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ネット依存が子供たちの将来を潰す?!

今までの研究結果を見ていくと、大人の場合は治療をしなくても良くなることが多いことが分かっています。ところが、子供たちがネットやゲームにはまったケースでは、自然に良くなる率は低いのです。

大人は、多くの経験から「ゲームよりもっと良い物がある」ということを知っています。しかし子供たちはそういう経験がほとんどないときにゲームを始めてしまうので、ゲームに変わるものがなくなってしまうのです。加えて、子供たちは脳の発達上、大人と比べて自己コントロールが低いため、一度はまるとなかなか抜け出せなくなります。

つまり、「子供たちがコントロールできないのが悪い」という理屈は間違っていると思っています。彼らの自己責任ではなく、ある程度の規制や国によるコントロールも必要なのです。

ゲーム依存は、子供たちの将来を潰してしまいます。本当に深刻に受け止め、考えていかなければいけない時期だと思います。

「依存しやすい子」はいる?

依存のしやすさには、個人の特性環境要因とが関係しています。

個人の特性としては、衝動性が高いお子さんや、現実世界の中で自分のアイデンティティを見つけられないようなケースで依存しやすくなります。前者はADHD(注意欠如多動性障害)、後者はアスペルガー症候群が代表的です。それ以外でも、口下手や対人関係が少し苦手、仕事がなかなかうまくいかないなどといった方がゲームにはまってしまいがちです。

ゲームは面白いし、大してやらなくても結構上手になった気になりやすいです。それほど練習を積まなくても、すんなり自分の満足できる結果を出せてしまいます。ですから、「こっちの方が良い」となってしまいやすいのです。

環境要因では、例えばご両親が家でずっとスマホを触っているような状況があります。あるいはご両親が自由にスマホを使わせてくれる環境や、ご両親がずっと喧嘩をしていて家庭内にお子さんの居場所がないケース学校の中に居場所がないケースなども、スマホやゲームに依存しやすくなる場合があります。

ゲーム以外のネット依存

少し古いデータですが、2013年に全国の中高生10万人に対して実態調査を行った際、インターネット依存の割合を調べました。すると、男子よりも女子の方が多かったのです。

女子はSNSにはまるケースが非常に多く、男子はやはりゲームにはまるようです。しかし、男女ともにはまっている割合が最も高いのは動画でした。男子ではゲーム実況、女子ではアニメが多いようです。男子の場合、ポルノ動画も見ているのではないかと思います。

一方、当院の外来に来る患者さんの男女比は6-7:1で、男子が圧倒的に多いです。SNSは、たとえ1日中やっていても一見普通に見えますよね。帰宅後は四六時中スマホを離さなくても、学校には行くし、夜は寝るし、食事もする。ご両親からしたら不満でも、病院に連れてくるほどではないのです。ところが、ゲームにはまってしまうと学校に行かなくなるため、明確に問題として分かります。SNS依存は、患者さんはいても病院に来るほどケース化する例は少ないといえます。

 

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