新しい命がお腹に宿ると、身体には様々な変化がみられます。しかしその変化は嬉しい物ばかりではなく、中には便秘や痔になる方が少なくありません。妊娠中を少しでも快適に過ごすためにも、今回は妊婦さんに向けた痔の予防方法を、医師・草間 香先生による監修記事でご紹介します。
妊娠中はなぜ痔になりやすい?
妊娠中は、黄体ホルモンという女性ホルモンの一種が活発に分泌されます。この黄体ホルモンは、子宮筋の緊張緩和・乳腺の発達など、妊婦さんが母親になるための身体の準備をするホルモンです。黄体ホルモンにはこの他にも、腸のぜんどう運動(食べたものや便を送る動き)を弱める働きがあるため、妊娠中は便秘になりやすいといえます。
さらに、妊娠して大きくなった子宮は腸を圧迫することがあります。圧迫された腸は便の通りが悪くなるだけでなく、肛門付近の血の流れが滞りやすくなるため、痔核ができやすくなってしまうのです。
この他にも、妊婦さんは運動不足に陥りやすいことから便秘になりやすかったり、出産時のいきみが痔の原因になったりすることもあります。
妊婦さんが痔を予防するためのポイント3つ
それでは、妊婦さんが痔になるのを予防するためには、一体どうしたらいいのでしょうか?
便秘薬の使用は、一般的に胎児への影響はないと考えられています。しかし、妊娠中はできるだけ薬を使わずに過ごしたいですよね。
ここでは、日常生活で便秘や痔を予防するための3つのポイントをご紹介します。すでに痔になってしまっている方も、これ以上の悪化を防ぐための参考にしてください。
1.安定期に入ったら積極的に運動しよう
運動は、血行を良くし腸の働きを活発化させ、便秘を防ぐ効果があります。
妊娠中はどうしても、運動不足になりがちです。しかし、無理なく自然に行える範囲であれば、積極的に運動をすると良いでしょう。
妊婦体操や妊婦水泳など妊娠中の女性向けに考案されたものに加え、散歩やジョギングなどの有酸素運動を行なうと良いでしょう。
2.食事を工夫しよう
繊維を多く含んだ食事をとるようにしてください。新鮮な野菜・果実がおすすめです。また、かぼちゃやほうれん草などに含まれるビタミンEには、血行を良くしてうっ血を防ぐ働きがあるため、痔の予防に効果があると考えられます。
3.肛門を冷やさないようにし、清潔に保とう
妊娠中の方以外にとっても、入浴は痔の予防法として効果的です。肛門も清潔に保たれますし、お尻が温まれば肛門の血の流れも良くなります。既に痔がある方は、肛門のまわりをそっとマッサージしてみるのもおすすめです。
それでも痔になってしまった場合は?
妊婦さんの痔は産婦人科でも診てもらえますが、より専門的な治療を希望する場合は肛門科(外科・内科)専門医を受診しましょう。
妊娠3ヶ月前後ではまだ胎児が安定していないため、治療はできるだけ避け、肛門に負担をかけないような生活を送るようにします。
安定期に入ったら、症状によっては薬物治療を行います。もし市販薬を使用する場合、必ず医師に確認してから使うようにしてください。
出産時のいきみが心配…
お産の際にはどうしても肛門に力が入るため、既に痔になっている方は不安に思うかもしれません。しかし、助産婦や看護師が肛門をおさえる脱肛保護という処置があるので、心配しなくでも大丈夫です。
ただし、出産時のいきみがきっかけで痔になってしまう女性も少なくありません。その場合は、肛門科医に相談すると良いでしょう。
まとめ
妊娠中はどうしても痔になりやすいといえます。できるだけ予防につとめ、お尻の健康を守りましょう。どうしてもつらい場合は無理をせず、かかりつけの産婦人科医やお近くの肛門科医に相談してください。