毎年冬になるとインフルエンザの流行が心配されます。最近はA型インフルエンザ、新型インフルエンザなどという言葉も耳にするようになりました。2013年に中国で発生した、鳥インフルエンザの流行も記憶に新しいでしょう。これらインフルエンザの種類は何によって分けられ、どんな違いがあるのでしょうか。今回はインフルエンザの違いについてご紹介します。

目次

インフルエンザにはどんな種類があるの?

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因となって発症します。インフルエンザウイルスは、A型、B型、C型に大きく分けられます。

  • インフルエンザA型:スペインかぜ(H1N1)、アジアかぜ(H2N2)、香港かぜ(H3N2)、ソ連型(H1N1)
  • インフルエンザB型
  • インフルエンザC型

これらの中で、大きな流行の原因となるのは、A型とB型です。A型ウイルスは、さらに亜型と呼ばれる型に分類され、数年から数十年ごとに突然別のウイルスが現れて従来のウイルスにとって代わり、大流行が起こります。

A型ウイルスの亜型ってなんのこと?

男の子-写真
ウイルスの表面には「赤血球凝集素(ヘマグルチニン(HA)」と「ノイラミニダーゼ(NA)」と呼ばれる突起があります。

赤血球凝集素(ヘマグルチニン(HA)

呼吸と一緒にインフルエンザウイルスが人の喉に入り、HAが喉の細胞の表面につきます。その後にウイルスが細胞の中に侵入します。現在のところ、18種類確認されていて、1~18までの数字がついています。

ノイラミニダーゼ(NA)

喉から入ったインフルエンザウイルスは、細胞の中で増えます。増えたウイルスが細胞の外に飛び出すときに、NAがウイルスのHAと細胞がくっついている部分を切り離して、細胞の外へウイルスが放出されます。いまのところ、10種類分かっていて、1~10までの数字がついています。

このヘマグルチニンとノイラミニダーゼの番号の組み合わせが、インフルエンザウイルスの名前です。例えば、ヘマグルチニン(HA)の1とノイラミニダーゼ(NA)1の組み合わせのウイルスは、「H1N1型のインフルエンザウイルス」と呼んでいます。最近では、「H1N1型」と「H3N2型」のインフルエンザが多く流行しています。

B型ウイルスは、(HA)も(NA)も1種類しかありません。C型ウイルスは、軽いかぜのような症状が現れるだけです。

新型インフルエンザってなんのこと?

インフルエンザは、数十年おきに今までのインフルエンザウイルスとは全く違う「新型インフルエンザ」に変異したウイルスが発生します。

これまでにであったことのない新しいウイルスのため、誰も免疫を持っておらず、新型インフルエンザが発生すると短い間に広がり、大流行になる可能性があります。20世紀には、1918年にスペインかぜ、1957年にアジアかぜ、1968年に香港かぜと3回の新型インフルエンザが発生しました。

鳥インフルエンザってなんのこと?

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なぜ人間に感染するの

たいていのウイルスは、感染する動物は決まっていますが、インフルエンザウイルスはヒト、イヌ、ネコ、ニワトリ、ブタなど様々な動物に感染することができます。

どんな動物にでも感染できますが、すべてが同じかたちのウイルスではなく、人に感染するウイルスは人に合ったかたちをしており、鳥に感染するウイルスは、鳥に合ったかたちをしています。よって、鳥の中で流行するインフルエンザウイルスは、本来人には感染しにくいはずですが、大量のウイルスを吸い込むことによって鳥インフルエンザウイルスが人に感染して病気を起こすことがあるのです。

鳥インフルエンザは人から人にうつる?

鳥インフルエンザに感染しても、患者からほかの人にうつることはほとんどありません。しかし人への感染が繰り返されるうちに、鳥インフルエンザウイルスが人の身体に合うように変異することがあります。人の体内で増えやすいウイルスが作られるようになり、他の人へ移っていく力をウイルスが持つようになるのです。

こうして人から人へと感染するまでに変異したウイルスは、鳥インフルエンザウイルスではなく人インフルエンザウイルスに変異したことになります。もともとが鳥のウイルスのため、ほとんどの人が感染した経験を持たず、大流行を起こす恐れがあります。

新型インフルエンザの流行は予測できる?

2014年の冬に、鳥インフルエンザウイルスから新型インフルエンザに変異する可能性が心配されていたのが、「H7N9型鳥インフルエンザウイルス」と「H5N1型鳥インフルエンザウイルス」です。

「H7N9型」は、中国での感染が報告されており、人の体内でも増えるまでに変異することが分かりました。「H5N1型」は、香港で発生し、東南アジア、ヨーロッパ、アフリカなど広い地域で鳥の間で広がり、人への感染も報告されています。日本の養鶏場にもウイルスが侵入したので、ニワトリの処分や周囲の消毒が行われました。

残念ながら、最新の研究をもってしても、どんなウイルスがいつ、どの程度発生するかを正確に予測することはできません。そのため2015年より、従来の3価ワクチンではなく4価ワクチンを使うようになりました。3価ワクチンには3種類(A型2種類・B型1種類)の3種のワクチン株しか含まれていませんでしたが、4価ワクチンには4種類(A型2種類・B型2種類)のワクチン株が含まれています。より多くのタイプのウイルスに備えよう、というわけです。

 

以上の内容を、1枚の図にまとめました。クリックまたはタップで拡大してご覧ください。

インフルエンザの種類とちがい-図解