最近、コマーシャルでもジェネリック医薬品や後発医薬品という言葉が聞かれるようになり、ある程度世の中に浸透してきました。ジェネリックを作るメーカーも、後発医薬品メーカーだけでなく先発医薬品を作るメーカーも参入することにより、より身近になっていると感じています。今回は、「先発医薬品」「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」そして、もう一つ知っていてほしい「オーソライズドジェネリック医薬品(AG)」についてご紹介します。

目次

先発医薬品とは

後発医薬品(ジェネリック医薬品)という言葉が普及するようになってから、先発医薬品という言葉も知った方は多いのではないでしょうか。先発医薬品とは、最初に開発・承認・発売された、従来になかった薬効成分を持つ医薬品のことで、新薬とも呼ばれます。

新薬を開発した企業には、医薬品そのものやその製造方法に特許権が与えられます。通常20年・最長25年の特許期間中、開発した企業がその薬を独占的に製造・販売することができます。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは

薬

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、先発医薬品と同一の有効成分を同一量含み、同一経路から投与する薬剤です。

ジェネリック医薬品の効能・効果や用法・用量は、原則として先発医薬品と同じです(ただし、添加物や薬のコーティングなど、有効成分以外の成分は先発医薬品と異なります)。そのため、研究開発の費用が低く抑えられることから、先発医薬品とくらべて低価格で販売されています。

ジェネリック医薬品を普及させることは、患者さんの負担軽減や医療保険財政の改善に繋がるため、国は2020年度末までに後発医薬品の数量シェアを80%以上にするという目標を掲げ、使用促進のための環境整備を進めているところです。

ジェネリック医薬品には、通常の有効成分が同一である「ジェネリック医薬品」のほか、添加物や製法も同一の「オーソライズドジェネリック」、バイオ製品の後発品「バイオシミラー医薬品」があります(後述)。

先発医薬品がないジェネリック医薬品がある?!

ジェネリック医薬品の中には、先発医薬品が存在していない(ように見える)ものがいくつかあります。代表的なものが、メチコバール(ビタミンB12製剤。肩こりやめまいに用いられます)とカリーユニ点眼液(白内障の治療薬)です。

メチコバール

メチコバールは、もともと先発医薬品として作られた薬剤です。しかし、使用されているメチル水銀の安全性を確かめるのに時間がかかり、申請から承認までに1年以上の時間がかかりました。医薬品は、発売までに1年以上かかってしまうと新薬として扱うことができなくなるという規定があるため、メチコバールはジェネリック医薬品として発売されることになりました。

カリーユニ点眼液

カリーユニ点眼液には、実はカタリンという先発医薬品があります。しかし、カタリンはもともと顆粒や錠剤の形で販売されていた薬であり、点眼薬ではありません。もとの薬から剤形が変わっているため、一見先発品がないジェネリック医薬品に思える、というわけです。

知っておきたい!オーソライズドジェネリック医薬品(AG)

AGは「先発医薬品と全く同じ」医薬品

ジェネリック医薬品の中でも、オーソライズドジェネリック(Authorized GenericAGというものがあります。

Authorizeは「公認する」「正当と認める」「許可する」という意味を持っています。つまり、AGを直訳すると「公認されたジェネリック医薬品」となります。

通常のジェネリック医薬品は、先発医薬品を製造するメーカーが持っている特許が切れた後に、他のメーカーが製造を行います。しかし医薬品の特許の内容は有効成分だけでなく製法や使用方法など多岐に渡るため、上述の通り、ジェネリック医薬品の場合、同成分でも添加物や製法が異なることが少なくありません。

AGの場合、ジェネリック医薬品メーカーに特許の使用権を与えることにより、添加物なども含めて先発品と完全に同一の医療用医薬品がジェネリック医薬品として製造されています。錠剤やヒート(薬のシート)のデザイン、薬剤の識別コードのみ異なりますが、それ以外は全て同一の医薬品であるため、生物学的同等性試験も免除されています。従来とは違った形のジェネリック医薬品であるといえるでしょう。

AGは品質への信頼度が高い

実は、日本のジェネリック医薬品の普及率は、海外と比べると高いとはいえません(日本ジェネリック製薬協会より)。その理由として、医療関係者の中でのジェネリック医薬品の安定供給や情報提供といった体制への不安がなくなりきっていないことが考えられます。この不安を払拭できるのが、AGの存在です。

従来のジェネリック医薬品では、有効成分は新薬と同じであっても、添加物や製法などは新薬と異なる場合があります。しかしAGでは添加物や製法は新薬と変わらず、新薬と同じ工場で製造されていることも少なくありません。この点において、AGは医療関係者にとっても患者さんにとっても画期的な存在だといえ、今後も増えていくと考えられます。

AGにはどんなものがある?

平成25年6月に、初めてのAGとして日医工サノフィよりフェキソフェナジン塩酸塩錠「SANIK」(先発医薬品はアレグラ錠:サノフィ)が発売されました。その後もいくつかの薬剤が販売されており、現在はいくつかのAGが存在します。下記、例としていくつかご紹介します。

  • アレグラ錠(サノフィ)⇒フェキソフェナジン塩酸塩錠「SANIK」(日医工サノフィ)抗アレルギー薬
  • ディオバン錠(ノバルティスファーマ)⇒バルサルタン錠「サンド」(サンド)高血圧症治療薬
  • ブロプレス錠(武田薬品工業)⇒カンデサルタン錠「あすか」(あすか製薬)高血圧症治療薬
  • クラビット錠(第一三共)⇒レボフロキサシン錠「DSEP」(第一三共エスファ)広範囲経口抗菌製剤
  • ゾメタ点滴静注(ノバルティスファーマ)⇒ゾレドロン酸点滴静注「サンド」(サンド)骨吸収抑制剤
  • プラビックス錠(サノフィ)⇒クロピドグレル錠「SANIK」(日医工サノフィ・ゼンティバ)抗血小板剤 ※適応症一部未対応
  • ユニシア配合錠(武田薬品)⇒カムシア配合錠「あすか」(あすか製薬)高血圧症治療薬

「バイオシミラー」を知っていますか

薬

バイオシミラーとは、バイオ医薬品と呼ばれる種類の医薬品のジェネリックに相当するものです。

バイオ医薬品とは、身近なところでは予防接種などで使われるワクチンなど、遺伝子組み換え技術などの「バイオテクノロジー」で製造された医薬品のことをいいます。がんや糖尿病、C型肝炎、慢性腎不全といった治療が困難な慢性疾患の治療や、血友病、ファブリー病、発育不全、多発性硬化症、クローン病などの希少疾患の治療で使用されています。

バイオシミラーの特徴

  • 先発のバイオ医薬品よりも分子構造が大きくて複雑なため、先発医薬品と同じ効果を持つかどうかを示すことが通常のジェネリック医薬品よりも難しくなります。
  • 開発の際は、先発医薬品とほぼ同様の試験を行う必要があります。申請の際にはそれら全てのデータが必須であり、さらに製造販売後に安全性に関する調査を行なわなければなりません。

現在の状況

現在までに発売されているバイオシミラー医薬品は、以下のようなものがあります。

  • ヒト成長ホルモン製剤「ソマトロピン」
  • 腎性貧血治療薬「エポエチンアルファ」
  • G-CSF製剤(がん化学療法などによる好中球減少症に用いられる)「フィルグラスチム」
  • 関節リウマチ治療薬「インフリキシマブ」

まとめ

ここまで、先発・後発医薬品などについて解説してきました。ジェネリック医薬品については、AG・バイオシミラー医薬品といった種類もあることが分かっていただけたでしょうか。

薬局では、「ジェネリックに変更したら効き目が変わってしまった」「ジェネリックにしたら添加物が変わったことで副作用が出てしまった」という人がいます。また、「ジェネリックは効かない気がする」という人もいます。アレルギー治療薬や胃薬の場合、「効かない気がする」と思い込んで飲むとマイナスのプラシーボ効果が現れていまい、本当に効かなくなってしまうことがあるのです。そういった事情を考えると、全ての成分が同じであるAGの登場は、患者にとって多くのメリットがあるといえるでしょう。