骨粗鬆症とは骨がもろくなる病気で、骨折が起きやすい状態です。
骨折をする場所によっては寝たきりになってしまうことがあるため、骨粗鬆症の患者さんは通院治療により重症化を防ぐことだけではなく、骨折の原因となるような転倒を予防する必要があります。
ここでは、骨粗鬆症の治療法と転倒の予防方法の中でも、患者さんご自身で取り組めることを説明します。
骨粗鬆症の治療目的は「骨折を防ぐこと」
骨粗鬆症とは骨の強度が下がり骨折しやすい状態ですが、通常、痛みなどの自覚症状はありません。そのため、しらずしらずに進行し、突然の骨折で発覚することが多くみられます。
骨折が起きた場合、痛みでつらいだけでなく、日常生活を送るのが難しくなったり、骨折した部位によっては寝たきりとなったりする場合もあります。
骨粗鬆症の治療は、骨折の予防が目的です。治療法は薬物療法が中心ですが、それに加え、栄養療法や運動療法が行われます。
薬を処方されたら、服薬は忘れずに!
骨粗鬆症は、薬によって骨折のリスクを下げることができます。
骨粗鬆症に利用される薬には、破骨細胞(古い骨を吸収する)の抑制作用を主とする骨吸収抑制薬、骨芽細胞(新しい骨を作る)の促進作用を主とする骨形成促進薬、その他にも多くの治療薬があります。
薬は、各患者さんの状態に合わせて処方されますので、内服は確実に行いましょう。
内服方法が間違っていたり内服忘れがあったりすると、きちんとした効果が出ず、治療が不十分なものとなってしまいます。
食事はバランス良く、カルシウムとビタミンD、ビタミンKを意識して
骨粗鬆症の治療は、食事の内容が非常に重要です。
バランスの良い食生活を心がけるほか、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを積極的に摂りましょう。
- カルシウム
骨の基礎となるカルシウムは、不足すると骨吸収が増加して骨量が減少してしまいます。 - ビタミンD
カルシウムの吸収に必要なのがビタミンDです。ビタミンDは、骨密度の上昇効果と共に、転倒抑制効果があることがわかっています(ガイドライン p.48より)。 - ビタミンK
ビタミンKには、骨の形成を促す働きがあるとされています。
避けるべき食べ物
骨粗鬆症の治療において特別に避けるべき食べ物はありませんが、リン、食塩、カフェイン、アルコールの過剰摂取には注意が必要です。
運動はできることから、無理は禁物!
骨粗鬆症の治療や転倒予防に、運動を取り入れることは有効です。
運動をすることで骨密度が上昇するほか、背筋を鍛えると椎体骨折の予防になります。また、体幹・下肢の筋力訓練、バランス訓練は転倒予防になります。
ただし、無理な運動や慣れない動きによって転倒してしまうと本末転倒です。
必ず医師の指導に従い、できるところから少しずつ、手すりにつかまったりと、安全な状態で行うようにしましょう。
転倒予防には服装や家具の配置にも注意を
骨折予防で重要なのが転倒の予防です。
転倒は、つまずいたり、滑ったり、足を踏み外したりすることが原因です。転倒の多い場所としては、家の中では居間、家の外では平坦な道の場合が多く、日常生活でいつでも起こりえます。転倒予防のポイントを下記に挙げていきます。
- 履物は、サンダルやスリッパは避け、脱ぎ履きの楽な軽量のものを選ぶ
- ロングスカートなど裾の絡まりやすい服は避ける
- 外出時は手提げではなく、リュックなど手ぶらになれるカバンを利用する
- すべりやすい雨や雪の日、暗くなってからの外出はできるだけ避ける
- 時間に余裕を持って行動する
- 自転車に乗る際、サンダルやスカートは避け、安全運転を心がける
- 歩行時、手すりのあるところは手すりのそばを歩き、必要に応じて杖を使用する
- マンホールや歩道の段差など、わずかな段差に注意する
また、家の中の環境も見直しましょう。
- 床に物をできるだけ置かず整理整頓する
- コード類がひっかからないように壁沿いやじゅうたん下に通す
- じゅうたんの縁がめくれないようにテープで固定、あるいは、部屋全体に敷ける大きさにする
- 家具の転倒防止策を行う
- テーブルの角にカバーを付ける
というような転倒予防対策が考えられます。
転倒のリスクが高い場合には、手すりの取り付け、上がりかまちに踏み台を置く、スロープで段差をなくす、足元に照明をつける、階段やお風呂場など滑りやすいところに滑り止めをつける、様式トイレにする、ドアを外開きや引き戸にする、などのリフォームを行うことを考えましょう。
要介護の認定を受けた方であれば、介護保険を利用して住宅改修の費用を一部負担してもらえる制度があるほか、福祉用具の貸し出しを受けることができます。
まとめ
骨粗鬆症の治療では、患者さん自身が行えることがたくさんあります。
特に高齢の方にとっては、骨折の予防は今後の人生を元気に生きる上で欠かせません。
毎日の意識で骨粗鬆症を改善し、転倒予防をしていきましょう。