したように、お子さんは自覚していたとしても「自覚のないふり」をするので、受診は抵抗します。親御さんが騙して連れてくるケースや、お金を渡したり、「ゲームの機器を買ってあげるから」と言ったりするケースもあるようです。

ご本人とご家族だけではなかなかうまくいかないので、病院に来ることはとても大切です。第三者として私たちが入り、患者さんとの間でうまく人間関係を作ることで説得を進めていきます。

後編にむけて(編集部より)

ネットやゲームに依存してしまうのは、得てして子供たちであるといいます。ゲーム以外に楽しみを見つけられない子供たちは、一度のめり込んでしまうとなかなか抜け出すことができず、生活の破綻や心身の症状など、様々な問題に悩まされてしまうことがあるのです。

後編では、ネット依存に対して久里浜医療センターで取り組んでいる治療法や、この病気を予防するためにご家族ができることを見ていきます。

※取材対象者の肩書・記事内容は2018年4月10日時点の情報です。