風邪をひいたときや、頭痛のとき、けがをしたときなどお世話になるのは薬ですが、薬には副作用というものが存在するのは皆さんご存知でしょう。
副作用にもさまざまな種類があります。用法・用量を守って正しい使い方をしていても、お薬が効きすぎて起こってしまうものや、お薬の作用機序から別の症状が現れてしまう場合などがあります。また服用する人の体質によってアレルギーを起こしてしまう場合もあります。
今回はその薬の副作用の中でも、誰にでも起こりうるといわれる「薬物アレルギー」について詳しく見ていきたいと思います。
薬物アレルギーとは?
ではそもそもアレルギーとはどのようなことをいうのでしょうか?
人間の体内は害のある異物が侵入するとこれを認識し、排除しようとする免疫機能が備えられています。外からの細菌やウイルスの侵入をおさえてくれるのも、この免疫機能のおかげです。
しかしこの免疫機能が過剰に反応し、発疹や鼻水、喘息など有害な症状を起こすことがあり、これをアレルギーといいます。
アレルギーの原因(アレルゲン)には皆さんよくご存じの花粉や、ダニ・ほこり、食物(卵やそばなど)などがありますが、薬が原因のアレルギーを薬物アレルギーといいます。
薬物アレルギーの症状
薬物アレルギーの症状として最もよく見られるのが「薬疹」と呼ばれる皮膚症状です。発疹や皮膚のかゆみ・赤みなどが現れます。薬物アレルギーを起こした患者さんの8割以上がこの皮膚症状を経験するため、薬物アレルギーを疑う指標とされています。
また皮膚症状のほかにも喘息発作などの呼吸器疾患や血液検査で明らかになる肝障害、血液障害(貧血や血小板減少など)、腎障害などがあげられます。
とくに高齢者や糖尿病などにかかっている方、もとから腎臓・肝臓の機能が落ちている方などは、薬物アレルギーが発症した際に重症化する恐れがあるため注意が必要です。
薬物アレルギーの中でも命にかかわるとされる重症なものがアナフィラキシー・ショックと重症薬疹です。アナフィラキシーは薬の服用後すぐに生じる即時型のアレルギー反応で、全身にわたる蕁麻疹や鼻水、喘息発作、下痢、嘔吐そして血圧低下となり呼吸困難になることもあります。
重症薬疹とは、高熱や肝障害などを伴う命に係わる重篤な薬疹のことを言い、有名なものにスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症などがあります。目・口腔粘膜など粘膜を中心に発赤やびらんを生じそれが広範囲に広がり、その後多臓器不全を伴うことがあり、緊急入院が必要とされています。。
薬物アレルギーが生じるまでの時間
初めて服用したお薬の場合、そのお薬にアレルギー反応を起こす抗体や細胞がつくられる時間が必要とされるため、アレルギー症状が起きるまでに2週間程度かかるとされています。
しかし一度服用し、抗体ができているお薬を服用した場合、即時型アレルギーでは15分後に、遅延型アレルギーでは48時間後をピークとして症状を生じます。
薬物アレルギーを起こしやすいお薬は?
- 抗生物質(特にペニシリン系、セフェム系)
- 解熱鎮痛剤
- ホルモン剤
- 造影剤
- 高血圧・糖尿病薬
- 抗腫瘍薬
- 関節リウマチ治療薬
- 抗てんかん薬
などがあげられます。
処方されたものだけではなく市販薬によっても生じる恐れがあるため、注意が必要です。
また卵・牛乳アレルギーの方は、卵・牛乳成分が入っているお薬を服用することでアレルギー反応を起こすことがあります(たとえば、下痢止めのタンニン酸アルブミンには牛乳由来成分が含まれています)。
お薬を購入・処方してもらう際には自分のアレルギーについてしっかり伝えるようにしてください。
症状が出た場合の対処方法
上記のような症状が出た場合、なるべく早めに病院に行くことをお勧めします。軽症の場合、原因薬物を服用中止することで症状は治まりますが、重症の場合は入院して点滴が必要となる場合があります。
病院にかかる際、医師は症状の原因が何かを特定する必要があるため、様々な可能性を模索します。そのため症状が出る前に服用した薬の説明書や空箱などはなるべくとっておき、医師に見せるようにしましょう。
薬物アレルギーを起こさないために
一度薬物アレルギーを起こしたお薬は飲まないようにする必要があります。
しかしお薬は横文字で覚えにくかったりする場合も多いため、今まで服用したお薬をまとめておけるお薬手帳を携帯し、アレルギー反応を起こした薬を記入しておくことをお勧めします。
アレルギーを起こした薬物だけではなく、似たようなお薬でもアレルギーを起こす可能性があるため薬局や病院などに行く際は、お薬手帳を持っていきアレルギーを起こしたこと、何のお薬で起こしたのかをしっかりと伝えてからお薬を処方してもらう、また購入するようにしましょう。
まとめ
いまや身近な存在として知られているアレルギーですが、重症化すると命にもかかわる可能性もあります。
アレルギー体質の方や、家族や身近な親族が重いアレルギーを持っている場合も薬物アレルギーなど起こす可能性がありますので注意が必要です。
大事なのは一度アレルギーを起こした薬をしっかりと記録し、今後飲まないようにすることです。お薬手帳などを活用して、お薬を安全に服用できるように自分の身を守りましょう。