口腔カンジダ症は、口腔内に常在している「カンジダ菌」という真菌(カビ)が異常に増殖してしまうことが原因となって起こります。もし口腔カンジダ症になってしまった場合は、どのような治療をするのでしょうか?また、予防法はあるのでしょうか?今回は口腔カンジダ症の治療方法と予防策について解説します。

目次

口腔カンジダ症を予防しよう!

girl-354579_1280

口腔カンジダ症は、カンジダ菌が存在するだけでは発症しません。「口の中にカビがはえる?!口腔カンジダ症の原因とは」でも解説したように、口腔カンジダ症の原因は、健康なときにも口の中に存在するカンジダ菌が何らかの理由により異常に増殖して起きるものなのです。ですので、口腔カンジダ症の予防策としてはカンジダ菌が増加しにくい環境を作ることが大切だといえます。

ここからは、具体的な方法を見ていきましょう。

1.口腔内を清潔に保つ

口腔カンジダ症の予防にまず必要なのが、口腔内のケアです。清掃状態が悪く、口内環境が悪化すると、カンジダ菌が増加しやすくなります。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシなども使って、清潔にしましょう。舌磨きも有効です。

洗口液やデンタルリンスの使いすぎは、かえって口の中の荒れを促進してしまう場合もあります。これらを使用する際は、適切な用法を守るようにしてください。

2.義歯を清潔に保つ

カンジダ菌は入れ歯が大好きです。義歯(入れ歯)の素材は表面がざらついており、細菌やカンジダ菌などが繁殖しやすい状態なのです。

食後は毎回外して、義歯ブラシなどを使用してプラーク(歯垢)やぬめりを取り除きましょう。ただしこのとき、歯磨き剤を使用すると義歯に細かい傷がつき、そこから細菌が義歯の中に入ってしまうことがあります。必ず、専用の洗浄剤を用いるようにしましょう。また、洗浄剤は「カンジダ菌に効果が期待できる」と書いてあるものを選んでください。

また基本的に、夜間は毎日外して、入れ歯洗浄剤に浸けるようにしましょう。これは、菌の繁殖を予防するだけでなく、口腔粘膜を休ませる目的もあります。

3.乾燥させない

唾液腺の異常や薬の副作用、全身の病気などにより口の中が乾燥してしまう(口腔乾燥症)と、口腔カンジダ症をはじめ、様々な口腔内のトラブルが起こりやすくなります。

唾液分泌低下などによる口腔乾燥症の場合、保湿ジェルや保湿洗口液、人工唾液などを利用して乾燥を防ぐようにしましょう。リップクリームなどで唇の保湿も有効です。

4.口腔粘膜を傷つけない

口腔内が乾燥した状態だと、傷が付きやすくなります。歯磨きをするときは、歯ブラシなどで傷付けないように、十分に湿った状態で歯垢(プラーク)を除去するようにしましょう。

粘膜や舌に乾燥した付着物が固着してしまった場合は、十分にやわらかくさせてからスポンジブラシや舌ブラシを使って除去しましょう。

5.長期間にわたる薬の服用を控える

ステロイド剤、真菌剤、抗生物質などを長期間服用すると、常在菌のバランスが崩れて、カンジダ症にかかりやすくなります。これらの薬を服用する際は、自己判断で必要以上に服用することは避け、必ず医師の指導に従ってください。

6.体力抵抗力の低下や、持病のある方は注意

体の抵抗力などが低い場合(乳幼児、高齢者、妊婦、病中・病後など)や、悪性腫瘍(放射線治療や抗がん剤治療)、血液疾患、免疫不全症、結核糖尿病HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症などがある場合、通常は悪さをしない菌に感染してしまう日和見感染を起こしやすいので、十分な注意が必要です。糖尿病の方は、血糖値のコントロールをしっかりと行いましょう。
このように、口腔内を清潔に保つこと体全体の健康管理を行うことが口腔カンジダ症の発症・再発を防ぐためには欠かせません。口腔内を清潔に保つための正しい歯の磨きかたも身に付けておくと良いでしょう。

口腔カンジダ症の治療法

クエスチョンマーク

治療法としては、まずは口腔内を清潔に保つよう清掃することが一番です。

また、義歯にカンジダ菌が定着してしまうとなかなか除去できないため、口腔カンジダ症を繰返すような場合は義歯を作り直した方が良いこともあります。

真菌(カビ)の増殖や拡散を防止するためには、抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬を使用することが多いです。必要に応じて、抗真菌薬の内服をすることもあります。

実際に歯科医院で処方される治療薬には、次のようなものがあります。それぞれの服用に関しては、医師や薬剤師の指示に従いましょう。

ファンギゾンⓇシロップ100mg/mL―シロップ剤

うがい薬として用いられますが、効果を得るためには長くうがいする必要があります。併用薬の多い方や小児でも使用することができますが、味やにおいが苦手な方もいると思います。また、全身性のカンジダ感染症には効果がありません。

フロリード™ゲル経口用2%―ゲル状

うがいをして口腔内を清潔にしてから塗布、あるいは口の中に薬を含みます。義歯を装着されている場合は義歯に伸ばして、上下に装着します。その性状から、誤嚥の心配がある場合やうがいが難しい場合でも使用することができます。

イトリゾールⓇ内用液1%―内用

口腔咽頭カンジダ症、食道カンジダ症に有効ですが、副作用として下痢が多く見られます。その場合は、含嗽療法(うがいをして吐き出す)を行うこともあります。

 

これらの薬剤は、個々の状態に応じて選択されます。かかりつけ医の指導に基づき、指示通りに使用するようにしましょう。

まとめ

口腔カンジダ症の予防と治療に必要なことは、まずは口腔内を清潔に保ち、常在菌のバランスが崩れないように心がけることです。元々存在する菌なので、いたずらに殺菌しようとするのではなく、上手く付き合っていきましょう。

もしも口腔カンジダ症を発症してしまった場合、かかりつけの先生の指示に従い、時には薬を利用しながら治療をしましょう。口だけでなく全身の管理もしていくことで、再発もしっかり防止してくださいね。