女性特有の臓器として子宮や卵巣があるように、男性にも生殖にかかわる前立腺という臓器があります。前立腺に生じる疾患はいろいろありますが、その中の一つに排尿時の痛みや不快感などがみられる前立腺炎があります。今回は前立腺炎がどういったものなのか、原因や症状、治療について紹介します。
前立腺とは
前立腺とは男性特有の生殖器の一つで、通常は栗やクルミほどの大きさです。膀胱の出口付近に尿道をとり囲むようにあります。
前立腺からは精液の一部である前立腺液が分泌されていて、精子に栄養を与えたり、精子を保護したりする役割があります。
前立腺の疾患
前立腺に生じる疾患としてよく知られているのは今回紹介する前立腺炎のほか、前立腺肥大症、前立腺がんが挙げられます。
前立腺炎の種類・原因
前立腺炎は原因や状態に応じて、次のような種類に分類されます。原因やきっかけが特定できず、不明な場合も多くあります。
急性前立腺炎
急速に症状が表れるタイプの前立腺炎です。
原因は細菌が大半です。前立腺の中を尿道が通っているため、尿道から侵入した細菌が前立腺に感染して炎症を起こすことがあります(急性細菌性前立腺炎)。ウイルスやカビ、原虫などによる感染はまれです。
慢性前立腺炎
慢性前立腺炎は下記のようにいくつかタイプがあります。
- 急性期から移行していく
- 細菌が原因でも目立った症状がなくゆっくりと発症する
- 細菌が原因でなく、生活習慣の乱れから症状が慢性化する
その中で細菌感染が確認されたものを慢性細菌性前立腺炎、細菌感染が確認されない非感染性のものを慢性非細菌性前立腺炎といいます。後者は慢性骨盤痛症候群と呼ばれることもあります。
慢性前立腺炎は急性細菌性前立腺炎に比べると症状が軽度で、会陰部の不快感程度の症状しかない場合もあります。
前立腺肥大症や前立腺がんが50歳以上の中高年の男性にみられるのに対し、前立腺炎は比較的若い人でも発症します。
前立腺炎の症状
前立腺炎では次のような症状が起こります。
- 排尿痛や排尿時の尿道違和感
- 頻尿や残尿感がある
- 会陰部(陰嚢と肛門の間)の痛み
- 下腹部不快感、太もも内側のしびれ感
急性前立腺炎の場合、倦怠感や38度以上の高熱、悪寒など全身症状がみられます。強い排尿痛と頻尿があり、腰や陰茎にも痛みが広がることがあります。急性型は風邪やインフルエンザと間違われることがよくありますが、排尿の症状が必ずあり、尿検査では膿尿が認められます。
慢性前立腺炎では、急性に比べて症状が軽く、会陰部や排尿時の不快感にとどまることも多いです。
前立腺炎の診断・治療法
前立腺炎の診断・治療法について紹介します。
診断
尿検査で膿尿なのか、原因が細菌性なのか調べます。膿尿の場合は尿中に白血球数が通常よりも多くなります。
また肛門から指を入れ、前立腺を触って腫れや圧痛(押すと表れる痛み)がみられるかどうか確認します(直腸診)が、明らかな急性型では、かえって発熱の原因となるので行いません。
治療法
急性細菌性前立腺炎の場合
急性細菌性前立腺炎では抗菌剤の内服で症状が改善することが多いです。全身症状がみられるなど重度の場合は、入院して抗菌剤を点滴する場合もあります。
慢性前立腺炎の場合
慢性前立腺炎で細菌感染が確認できたものについては、抗菌剤や抗炎症剤などの内服治療をします。細菌感染が確認できない場合は、なかなか完治しない場合もあり、症状を和らげることを目的とした対症療法が選択される場合もあります。その場合の治療法として、漢方や生薬、抗炎症薬や鎮痛剤などの使用、などが挙げられます。
長時間のデスクワークで股間が圧迫されると症状が悪化するので、時々軽い体操をするとよいでしょう。
過度の飲酒や睡眠不足などは体の抵抗力を落とし、炎症の治りを遅くするので気を付けましょう。
まとめ
前立腺炎は急に症状が表れるケースや、あまり症状が目立たないケースもあります。痛みなどが長引いたり、症状がどんどんひどくなったりするような場合はもちろん、違和感を覚えたら放置せず泌尿器科を受診するようにしましょう。